第七話 新しく、強くなって…
ちょっと休憩です…
魔力が回復した。
これで回復魔法をかけることができる。
その前に2人の肺から水を抜かなければ。
溺死してしまう。
「生きてくれよ。バーチ」
手のひらに現れた閃光花火のパチパチのようなものをダイの口に入れる。
すると、肺がどんどん凹んでいく。
他のSランク冒険者から教わった方法で、中でパチパチが水を蒸発させて、溺死を防ぐことができる。
画期的な魔法だ。
同様にサルラの口にも入れる。
結果、口から煙が出続けるモクモク人間が完成する。
「よし、これで治療に入れる。」
まず、服を脱がせてダイの体を見る。
「外傷は無しと、あちゃーこりゃひどい。」
外傷はなかった。
だけど、リヴァイアサンの突進を何度も食らったのか内臓がズタズタになっている。
これはヒールでは回復が遅すぎて、回復する前に死んでしまう。
なのに、僕はヒールの魔法を展開する。
発動はせず待機状態のものに魔力を添えていく。
「外側に向いている聖力を、内側に全て向けさせる。焦るなー」
創作の魔術師たる由縁。
これが僕のSランクの力:魔法改変だ。
魔法陣の全てを理解してこのスキルを持っていないと魔法は変えられない。
魔法陣の線を一本ずつ丁寧に変える。
「よし!できた。」
聖力を全て内側に向けることに成功する。
「ヒール」
これで治すことができる。
荒い呼吸もだいぶ落ち着いてきた。
続いてはサルラ。
本当に申し訳ないが服を脱がせる。
ふくよかな胸に目がいってしまう。
「えーっと、」
決して何も思ってないぞ。
サルラはダイとは反対で外傷がひどい。
だが、剣で衝撃を受け流し続けたのだろう。
内臓は大きくは傷付いていない。
ならば治療は簡単だ。
ダイと反対のことをやればいいのである。
2分後。
「ヒール」
サルラの治療も完了した。
僕にできることはここまでだ。
あとは彼らに頑張って貰うしかない。
僕も魔力が空になってしまった。
今日はここで夜営だ。
急がば回れ という言葉があるように急いぎのときは慎重に、冒険の鉄則だ。
落ち着いて周りを見渡すと、未だに次の階層への扉は閉ざされており、入ってきた扉は空いていた。
宝箱を取ったら後ろの扉が開くのだろう。
この状況を利用して夜営を建てることにする。が、
「1時間後にボスが復活するかも知れないしなぁー」
病人を石の上に寝かせておくのはいけない気がしたので、40階層の水浸しの廊下に戻ってそこでテントを作って様子見することにした。
テントと言っているが誰がどう見てもハンモックだ。
1時間。
「来るか…」
復活したらすぐに扉を閉めるられように待つ。
1秒経過、2秒、3秒。
リヴァイアサンは復活しなかった。
恐らく、宝箱を取らないと復活しないのだろう。
ボス部屋に戻る。
2人を中に運び入れる前に。空間魔法で、でかいテントを取り出す。
「って、デカ!?」
自分でもどこで手に入れたのか分からないがポールが50本という超BIGサイズのテントだった。
時々、「こうか?いや違う。こうだ!」と独り言を呟きながら、トンテンカンテンと必死に組み立てる。
なんて言いながら30分で完成。
個室が4つあり、ベッドも完備している。
苦労の甲斐がある。
仕上げに微量の魔力で認識阻害魔法をかける。
早速、だいぶ呼吸の整ってきた2人をベッドに乗せる。
「あつっ!」
ダイの様子を見にきたら、ダイの体が燃えるように熱かった。
サルラも同じだ。
魔術ならどんなことにも対応できるがこんな時の対処方法はからっきしだ。
なんとなく、病院で見るように濡れたタオル←空間魔法 を上に載せる。
脱水症になっても困るので水も定期的に含ませる。
ーーーー
翌朝。
「ん…?」
突然目が覚める。
ダンジョン内なので朝日とかがなくて気持ちが悪い目覚めだ。
付きっきりで世話をした僕の疲労は寝てもまだ取れていないけど、そのおかげか2人ともあとちょっとの所まで回復していた。
「がんばったな2人とも。」
ポーションを飲ませ、書き置きを残して僕は寝た。
眠いよぉぉ。
ーーー
パチパチ
そんな音で目が覚める。
何故か焚き火の爆ぜる音が聞こえる。
誰かが起きていることに期待を抱きつつ外に出る。
「よぉ、おはよう。。」
そこにいたのは紛れもないダイだった。
上を見るとダンジョンなのに星が輝く空が見えていた。
「もう8時なのに明るいのが気に食わなくてな。焚き火も外も雰囲気作りだ。」
魔法で作られた空だけど、ううん。だからこそあたたかみを感じる。
「雰囲気じゃない。最高だ。」
「そうか。なら良かった。」
僕はダイの横に座る。
木のはぜる音が心地いい。
「ありがとな。リベル。俺とサルラを助けてくれて…」
「当たり前だよ。ダイこそ体は大丈夫なの?」
「ああ、だいぶ良い。明日には治るだろう。だけどな!」
ダイが突然僕の胸ぐらを掴む。
「どうして、お前は俺らを置いていかなかった!お前が…お前が助けてやらなきゃいけない奴がここにいるんだろぉ、どうじてなんだよー!」
ダイの目から涙が溢れて流れる。
声が震えている。
確かに僕は今日の朝には全快していた。
ソワリを探しに行けるくらいには。
ダイがそんなに僕らのことを考えていただなんて…
でも、
「ダイ。君は冒険者がなんでいるのかを知っているかい?」
「えっ?」
思わぬ返しにダイの言葉が詰まる。
僕はダイの手を掴んで下ろす。
「な〜に、簡単なことさ。この世界は繋がっている。人と人。言葉と言葉。剣と剣で繋がることもある。」
でも、と僕は繋げる。
「そんな人々には恐怖が訪れる。いつか終わりが訪れる。それをいかにより良いものにするかが僕ら冒険者なんだ。世界の全てをより良くするのは難しい。だけど、自分の身の回りからコツコツとやっていけばいずれかは救えるんじゃないかなぁ?僕はそう思ってるよ。」
夜空の星一つ一つを人だと思えば、今までに出会った人々の顔が浮かんでくる。
昔、住んでた場所の近くにあったパン屋の主人。
今は亡き、魔法を教えてもらったおじいちゃん。
思い出の奔流に飲み込まれる。
「だから、僕は救ったんだ。ダイ。君をね。」
いずれ星を見たとき思い出せるように。
「すまんリーー。」
ダイの口を抑える。
「勿論、ソワリも救うさ、必ず。だから笑って。」
ダイの顔が綻ぶ。
「ああ、そうだな。」
ーーー
さらに翌朝。
サルラも起き出してきた。
「おーい、2人ともー元気?」
「ああ、おかげ様で。」
「本当にありがとうございます。」
3人で協力してテントを片付ける。
ものの10分で片付ける。
このテントには本当にお世話になった。
「忘れ物はないね。開けるよ。」
「はい」
「おうっ」
みんなであの大きな宝箱の前に集まる。
ずっと気になっていたけれど、開けずじまいだった宝箱。
キングリヴァイアサンを倒したんだ。
さぞかしすごいものが入っているんだろう。
「オープン!」
中には金貨が5枚と鱗がどかっと入っていた。
「この金貨見たことないぞ?」
金貨は今まで見たことのない金貨だった。
ひょっとするととんでもないものかもしれない。
しかし、少し拍子抜けである。
もうちょっと良いものが入っていると思ったのに。
「ちょ、ちょ、ちょっとリベルさん。こっちに来てくださーい。」
鱗をガサゴソとやっていたサルラが僕を呼ぶ。
どうしたんだ?
「これ見てくださーい」
サルラが宝箱から取り出したのは壊れてしまった大剣と同じ形をした大剣だった。
しかし、輝きが違う。
「鑑定」
深海を統べる者 名称:未定
ランクS:神話級
スキル:刀身変化(神水)、身体変化、水中生活、超切断、伝水、水分身、チャージ、不壊
所有者への効果:水魔法を熱湯に変えて使用できる、邪なるものが見えるようになる。攻撃が1.5倍。
所有者:未定
「Sランクの魔剣だな。これはサルラのだ。」
ほいっと、サルラに投げる。
慌てたように受け取るサルラ。
「なんで、そんな大事そうに受け取るんだ?」
「なんでってこっちのセリフですよ。Sランクって国庫に仕舞われるレベルですよ。
そんなもの受け取れません。私何もしてませんし。」
いやなのかな?
「僕は大剣を使わないからね。じゃあ、その魔剣は壊すよ。」
「え?」
「だっていらないんでしょ?」
悪戯っぽく笑う。
「もうっ、分かりました!大切に使わせていただきます。」
嬉しそうな顔をするサルラ。
そんな顔してたらおじさんもっとあげたくなっちゃう。
そんな、サルラをひっそりと鑑定する。
サルラ・ナドラ
ーーーーーーーー
称号:大剣に愛されし者、深海の姫
やっぱりサルラが持つのが一番だ。
「よしいくぞ!」
宝箱を開けたから次の階層への扉が開く。
僕らは新たな一歩を踏み出した。
この後もあげるので読んでください。
毎日あげるのでブックマークお願いします。
昨日186pvありがとうございます。