第三話 冒険者ギルド本部
翌朝、目を覚ました僕。
食堂でワインを飲んでいたはずなのに、いつの間にかベッドで寝ていた。
ロールに運ばれていることを願おう。
ソワリに運ばれていたら恥ずかしすぎる。
「起きるか…」
体がベッドに座ったまま動かない。
二日酔いでだるい、だるすぎる。
頭痛はないけど、もう一歩も歩きたくない。そんな感じだ。
1分後何とか立ち上がった僕はクロッシングルームへ向かう。
ガチャ
そこには…服を片手に持ったソワリが…
「へ?」
「おはようございますリベル様。昨晩は楽しませていただきました。」
深々とお辞儀をするソワリ。
そんなソワリを横目に脳内で昨日の案内の時の言葉がフラッシュバックする。
「ここは、クロッシングルームです。着替えはここで私が行います。」
撤回するの忘れてたーー!
「どうされましたリベル様?」
不思議そうなソワリ。
「あの…ソワリ服はーー」
「今から着付けさせていただきます。」
そうじゃなくて
「服はーーーー」
ジロッ
ごめんなさいっ!
僕のズボンに手がかけられる。
と思うないやな、
「完了しました。」
「はやっ!」
ピッカピカのマッドなブラックのシャツにそれに似合うズボン。
腰にあしらわれたチェーン。
正真正銘あの、服。
「メイドなので」
フンッと鼻を鳴らし少し自信満々に語るソワリ。
メイドに早技恐るべし。
本人も恥ずかしくなかったのでこれなら耐えられそうだ。
「一階でロールが朝食を用意して待っています。」
「ありがとう」
なんかソワリが忠実な犬に見えてきた。
思わず頭を撫でてしまう。
サワサワ
少し僕より身長が低いので撫でやすい。
「ご、リベル様!」
「あ、ごめん、ごめん!やましいとか、そんなんじゃ。警察に突き出さないで!」
驚くソワリに我に帰る僕。
女の子の頭を撫でる僕。
どう見ても犯罪臭しかない構図だ。
「大丈夫です。少し取り乱してしまっただけですので。」
「本当にごめん。」
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
心なしか、しゅんとしてしまってるし。
これは、何かで埋め合わせをしよう。
「それでは、先程の通り。」
「ああ、ロールを待たせてるから、行ってくるね。」
バタン
ドアが閉まる。
「あと三週間…」
ぽつりと呟かれたその言葉は冷たかった。
ーーー
ダイニングへは少し道に迷ってしまったがたどり着くことができた。
グーーー
昨日、あんなに食べたのに僕のお腹は欲張りだ。
「おはようございます。リベル様」
「おはよう、ロール」
朝の挨拶を済ませたあと、ロールにも感謝の言葉を言われてしまった。
あれを作ったのはロールなんだから僕が言われる筋合いはないんだけどな。
席に座った僕にロールから朝食の説明を受ける。
「本日の朝食の献立です。昨日リベル様が多いと仰られていたので少なめに調理いたしました。また何かあればお申し付けください。」
その通り、量が少なくなっていて僕一人に十分の量になっていた。
「メインは朝から重たいものはということでラレル鳥のオムレツ、サラダはランベル法国産のレタスを使ったシーザーサラダ、スープはラレル鳥のスープとなっております。」
なんかすごい昔にサスベルと行った高級レストランみたいで落ち着かない。
ラレル鳥のオムレツだって…ラレル鳥ってあの超高級食材のラレル鳥!?
というか、そもそも朝食費って誰が払ってるんだ?
「質問いい?ロール。」
「はい?なんでしょう」
「ここの食費って誰が払ってるの?」
「王様の金庫から差し引かせていただいています。」
「それって食費だけ?」
「ほかの費用もですが…」
心配そうなロール。
ロールに非はない。悪いのは僕だー!
王様の金庫から=国庫
それは即ち税金で食べていることになるわけで…
「ロール!僕の口座教えるからこれからはそこから引き出して!責任は僕が持つ。」
「かしこまりました。」
早いうちに気づけてよかった。
1ヶ月気づいていなかったらどうなっていたことか。
幸い気づけたし、僕の口座にはそこそこの金額はあるはずなので大丈夫だ。
ひと段落ついたので朝食を食べることにしよう。
「いただきます。ーーー!」
ラレル鳥は高級食材だけあってめっちゃうまかった。
もう国庫のお金で払ったしまったラレル鳥の値段が6桁行っていたのは秘密だ。
ーーー第三話 「冒険者ギルド本部」
「リベル様本日はどうなされますか?」
朝食を食べ終わったあと、執務室でソワリにそう聞かれる。
「ん〜、どうしようかな。」
初日なので執務今日はない。
現状暇である。
「でしたら、王様から賜った剣の試し斬りをなされてはいかがですか?」
剣とは宝物庫にあった剣のことである。
宝物庫の方を見る。
使いたくないんだけどな。
だけど…着替えの件でソワリは有言実行ってことがよく分かったからな。
絶対に使わせるだろうし。
ここは一つ芝居を打とう!
「じゃあ、そうするか。」
ふかふかの椅子から立ち上がり宝物庫へと向かう。
二人で鍵を開け剣を取り出す。
黒に金の装飾が施された鞘から剣を出してみる。
刀身の澄み具合から業物だということがわかる。
これはもう一種の芸術作品だ。
「鑑定」
スキルを使って詳細を調べる。
結果はこんな感じだ。
雷鳴剣 名称: 名前がありません
ランク:A(国宝級)
スキル:居合切り、イカヅチ、伝雷、超切断、超雑多斬り
所有者への効果:雷の影響を無効、雷魔法の効率化、オリジナル魔法 静雷の使用を可能にする
所有者:リベル・リキード
国宝級だし、これ殺人特価武器だから下手したら秘宝級だぞ。
試し斬りは外でやったほうがよさそうだ。
外でやれば、しなくてもバレないだろうし。
よし、そうなれば!
「冒険者ギルドに行ってくる。」
ーーーー
考えが甘かった。
「冒険者ギルドに行ってくる!」といった途端
「私も行きます!」
誰も、想像ができない。
これじゃ試し斬りするしかないじゃないか。
僕の試すフリをしてブラブラと外で時間を潰してから帰る作戦は失敗に終わった。
今は街でソワリと一緒に冒険者ギルドへ向かっている。
「ソワリ、冒険者ギルドは綺麗な場所じゃないぞ!」
「大丈夫です。少しのことなら耐えられます。」
一人で意気込むソワリ。
こういってさっきから、「仕事は?」「まかせました」「留守番ーー」「ロールに頼みました」と引き留めも失敗に終わっている。
メイド服では目立つので普通の服に着替えてもらったが、今は別の意味で目立っている。
通りすがりの男が全部ソワリを見るのだ。
そして、俺がいることに気付いて嫌悪感を示した立ち去る。
実質公開処刑じゃないか。
「あそこじゃないですか?リベル様!」
大声で突如ソワリがいう。
突然の様、発言で女性からも嫌悪の目を向けられる。
ご主人様から変えといて本当によかった。
「そうだよ。」
「思ったよりも大きいんですね。」
「まぁね。本部だし。」
冒険者ギルドは通常は小さいのだがここは本部ということもあってなかなかに大きい。
壁は純白でお洒落な街頭がいくつもついている。
その中に大柄な男たちが入っていくのはいつ見ても見慣れない。
「行くか。」
「はい。」
今日は一個モンスター討伐をやって帰る予定だ。
ギルドに入ると奥が酒場、手前が受付となっていて、お酒の匂いがこっちまで少し漂ってくる。
まだ、昼の11時だぞ。
お酒で思い出したが二日酔いは昼に近くなったこともあってかほぼなくなった。
受付まで歩みを進める。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルド王都本部へようこそ。ご用件を。」
受付嬢は新入りのようで僕の顔を知らないらしい。
良かった。
「クエストを受注したい。」
勿論、試し斬りのためである。
「2名様ですか?」
「いや、僕だけで、彼女は付き添いだ。」
「ギルド証の提示をお願いします。」
僕はカウンターにsランクのオリハルコンのカードを置く。
それを見た瞬間受付嬢が凍る。
「s、sランク!?」
大声で言わないんで欲しいんだけど。
当然酒場の目線が僕に釘付けとなる。
「sランクって言わなかったか?」
「あのひ弱なガキがsランク?あれがなれるなら俺も今更sランクだっつうの。」
「でも、今、竜王討伐の件で創作の魔術師様がきてるらしいぞ。」
「まさか…本物か?」
「ガキのくせに女連れやがって。」
「しかも、可愛いじゃねぇか。」
そして、自然の流れでソワリに下賤な目、僕にヘイトが集まる。
その状況に気づいたベテランの受付嬢がやってきて、
「申し訳ありません、この者にはまた申し付けておきますので。」
「うん、冒険者の個人情報は漏らしちゃダメなんだよ。気をつけてね。」
受付嬢はこれからたんまり絞られるのだろう。
人生は失敗無くして成功はないからね。
僕は怒らない。
それよりも、
「彼女を守りたいから個室を用意してくれない?」
「かしこまりました。こちらへどうぞ。」
ソワリの安全のため個室へと案内してもらった。
僕がいるからそんなことにはならないと思うけど万が一にということもあるからね。
個室に着くとお茶を出されてたので、お茶を飲みながら担当の人を待つ。
「遅れてしまい申し訳ありません。」
そう言って現れたのはギルドマスターだった。
なんか試し斬りのためにきたのに大事になってるぞ。
「いえ、そんなに待っていませんしお気になさらず。」
「お嬢様も、申し訳ありません。」
「リベル様がおっしゃっている通りです。」
「それで本日の要件は?」
ギルドマスターの目がキョロキョロしているどうしたのだろう?
「モンスターの依頼を受けたいと思っています。何かありますか。」
「その剣の試し斬りですか?」
ギルドマスターの目が剣へ向く。
「まぁ、そんなところです。」
「でしたら…」
ギルドマスターの両手首に魔法陣が現れそこから鎖のついた本が飛び出した。
重要事項のメモをま守るメモリガードという魔法だ。
「これなんてどうでしょう。」
パラパラと本をめくっていたギルドマスターがページを見せてくれた。
「ウォータークリオネですか。」
「はい、水属性ですし液体にも個体にも気体にもなる。一定範囲から動けないのでお嬢様も安心。また、ここからも近い。」
このギルドマスターしっかりと俺の剣の属性、目的を熟知した上で喋っている。
中々の目だ。
「その剣の試し斬りですか?」
あの一瞬で…。
ウォータークリオネはその三変化が厄介で素材もしょぼい。
それなのにAランクの依頼でギルド側も持て余していたのだろう。
厄介ごとを押し付けられた感があるけど、別にいいか。
「ではそれでお願いします。」
どうせなら、
「やっぱり、彼女も一緒の扱いで。」
こっちもわがままを言わせてもらおう。
いつも見てくれている方ありがとうございます。
更新したのがわかるようになるのでブックマークもおすすめです。