第四話 Sランクの力
「ということでやってきましたー、ウォータークリオネの泉!」
泉は王都から飛行魔法で訳20分。
南西インデス領。
その砂漠のど真ん中にたつ奇妙なオアシスにある。
「リベル様?どうなされました!?風邪でもひかれたのですか!」
心配そうに駆け寄ってくるソワリ。
結局、最後までついてきた。
その胸元には、Fランクの銅板が煌めいている。
「大丈夫だよ、大丈夫、大丈夫。ちょっとガッつきすgーー」
バタンッ
飛び込んできたソワリによって押し倒される形になる僕。
ぼ、僕の顔の上にソワリの顔がぁぁ。
心臓が痛い!
ドキドキが止まらない。
「申し訳ありません。リベル様少し興奮してしまいーー」
ソワリがそう言い始めた瞬間。
僕の索敵魔法が知らない魔力反応を捕らえた。
魔力は猛スピードでこっちを狙いに来ている。
形は槍のような水物質。
ウォータークリオネからの攻撃で間違いはないだろう。
狙いはソワリ。
「危ない」
バタン
余裕シャクシャクでソワリを押し倒す。
今度は僕が押し倒すような形となってしまうが…
ソワリはモンスターと戦う経験がないから、こうでもしないとソワリが殺さてしまう。
僕がいるからあんなに喋ることができるわけで。
冒険は本来、死と隣合わせだ。
「僕がいるから殺される心配なんてしなくていいんだけどっ!」
体を受け流した勢いで起き上がらせる。
そしてイマイチ何が起こったのか理解していなさそうなソワリに手を差し伸べて彼女が立つのを待つ。
その間、攻撃は止む。
「今のは…」
「ウォータークリオネの攻撃だよ。見えた?」
「ほんの少し、リベル様が押し倒すときに一瞬。」
ソワリがスカートの裾についた泥をはたきながらいう。
弱いと言ってもそれは僕にとってであって一般人にしては強敵以上のウォータークリオネ。
それの攻撃が初戦闘で一瞬でも見えるってことはソワリには才能があるのかもしれない。
この間、攻撃は止む。
Aランクのモンスターだ。
その少しばかりの知能で人間を弄ぶつもりなのだろうが!
ザシュッ
切り離されたウォータークリオネの水が制御を離れて後ろの地面に落ちる。
気を抜いた瞬間に後ろからの追撃。
やっぱり、知能がある。
まぁ、そんなことに興味なんてなく。
「結構切り味いいじゃんこれ。」
雷鳴剣の切り味に驚いていた。
次は伝雷で雷を刀身に纏わり付かせる。
どうなるのか、頼むよ仮の相棒。
鞘から出した刀身はバチバチと楽しむかのように音を鳴らす。
「僕たちが誰かわかってるのかなぁ?遊んであげる。」
悪魔の暴虐が始まる。
ーーー第四話 「sランクの力」
25分前部屋。
「分かった。じゃあ、お嬢さんにはギルドカードを発行しないといけないね。」
パンッ
男が手を鳴らすと扉から水晶板を持った女性が入ってきて、机の上に水晶板を置く。
この魔道具は対象の名前、性別などを登録、刻印、管理できるというものでそれらは全てどこかに保存されている。らしい。
ギルドマスターが魔力を流し込むと魔道具が淡い光を放つ。
「では、お嬢様。手をかざして、名前と性別。年齢を仰ってください。脳で思い浮かべるだけでも構いません。」
「分かりました。」
ソワリが手をかざして数秒後、水晶板から銅板が出てくる。
登録が完了したみたいだ。
「これで登録は完了です。ではお二人のギルドカードを頂けますか?」
ギルドカードを受け取ったギルドマスターは水晶板の上にそれらを乗せ操作をする。
すると、水晶板からさっきとは違う黄金色の光が放たれる。
「Aランクの依頼ですので本来Fランクのソワリ様は受けられないのですが、なんとかしておきました。」
なんか、権限をゴリゴリに使ったらしい。
大変でしたよとギルドマスター。
本部は各国に設置されているため他国のギルドマスターにあの一瞬で承認をもらっていたらしい。
「それで絶対条件として、ソワリ様がお亡くなりになられても当ギルドは責任をもちませんがよろしいですか?」
「もちろん、僕がいるところでは誰も死ねないかね。」
死のうとしても絶対に止める。
「それでは行ってらしゃい。」
そんなこんなで依頼を受注した僕たちは裏口に案内された。
「お帰りの際もお手数ですがこちらからお入りください。」
「分かったよ」
あの視線はいつになっても慣れないし。
それで、ソワリと行くか、行かないか論争があった後。
「じゃあ、ソワリには短剣と刀かたびらを着てもらおうかな。」
空間魔法で収納していた短剣と軽い割には防御力の高い刀かたびらを手渡す。
短剣も結構いいものの筈だし、刀かたびらはミスリル製なので防御力もさながら魔法をかけやすい。
「こんなに高いもの私が使ってよろしいのですか?」
「うん、死んじゃう方が困るしね。」
ソワリが刀かたびらを着終わったので防御魔法もかける。
「これで、ドラゴンのブレスも一発なら耐えられるよ。じゃあ、行こうか。」
「はい!」
初冒険のスタートだ!
ーーー
そして現在。
「えーと、ソワリは戦う?」
「私はやめておきます。そもそもここにきたのはその剣を使っていただくためですし。」
「OK、じゃあ見てて。」
ソワリに認識阻害を魔法をかける。
これでウォータークリオネはソワリのことを見ることができない。
索敵魔法に5つの反応。
反応を頼りにザ、ザ、ザ、と3本切ると4本目、5本目も制御が離れて水になった。
どうやら切った瞬間に流した雷が本体にダメージを与えたらしい。
追撃も飛んでこない。
森の中をただひたすらに走り抜ける。
目の前にスライムが現れるが
「パワー」
足に強化魔法を施して踏み潰す。
流石に上級の魔物はいないが、下級は少数だが生き残っている。
まだ、できたばかりだなこの泉。
次第にまた、水の槍が飛んでくるようになる。
それも数を増やして。
だけど、一息で全て斬り伏せる
つまらないので雷は外した。
槍の追撃が止まらない。
そして、数が徐々に増え太さも増してきた。
次の槍への時間も短い。
「本体まであと少しか。」
槍を斬り伏せていると、突如として目の前に蔓の壁が現れる。
歩みを止めて観察する。
壁は何本もの蔓が絡まっていて、槍が突き出た所からたちまち再生が行われているのを見るにこの剣本来のスペックでは少々負が悪い。
「超切断、居合切り」
「ーーーーーーーーーーパサッ」
無音で壁が崩れ去る。
中に入ると周りが蔓の壁がで囲まれている円状のコロシアムのようで、その中心に広がる泉に奴はいた。
円の大きさは直径50mぐらい。
やっぱり、まだできたてほやほやだ。
ウォータークリオネはあんなに水の槍を出したというのにスタンしていないし、水も枯れていない。
強さと場所が見合わない。
矛盾している。
可能性としては移動してきたのかもしれないが、この手の自分の縄張りを作る生き物は中々移動しない。
何かが起きているのだろうか?
こちらに気づいたウォータークリオネが槍を単純な横方向ではなく三百六十度、地中から空から槍を出してくる。
「よっし、試すか。雷魔法 静雷。」
無音で全方位の槍が解けるようにして消えてなくなる。
「これで終わりだ。」
足に魔法を付与する。
一瞬でウォータークリオネに肉薄する。
「居合斬り」
ウォータークリオネの核を叩き切る。
コロンッ
真ん中からずれて二つに割れた核。
その中にある石が宝石として売れるのだが、Aランクにしては…
「安いんだよなー、帰るか。」
と、ソワリの機嫌を朝、損ねてしまったことを思い出す。
「帰る前にこのお金でケーキ屋に行こう。」
ペロリとローラからのお土産も食べてたし。
店が閉まらないよう急いでソワリの元へ向かう。
「おーい、ソワr…」
ソワリがいない。
認識阻害魔法が解けている。
あの、強度の認識阻害魔法が解ける人物なんて両手に指ほどだ。
それほどの人物がたまたまここに?
そんなわけがない。
ソワリが誘拐された。
楽しんでいただけたらブックマークお願いします。
この後も8時と8時半に上げるので是非見てください。