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此処は何処?自分は誰?

登場する青年の口調が変ですが、正常です。

 そこは暗く、明るい。寒く、暑い。気持ち悪く、気持ちが良い。そんな正反対な物が同時に存在して感じる歪な場所。

 そんな空間に一人の青年が寝ていた。


「起きろ。」

「起きなさい。」

「起〜き〜ろ〜。」

「起きるのです。」

「起きるのじゃ。」

「起きやがれ!」

「起きるのですよ。」


 老若男女の声が青年を起こそうとしている。流石の熟睡している青年もあまりの多くの声に起き出した。


「何ですか?人が気持ちよく寝ているのに、邪魔するのは何処の何奴らですか。……?」


 起きた青年が辺りを見回すと、さっきまで聞こえていた声たちが止み、発していただろう人達が見当たらなかった。


「どうなっているんだ?確かにさっきまで俺を囲む様に多種多様の声が聞こえていた筈だ。」


 青年はスピーカーなど音を発する事が出来る物が無いか。周囲を改めて確認するが、スピーカーどころかチリ一つ無かった。


「?どういうことだろう?流石に物が無いにしても、生物がいた痕跡すら無い。」


「当たり前だよ。ここは君が来る為に用意した場所だからね。」


 青年は突然聞こえた背後からの声の主を確かめる為にすぐに振り向いた。


「やあ、初めまして、君にはぼくはどう見えて聞こえているかな?」


 そこにいたのは、少年の声をした老婆であった。


「おばあちゃん?此処は何処なんだい。そして貴方は誰なんだい。」


 青年が質問すると、そこにいた筈の老婆が声と同じ少年に姿が変わっていた。


「え?」


「どうしたのかな?まぁ僕が誰なのか。すぐ答えても良いけど?多分君がもうすぐ僕の声を聞く余裕が無くなるから。答えはその後にね。」


「それはどういうこっっっ!!!!!」


 青年が疑問を言いおわる前にそれは始まった。


「おっ?始まったみたいだね。じゃあ改めて言うね。君には僕がどういう風に見えて聞こえているかな?」


(どうなっているんだ?!)

 青年が混乱している中でもそれは治まる事は無かった。

 青年の目の前にいる者が次から次へと姿が声が一瞬にして変わり続けているのだ。こうしてる間に何回も入れ替わり続けそれは止むどころか。段々と速度を早めていき、認識が追いつかなくなってきていた。

 それでも青年の頭はその摩訶不思議な者を認識しようと頭を使っていた。

 青年はそれに伴い生じる激しい頭痛と吐き気に苛まされていた。不思議と吐く事は無かったが、通常で有れば胃の中の物はすべて地面に落とされていただろう。


(まぁ、お陰で私の身体は自分の内容物で汚れる事は無いのだけど、でも、このままじゃ気絶どころか死んでしまいそうですね。)


「へぇ。まだ考える事が出来るんだ。常人だととっくに気絶し続けていても良いのにね。」


 不思議生物は何が愉快なのか。もがき苦しむ青年を満面の笑みで見ている。


(落ち着け、取り敢えずこの痛みは増す事はあっても、治まる事は現状ない事はわかる。こいつが言うには、私が気絶しない事はおかしい様だ。つまりいつ気絶してもおかしくないと言う事だ。)


 青年は焦っていた。このままでは気絶して、このおかしな生物に対して、完全な無防備な状態になる。今でもほぼ無防備ではあるが、何かされればわかる事ぐらいは出来る。だが、気絶してしまえばその事ですら分からなくなる。

 それだけ避けたかった。

 それに青年にはこの痛みが気絶している間に弱まるとは思えなかった。むしろ気絶の間にも強まる。そう確信していた。そうなってしまえば、確実に気絶し続けることになる。仮に目覚め続けれても、思考を巡らせる事など不可能だろう。


(まず考えないと行けないのは、この痛みの緩和か治癒の方法を見つけ出す事。それがなによりも最優先事項。だが、それはどうするあいつの姿は変わり続いたまま。目を逸らすや閉じるはやってみたが効果は無い。声対策に耳を塞いだけど無意味だった。これは根本的に解決しないと意味が無さそうだ。でも、どうする奴が変わるのは奴がやっている事だろう。それをどうしろと言うんだ!)


「うーん?悩んでるみたいだね。じゃあ此処で頑張っている君に特別な大ヒントを授けよう。」


 僕ってば優しい。と言う生物に対して、青年は少しウザみを感じながら一言一句逃さない様に思考を止め耳を傾ける様にした。


「僕の姿や声は僕の意思で変わってるわけじゃない。」

「本当はもっと分かりにくいヒントを考えてたんだけど、君が僕の予想以上に耐えたから。そのご褒美として分かりやすくあげたよ。」


 まるでこれだけのヒントあげたんだから。早く慣れてね。と言っている様な口調で生物は言いそれ以降何も言わずに青年を見つめていた。

 青年はそれを聞き、思考を再起動させた。


(この現象がこいつの言う通り、コイツの意思では無いとすると、これをやっているのは、俺自身か、多分無いと思うが第三者がやっていることになる。だがこれは無いだろう。アイツの口振りからしてこれは自分がどうにかなる事だ。第三者の場合これが成り立たない。つまり、これは俺自身がやっている事だ。)


 青年はそこまで分かったがそこでまた行き詰まることになる。


(俺がやっているとして、無意識にやっていることになる。こんな事を意識してやる奴なんてドMでもいやしないだろう。だが、これが分かっても無意識かの事なんてどうしろって言うんだ。そもそも人間は無意識でやっている事なんて覚えてる訳ない。)


 青年の気力も思考も限界に来そうとなっている。その瞬間青年は閃いた。無意識下にあるものを全て辞めることを。


「おや?おやおや?これは驚いた。人間はそんな事も出来るとは知らなかった。」


 青年は気づく事が出来なかったが、初めてこの生物は人間の土壇場ではっきりする底力に感服していた。


「まさか、身体の機能を全て意図的に停止させるとはね。」


 そう青年は呼吸から心臓の鼓動までありとあらゆる無意識下で稼働している身体の機能を停止させたのだ。実質青年の身体は死体と変わらない状態にある。もちろんこのままだと数秒後には本当の死体になるが。


「っ!ごほっ!がはがば!はぁ…はぁ…」

 

 青年はそうなる前に再起動させた。青年自身も何でこんな事が出来たかは知らないが出来た。そして…


「掴めた。」

「おー。もう喋れるぐらいには回復したんだ。」


 青年は停止と再起動を意図的にした事により稼働している部分を正確に理解する事が出来た。


「なるほど、確かにこれは俺が原因だった訳だ。」


 顔上げた青年の前には、中性的な姿と声をした生物がいた。


「君には驚かされてばっかりだね。もうこれに慣れるなんて、でもやっとこれで会話ができるね。僕の眷属くん。」

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