第五話 不滅のダンジョン・序
ソワリが誘拐された。
完全に油断していた。
こんな森の中だから誰もいないだろう。
この強度の認識阻害魔法を解ける人間なんていないだろうと。
それが、いた。
これを油断と言わずなんというんだ。
幸いソワリの魔力痕跡が残っている。
「マジックライブ」
この呪文は微かな魔力を捕らえる魔法だ。
オレンジ色の温かな光が北東へ続く。
「北東…王都か。」
今日は忙しくなりそうだ。
王都へ向かって飛行を開始する。
ーーーー
王都。冒険者ギルド本部。
ここにはあのギルドマスターがいる。
それに情報屋もいる。
何か知っているかもしれない。そんな希望にすがってここにきた。
裏口を叩く。
先ほどの応接室へ案内される。
ギルドマスターがやってきた。
「お帰りなさいませ、リベル様。ソワリさんに言付けを頼まれていたので、それ通り報酬をお渡ししましたよ。」
「えっ、今なんて言った?」
思わず殺気立ってしまう。
「ですから、先程ソワリさんに報酬をお渡ししましたと。」
ソワリが報酬を?
僕はそんな言付けを頼んではいないし、彼女が飛行魔法を使えないのだからそんなにはやくつかないことくらい分かっているだろうに。
「なんで、報酬を渡した?」
「ソワリ様が、リベル様が用事で後でいらっしゃるのでメイドとして先にいただけないかと。それに加えてリベル様が制御している飛行魔法でやってきたとも仰れていらしたので。何か問題でも?」
メイドとして。この一言はリベル・リキード男爵の代理といういわば絶対的権限なのだ。
報酬を渡さなければ後で問題になるそう思ったのだろう。
「実は、ソワリが誘拐された。」
えっ!驚くギルドマスター。
「僕がウォータークリオネを倒している間の3分。僕がかけた認識阻害魔法を破ってだ。」
「そ、そうですか。しかし、リベル様の魔法を破る人物がそこに…?」
「そこなんだ。僕の索敵魔法にも引っかかていなかったし、偶然とは言いづらい。恐らく、計画的に練られたものだ。そこでだ!」
ギルドマスターに対してウインドカッターを待機状態にして向ける。
「ヒィ」
「依頼を持ってきた貴方に容疑がかかっているんだけど?」
当然の如く、依頼を持ってきたギルドマスターに容疑がかかる。
僕たちは依頼が欲しいと言っただけでウォータークリオネの依頼とセッティングしたのは他の誰でもない。
このギルドマスターである。
もし、ギルドマスターが犯人ならば手練れをよういするのぐらい容易なことだろう。
「どうなんだ?」
「え、ええと、私は何もしておりませんが…。あの依頼もあれ以外無かったのでお出しただけで…」
「メモを見せろ!」
「はい…」
ギルドマスターが出したメモリチェーンを確認する。
確かにウォータークリオネの他にはスライムの常時依頼があるのみでこれを選ぶしかなさそうだ。
「分かった。、嘘は言ってなさそうだな。だけれど、ソワリが見つかるまでは魔法をかけさせてもらう。いいな?」
「分かりました。」
僕はギルドマスターの首に怪しい行動をしたらウインドカッターが発動する魔法を仕掛けた。
少し条件が曖昧で誤作動する可能性がある魔法なので使い魔と併用するのがベストだが、あいにくといない。
このことは黙って付けさせてもらおう。
死んだらごめん。
一応、致命傷にならない強さにして、近くに一人職員をつけさせてもらった。
「何かソワリが言って無かったか?」
「そういえば、不滅のダンジョンとひとこと仰られておりました。」
「不滅のダンジョン?」
聞いたことがない。
「はい、Dランクのダンジョンです。いまだクリアされておらずそのため、3人以上でないと入れないというダンジョンマスターの呪いがかかっています。基本ソロのリベル様がご存知ないのも仕方ないことだと。」
「Dランクか。」
行ってみるしかなさそうだな。
3人…一人は僕として、他の二人…サスベルとローラは忙しいだろう。
先程、見張るために呼んだ受付嬢に尋ねる。
「すまない。二人ほど手の立つものを集めてくれないか?出来るだけ温厚な人にしてほしい。」
「分かりました。」
走り去る受付嬢。
数分後
「この方達でいかがでしょう。」
受け嬢が連れてきたのは一人の青年と一人の少女だった。
パーティーを組んでいるのか。
「二人とも突然の呼び出し申し訳ない。僕の名はリベルという。」
すると、少女の方が体をビックとさせる。
「え、創作の魔術師。あ、すみません。Bランク冒険者になりたてのサルラです。」
「あ、俺も。同じくBランク冒険者のダイです。」
うん、二人ともいい子そうだ。
「実は不甲斐ないことに俺の仲間が誘拐されてしまった。」
驚く二人。
sランク冒険者でも、そんなことがあるんだと少し恥ずかしい所を見せてしまった。
「誘拐された先の場所で、今怪しいのが不滅のダンジョンというところなんだ。」
あ、それでと納得する二人。
どうやら知っているらしい。
知らないのは僕だけなのか?
「俺らと一緒にダンジョンに行ってくれないかということですか?」
ダイが尋ねる。
「話が早くて助かる。」
緊急にしては有能すぎる人材かもしれない。
ダイとサルラが話し合っている。
「分かりました。実は俺らもう依頼をやった後でして、動きが鈍くなってしまうじゃもしれないのですが、それでもいいのならばやります。」
「私もです!」
「ありがとう。僕は構わないから今日一日よろしくお願いします。」
「「はい!」」
かくして、僕たちは不滅のダンジョンへとむかうことになった。
不滅のダンジョンは幸いなことに王都内部にあった。
「こんなところにあるのか。」
「はい、王城の後ろなので意識していないと気付かないんですよ。」
とサルラ。
しかし、場所はわかりにくいのにすごい反響だ。
冒険者が所狭しと並び、職員も10人ほどいる。
空は僕の気持ちとは打って変わって晴れている。
もう7時なので、かがり火が焚かれ始めていてどこか感動的だ。
「二人は何歳なんだ?」
ランク確認の列に並んでいる時僕は質問をした。
「えっとですね。俺が22で、サルラが19です。」
僕より年上だったの!
「僕は17です。ごめんなさい。僕さっきから敬語を使っていなくて。」
「別に構いませんよ。冒険者ってそういうものですし。ね?サルラ」
とダイ。
「うん、私もそういうの全然気にしないので敬語じゃなくていいですよ。」
「ありがとう。じゃあ、そうするよ。」
10分ほど話していたらそんなこんなで最前列にやってきた。
「ようこそ、不滅のダンジョンへ。こちらは、Dランクダンジョンです。Dランク以上の方が二人以上いないと入場を許可できません。また、ギルドは内部で起こったことに対し、責任を負いませんのでご注意ください。冒険者カードの提示をお願いします。」
「「「お願いします。」」」
3人ともカードを出す。
Bランクのアイアンのカードが夜空に煌く。
「Bランク冒険者のダイ様と、Bランク冒険者のサルラ様、してSランク…Sランク冒険者のリベル様ですね。」
少し驚きが出てる受付嬢だったが、今回は大声で叫ばれることの無くてあんしん。安心。
「このメンバーでしたら、郊外のBランクダンジョンへ向かわれた方がよろしいと思われますが…」
「ここで大丈夫です。あと、黒髪の女の子を見かけませんでしたか。」
「それなら数時間ほど前にお通ししました。黒髪で珍しかったので覚えています。いってらっしゃい。」
にこやかに手を振る受付嬢。
ラッキーなことに対応したのが同じく人だったらしい。ここで確定した。
ソワリはここにいる。
「行こう二人とも」
「「はい!」」
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8時半に続きをアップします。
修
物語の進行上、矛盾が生じたためダンジョンのランクをCからDに変更しました。