第六話 不滅のダンジョン・キングリヴァイアサン
不滅のダンジョン1階層。
そこは洞窟と言うよりは、荒野のような床に砂岩のような壁と通路のようになっていて自然世界ではみない地形だ。
見通しは悪いが内部は明るく、
通路は網目上になっているものの先人の知恵で、既に地図が最新階層の一歩手前56階層まで出来上がっているので問題はない。
出てくるモンスターもスライムと喋って歩けるくらい余裕だ。
この不滅のダンジョンは下に下がっていくダンジョンで、上に上がる際は地道に上がっていくしか方法がない。
10階層ごとにタイプが変わるダンジョンでもあり、25階層、草原エリアで騎竜を確保できるらしく、それを使えば1階層1分で通過できるらしい。
そこには町もあるらしく、賑わっている
「らしいと。」
「はい、その通りです。リベルさん。」
「ありがとう。あと、二人とも僕のことを呼び捨てでいいから。」
現在3階層。
待機列で並んでいるときにかき集めた情報を今、ダイに聞いてもらって精査してもらっているところだ。
出現するモンスターはスライムの上位互換スプラッシュスライム。
倒す時に粘着性のある液を辺りにぶちまけるのが特徴で、煩わしさ抜群だったのだけど、硬化魔法で固めると出ないと言うことが判明してからは、その煩わしさもなくなった。
硬化魔法を使うので倒しにくくなってしまうのが欠点だが空を飛んでいるので関係ない。
無視すればいいだけである。
こんな風に喋ってはいるが僕らは今、飛行魔法で猛スピードで走行中だ。
「よくーー二人ともーーー話せますねーーーゼェ」
サルラはあんな感じで魔法の制御に精一杯。
ダイは喋るぐらいの余裕はある。
僕は受付で手に入れた地図56枚を見る。
ダイとおしゃべり。
内容の精査。
この三つをやってもまだまだ余力がある。
sランク冒険者もできるってことを見せないと後輩に顔が立たない。
「ここを右ー。ここを左ー。階段ー。」
ちなみにはたから見るとダンジョン内を飛行する変な人と言うことで、騒ぎになりそうなので例の認識阻害魔法をかけている。
僕の中でこの魔法の信用度は地に落ちつつあるが真横を通過しても誰一人として気づかないので少しだけ回復している。
ぶつかれば透けるなんてことはなく、認識を阻害しているだけなので完全に人を避けるゲームとなっている。
今までの成績は、
1位リベル 0回 アシスト5回
2位ダイ 0回 アシスト0回
3位サルラ 1回 アシスト0回
サルラは一回だけ人にぶつかってしまっていた。
人が密集する階段での出来事で僕も地図を落としかけていて引っ張りに行けず。
ダイも必死。
サルラがぶつかった人は不思議そうにしていた。
僕の認識阻害魔法はそんなんじゃ破れない。
サルラが謝ろうとしていたのでそれは防ぐことはできた。
誰もいない場所から声がしたら大問題だからね。
ということで、スイスイ進んで10分ほどで10階層ボス部屋。
言っていなかったがこのダンジョンボス部屋が10階ごとに存在している。
一つ目のボス部屋はコボルトの筈だが、すでに倒されていて1時間の自由通行タイムになっていた。
「リベルのおかげですごい速さで進むんだが…今までの道にはいなかったんだよな?」
ダイとはタメ口で話せるくらい打ち解けていた。
「うん、いなかった。索敵魔法の範囲を階層全体にしているけどまだ、ソワリの反応はない。」
残念ながらもっと下にいるみたいだ。
「待ってくださ〜い。」
遅れてやってきたサルラ。
もう魔力がなくなりかけている。
ダイから聞いたが基本ダイが魔法。
サルラが剣士らしい。
見かけによらず大剣を使うんだとか。
「サルラの大剣見せてくれない?」
その大剣がずっと気になっていたのだ。
なんでもレアドロップらしい。
「別に構いませんよ。どうぞ」
サルラの休憩時間の間、僕はその剣を見ることにした。
「鑑定」
界王の大剣 名称:リム
ランクB:古代級
スキル:刀身変化(水)、切断、伝水
所有者への効果:水中呼吸、水中歩行、水魔法を熱湯に変えて使用できる。
所有者:サルラ・ナドラ
「ありがとう、これリヴァイアサンドロップなんだな。」
「よくわかりますね。これ1000体に一つとか言うレアでめっちゃ嬉しかったんですよ。」
「大事にしなよ」
そうえばここの40階層のボスもリヴァイアサンだったし、何か出たりしないかな?
そんな希望を胸に膨らます。
「そろそろ行こうか」
「分かりました。」
「はい」
11階層は洞窟エリアで10階層とあまり変化はない。
あることとすれば、モンスターがバッド系とスネイク系になったことと
「人が減りましたね。」
「そうだね。」
人ががっと減ったことだろうか。
これなら風魔法を使ってもバレないかな。
15階層階段
「みなさ〜ん、まもなく後方から突風が吹いてきます。16階層と17階層はぐねぐね道に見せて実は正解は真っ直ぐという階なので一気に飛ばしますよ。」
人がいないことを願おう。
「3、2、1、」
「えっちょっとまっーーー。」
サルラが焦っている。
「ウイング」
ボォオオオ
後方からすごい音が響く。
「これ、大丈夫ですか?」
「一応、モンスターは切り刻むようにしてるけど…やりすぎちゃったかも」
「「えぇぇぇー!」」
音が大きくなる。
そして
ドンッ
衝撃
キーン
気圧が変わって耳が聞こえない。
右を見るとダイは何やら叫んで楽しそうにしている。
サルラは言わなくてもわかるだろう。
景色が飛ぶようにすぎているがしっかりと僕は見ている。
「ストップ」
魔法に魔力を流すのをやめる。
風がだんだんと弱くなって耳がダンダンと聞こえてくる。
2つ目の階段を下って最初の曲がり角がだんだんと近づいてくる。
ヤベ、ぶつかる。
「ウイング!」
「ストップ」
「ウィング!」
「ストップ」
地図を見ながら曲がる方向に風を流す。
止めるを繰り返す。
それが何度もあってようやく直線の道に入る。
「止まれ!ウイング」
「ストップ」
自分と逆方向に風を吹かせて止める。
「止まったー。」
「危なかったなぁ、リベル。でも楽しかったぜ。」
「死ぬかと思いましたぁー。」
「ごめんごめん。」
僕は二人に休んでもらっている時に地図を見る。
実はこの直線の通路20階層のボス部屋の前なのだ。
20階層のボスはバンパイア。
人数がいると戦いにくくなるというcランクのモンスターだ。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「ああ、気をつけてな。」
体鳴らしと行きますか。
ーーーー
ヴァンパイアと戦ってただいま21層。
先程と打って変わって草原の見晴らしの良いエリアだ。
こここそさっきの風で移動したいんだけど。
「ソワリさんを助けないといけないからやっちゃって。」
「そうだぞ人命最優先だ。」
遠慮なく使わせてもらった。
「「キャァァァァァ」」
その日25階層の街にとてつもない強風が吹き付けたという。
先程とは違い協力して30階層ボス、コボルトリーダーをやっつける。
まだ、ソワリの反応はない。
31階層は再び洞窟エリアだ。
しかし、さっきと違うのは通路に下から50センチほどが水に使っていること、主要モンスターがデスフィッシュになることである。
水浸しになることと、このモンスターの倒し方のためゴム靴が必要不可欠な層だ。
勿論、飛行魔法を使っているのでゴム靴入らないが、デスフィッシュが水面を出て噛み付いてくる。
32層にたどり着くのにそのせいで5分かかってしまったので絶対にゴム靴を履いていることを祈って、32層からはその階層全域に雷鳴剣で雷魔法を流すことにした。
その効果は絶大で40階層まで楽に到達できた。
ここがリヴェイアサンのボス部屋。
水に濡れたターコイズのような大きな扉が付いている。
「入るけど準備はOK?」
「勿論。」
「OKです。」
バタンッ
扉を開けるとそこにはリヴァイアサンが…いなかった。
中に入る。
「次の階層への出口は空いてないよな」
ダイがいう。
「事前情報では最初は目の前に現れるらしいんだけど」
何かが違う?
そんな言葉が胸をよぎる。
「一回でよーー」
一回出よう。そういようとした瞬間。
バタン
扉が閉まる。
ボス部屋の扉は絶対に閉まらない筈なのに!
「何かがおかしい。集まれ!」
3人が警戒しながら集まる。
すると左右に置いてある龍の像から水が流れる。
みるみる水位が上がり飛行魔法で飛んでいる僕らを追い越そうとしてくる。
「どうする!リベル。」
「とにかく上に上がろう。」
上に上がっても水はさらに上昇する。
まだリヴァイアサンは現れない。
「明らかに異常事態だ。ボスはリヴェイアサンではない可能性が高い。」
「情報が間違っていたってこと?」
「いやサルラそれはない。それにしては大多数の人が話しすぎている。おそらくこれはスタンピードの前兆と似ている。」
「スタンピードの前兆?」
「うん、前も経験したことがある。アースドラゴンの層にファイアドラゴンが現れたんだ。おそらく今回も50階層以上、下の魔物が出てくる。」
今や、水は天井に達しそうだ。
「今から水中呼吸と防御魔法それにメッセージをかける。何が出てきても、何があっても離れないこと!」
「「Oーーー」」
ドプン
水に全身が浸かる。
すぐに全員に水中呼吸と防御魔法、メッセージをかける。
「ありがとう」
脳にダイの声が流れてくる。
ダイの方を見ると親指を立てている。
これじゃ見にくい。
防御魔法を使って目の前に空間を作る。
これで目に水が入ってこない。
ガタン
下から音がする。
下を見ると床が開いていく。
何が出てくるんだ?
完全に開いて真っ黒な穴が姿を現す。
刹那、下からとんでもない魔力が上がってくる。
まだ、目では捉えられない。
真っ暗なままだ。
見えた!
黄金のたてがみ、大きなツノあの魔物はーー。
「キングリヴァイアサンだ!」
「リベル、なんだその魔物は!」
「リヴァイアサンの上位互換で強いだけじゃない。リヴェイアサンを5体しもべとして連れてくる。」
そういうないなや下から5個の魔力反応。
リヴェイアサンで間違いない。
「リベル!俺らがリヴェイアサンを受け持つ。その間にお前がキングリヴァイアサンを倒せ。」
二人は既にフォーメーションを組んでいた。
「俺らだってBランクなんだ。負けるわけがねぇ」
リヴェイアサンはcランク上と言われているが5体集まればAランクに匹敵する。
二人の負担はでかいだろう。
二人に当たらないようにコントロールして、一発魔法を入れる。
これで援護になるといいんだが…
手にの前に黄色の魔法陣がいくつも重なり、立体を作っていく。
「二人とも気をつけろ!サンダーストーム!」
魔法陣から雷が放たれる。
雷が水をかき分けて6つの影に当たる。
キングリヴァイアサンには効かなかったが、リヴェイアサンには少しながら効いたようだ。
「頼む!」
僕はそう言って、キングリヴァイアサンへ向かう。
キングリヴァイアサンAランク上のその力見せてもらう。
雷鳴剣を構える。
「頼むぜ相棒」
「おりゃぁぁ」
勢いをつけてキングリヴァイアサンの皮膚に向けて切ったが少し剣先が入っただけでそれ以上進まない。
剥がれた鱗が下に落ちていく。
「くそ」
水中で体が重いことも相まって力が入らない。
そんなことを思っていると、左からすごい勢いでキングリヴァイアサンの尾が飛んでくる。
「ウイング」
風魔法でなんとか避ける。
その勢いを使って再び斬りかかるが結果は同じ。
パンで鉄に斬りかかっているような無理だ!という感じがする。
どうするリベル。
恐らく鱗にはミスリルが含まれていて魔法はほぼ無効化される。
それに加えて体が硬すぎる。
ジロっとこっちを見つめるキングリヴァイアサン。
馬鹿にされているらしい。
尾を振るキングリヴァイアサンすると尾から大量の結晶、槍が放たれる。
「危ない!」
超切断!
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
反射神経で全て切り落とす。
こっちはSランク冒険者なんじゃ!
「ウイング」
尾から結晶を放って硬直しているリヴェイアサンに向かって突進する。
体を切ろうとすればさっきと同じ。
魔法は鱗で防がれるならば!
鱗を削ぎ落とす!
真っ直ぐに向けていた体をウイングを10個ほど使って無理やり回転させる。
これには余裕だったキングリヴェイアサンも目を見開く。
尾を奮い立たせて避けようとするがもう遅い。
ザンッ
広範囲にわたって鱗が削ぎ落とされ肉が露出する。
「Gyaaaaaaa!」
キングリヴァイアサンも雄叫びを上げる。
しかし、今度はこっちが無理やりの姿勢変更で硬直する。
その隙を見逃すはずがなく、キングリヴァイアサンの尾が体にクリーンヒットする。
「久しぶりに痛い!ヒール」
体がどんどん治る。
キングリヴァイアサンは自分の弱点をよく理解しているらしい。
肉が露出したところを隠してこちらへ攻撃をしてくる。
キングリヴァイアサンの目に魔法陣が浮かぶ。
これは、ブレス!
ウイングで逃げるが間に合わない!
「プロテクト!」
防御魔法を重ね掛けする。
パリンッ
音が鳴って防御魔法が切れる。
ブレスの白い光で視界が埋め尽くされているのが徐々になくなっていく、そして、その向こうには尾。
またもやモロに攻撃をくらう。
パリンッ
2個目の防御魔法かけといてよかった。
キングリヴァイアサンは自分の全力で、僕を倒せなかったことに驚く。
そして、
「肉がもろ見えなんだよぉぉお!ウイングゥゥウ!」
肉薄。
「静雷」
自分の魔力の4分の1を剣に流し込む。
バチッ
いつもより大きな音が鳴って
「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaa a a ..」
キングリヴァイアサンの雄叫びが消える。
そして、その体はどんどん下へと落ちていく。
雷鳴剣も僕の魔力に耐えきれなかったのか僕の手の中でチリに帰る。
「ありがとう、相棒」
そうえば、と二人の方を見る既に3体やっつけられていて残り2体。
「まて!今行く!」
そこに、サルラからのメッセージが入る。
「リベルさんダイを助けて!」
よく見ると人影が一つ足りない。
下を見ると穴に吸い込まれていくダイの姿が…
「今行く!」
ウイング
ダイを拾い上げる。
気を失っているだけだ。
ダイを抱えたまま、サルラのもとへ向かう。
サルラの大剣は半分から折れていた。
「やぁぁぁぁ!」
深々とリヴェイアサンの体に大剣が刺さる。
瀕死の一体を倒したサルラに後ろから一体のリヴェイアサンがブレスを浴びさせる。
「ーーー」
音もなく沈んでいくサルラ。
「サルラーー!」
まず、リヴェイアサンに飛び込む。
そして、封印していた剣を出す。
「断裂!」
リヴァイアサンを一刀両断する。
すると、下へと水が吸い込まれる。
吸い込まれていくサルラ。
ウイングを使って必死に追いつく。
手をーーー掴んだ!
二人を抱えたまま頭が出てきそうな龍の像の上へと泳ぐ。
ベチャッ
なんとか着地した僕は龍の像の上に二人を置く。
治療したいが魔力が空だ。
「もうちょっと耐えてくれ。」
下を覗き込むと、水はもうほぼなくなりかけている。
数秒後、水が完全に吸い込まれて、そこにはポッカリと大きな穴が口を開けていた。
そこに水が存在しなかったように。
「あの中に入ったらどうなるのだろうか?」
想像したくもない。
徐々に床が閉じていく。
ガッチャン
完全に閉まった。
まず、床が抜けないかどうか確認。
それから二人を丁寧にゆっくりと床に下ろす。
あと、少しで魔法が使える。
床にはいつのまにか大きな宝箱が置いてあった。
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