第八話 見えぬ敵
ダンジョンに異変が起きている。
そのことは40階層でも明らかだったし、41階層でも明らかだった。
「えっ、なんだよこれ?」
「分からない、警戒しよう。」
マップ上は41階層から50階層は砂漠のエリアだ。
ポイントは砂嵐対策と確かに明記されている。
なのに、僕らがいるところはジャングルだ。
「ピヒョロローーーー、ピロー」
バサッ
鳥がどこかで飛び立つ音が聞こえる。
真後ろのに魔力反応!
「ウィンドカッター」
グシャッ
鳥の頭と胴が分かれる。
どうやらこの魔物が出現する魔物らしい。
「フォレストバードか。Dランク上。集団での攻撃が得意。」
ダイが怪訝そうに言う。
「Dランク上か、ちょっと強すぎるな。」
本来ここに登場するのはスモールワームDランク下。
Dランク上になるのは61階層から70階層のはず。
つまりここは未探索の61階層と同レベル…?
まぁ、61階層といってもDランク。
バッタ、バッタとなぎ倒す。
しかし、肝心なことを忘れていた。
階段の位置がわからない。
「やっぱりない。」
「こりゃ、骨が折れるぞ。」
新エリアなので地図が正しい場所を示さない。
自分たちの魔力をわざと放出させて、同じ道を二度通らないようにして捜索する。
「ありました!」
1時間後。
サルラからメッセージで連絡が入った。
僕たちは危険が少ないということで、分かれて探索をしていた。
「分かった。今、むかう。」
ダイとも合流し、木のウロから階段へ入る。
「探索スピードが遅いな。」
「こればかりは地道に進めるしかないな。」
生きていてくれよ。ソワリ。
42階層、42階層、44、45と順調に攻略している。
順調のように見えるがここまでで5時間。
「これ以上は疲労が溜まって危険だな。」
「しょうがないけど、次で野営しよう。」
46階層へと下っていく。
「ちょうどいい、広い場所はないか?」
ダイがそう聞いてくるので、索敵魔法で探す。
魔力反応が、ポッカリとない場所を見つける。
「ダイ!近くにあるぞ。」
「よっしゃ魔法は便利だな!」
お前も魔術師だろ!といいk…
ピロン
索敵魔法が最後に届いた、エリアの左端に違和感を感じる。
そこもさっきと同じようにポッカリと魔力反応がないのだが…
「微かに魔力が漏れている。」
未熟な魔術師が使用する魔法からは、その魔術師の魔力が漏れ出す。
即ち、ここで野営している者がいる。
そして、思い出す。
僕らは40階層で2日過ごした。その間通った者はいない。
探索スピードも通常の冒険者より少し早いぐらい。
夜になるので野営しようとしている。
あいつらは僕らより先に野営をしている。
「あいつらはこんな中途半端な場所に1日以上野営している。」
けが人が出て野営している可能性もあるにはあるが、それにしては規模がでかい。
言い換えれば、一人や二人のケガで止まるような規模ではない。
怪しすぎる。
端にいる。
そんな事実も僕の心を揺さぶる。
「二人とも来て。」
自然に声が小さくなる。
「この層に野営をしている冒険者がいる。」
「冒険者ですか?」
サルラが何が問題なのかと首を傾げる。
「僕はあいつらがソワリをさらったんじゃないかと思っている。」
「「え!?」」
ダイとサルラが声を小さくして驚く。
先程は考えた根拠を二人に語って聞かせると二人とも納得がいったようだった。
「確かにそれは怪しいな。」
「そうですね。よく気付きましたねそんな反応」
「ダイが、広い所を探してくれといったから気づいたんだ。」
「俺nice!」
「ダイはあのテントが快適すぎて気に入っただけでしょう?」
と、サルラ。
理由はなんであれ、助かったことは事実だ。
何も考えずに探っていたら見逃していた可能性が高い。
「で?どうするんだリベル。」
「危険だが、近づいて観察しようと思う。」
「認識阻害魔法がかかってるんじゃないのか?」
当然の疑問だ。
しかし、Sランク冒険者を舐めてもらっては困る。
「認識阻害魔法が弱いから漏れ出す魔力だけでなんとなく人数が絞れるはずだ。」
「OKだ。」
僕ら3人は左端へジリジリと詰め寄る。
まだ、距離があるが油断できない。
各自、攻撃の準備をする。
「対人戦はできるか?」
「殺したくはないが、やろうと思えばできる。」
「私も。」
「僕も同意見だ。なるべく殺さないように頼む。」
目的地の一本の木の前で止まる。
「どこですか?」
サルラが尋ねる。
見渡す限り森のように見えるが…
「僕らより40mぐらい先のあのポピーの花が咲いているあたりからが、窪地だ。」
「森だと思ってました。」
心底驚く、サルラ。
さて人数は…
40m先の魔力を感じとる。
健康な魔力が20。
それに弱い魔力が5。
さらに弱い魔力が1か。
弱い魔力の6人はおそらく人身売買。
うち一人は危険な状態だ。
ここに、サルラはいるはず…だが、魔力を感じられない。
このことを二人に告げると、
「俺たちは助けたい。リベルはどうだ?」
助けにいく気満々のようだ。
「もちろんだ。」
ーーーーー
By サルラ
私たちは打ち合わせをして、私が左。
リベルさんが右。
ダイが回り込んで後ろから突入することになった。
リベルさんはやはり頼もしい。
索敵、前衛、後衛。
全てできてしまう。
ハッ
「いけない。集中しないと」
決行時間は8時ジャスト。
ダイから買ってもらった時計を見る。
あと1分。
緊張している時は時間がゆっくりに感じる。
まだ…?
カチッ
時計の針が8に重なる。
タッ
私は木の葉を蹴って森の中へと飛び込む。
景色がガラリと変わり、森がなくなる。
中にはテントと檻に入れられた少女たち。
ケガをしている子たちもいる。
酷いことを。
私のことに気付いていない見張りに詰め寄る。
「あっ」
見張りが気づいて、剣を構えようとする。がもう遅い。
背中を切って心臓へと達しそうな大剣を水に変化させる。
これで殺してしまうことはない。
「ボォオオオオオオオオオオ!」
法螺貝がなる。
誰かが気づいたのだろう。
寄ってくる見張り達だが、どれも私よりは弱い。
同じ方法で一人ずつ着実に無効化させていく。
やっぱり、この大剣はよく馴染む。
一人で10人やっつけることに成功する。
オリの近くだったこともあって多かったらしい。
遠くで聞こえていた戦闘音も止んでいた。
見張りから鍵をと…
ガンッ
脳に衝撃が加えられる。
ドサッ
体が動かない。
意識が暗転していく中
「まだ未熟だな。」
加工した声ようなが聞こえる。
声の方向へ目を向けるが誰もいない。
「ごめんなさい…リベルさん…」
ーーー第八話 「見えぬ敵」
「よし、こんなものか。」
5人との戦闘を終えた僕は二人にメッセージで語りかける。
「二人は終わった?」
反応がない。
「ダイ?サルラ?」
膨大な魔力!
サッと身を避ける。
僕がいた所には剣が。
「浮いている。」
見えないが、そこに誰かがいる。
気づけなかった。警戒心をマックスにする。
「お前が探しているのはこいつらだろ?ここにいるぞ。」
加工したような声がして、
突如、誰かに掴まれたようにして空中に現れたのは、ダイとサルラだ。
「お前!?」
「大丈夫だ、殺してない。そう頼まれたんでな。」
「頼まれた?誰にだ。」
「言うわけがなかろう」
ハッハッハッ
その者が笑う。
「聴きたければ、かかってこい」
剣の切っ先が僕に向けられる。
「のぞむ所だ!」
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