ホラーゲームで死にかける
セツナの家。
アリサとレイナはセツナの家に遊びに来ていた。
「やるならみんなで出来るゲームだよね!」
「だな。多人数ゲームはコレとコレとコレ。どれがいい?」
「あの、このゲームはどういったものなのですか?」
レイナが指差したのは怖い雰囲気のパッケージのホラーゲームだった。
「ああ、これは結構マイナーだからあまり知ってる人は少ないんだけど、結構怖いんだ。敵から逃走しながら脱出するゲームで、4人までプレイ出来る」
「面白そうですわね!やってみたいです!」
「ふっふっふ、あたしは怖いのが大の得意!レイナちゃんは怖いの大丈夫かな〜?」
アリサは挑発的な態度でレイナをからかう。
「大丈夫ですよ。幽霊は現実に存在しませんから」
「と、思うじゃん?でも幽霊が存在しない事を証明出来た人は誰もいないんだよ?本当に大丈夫ぅ〜?」
「大丈夫ですよ。いざとなったら塵一つ残らず消し去りますから」
「幽霊に敵意剥き出しかよ」
「と、思うじゃ〜ん?でも幽霊には実体が無いんだよ?本当に大丈夫?」
アリサは声のトーンを下げて怖がらせにかかる。
「た、確かに実体の無い敵には攻撃出来ませんが、それなら相手からも攻撃出来ないはずでは?」
「相手は幽霊だよ…?攻撃手段が物理的なものじゃなくてもおかしく無い…よ!」
「それはつまり….攻撃は一方通行ということですか?」
「そうそう。レイナちゃんは幽霊にフルボッコにされるんだよ…!ふふふふ…」
「大丈夫です。所詮ゲームですから」
「ありゃ」
「怖がらせるの失敗したなアリサ。レイナのメンタルは鋼より硬いんだよ」
「むぅ…」
アリサは眉を寄せて不満そうな声を出す。
「じゃあ始めていこうか」
セツナはゲームソフトをゲーム機に入れてスイッチを入れる。
「お〜、始まったね!わくわくするよ!」
ホラーゲームのタイトル画面を見て無邪気に燥ぐアリサを横目にセツナは薄ら笑いする。
ゲームが始まり、キャラクターを自由に動かせる画面になると、セツナはキャラクターを出口へと進める。
「ちょっとセツナ待ってよ〜!」
「待てないな。このゲームには待ってる暇もないからね」
「へ?」
突如テレビから男の「あ〜」という声が聞こえ始めた。
「…来たな」
テレビの画面が切り替わり、向こう側から何かが近づいてくる。
『あ〜〜〜〜』
近づいて来たのはブリーフ一丁の無表情のおっさんだった。
「ひっ…!」
アリサは小さく声を漏らす。その隣でレイナは動きを止めたかと思うと叫び始めた。
「い…嫌ああああああああぁぁぁーーーっ!!!」
途轍もない破壊音と共にテレビの画面はセツナによって粉々にされた。
「テレビがーーっ!!」
「セツナ何なのあれ!!恐怖のベクトルが違うよ!!」
「セツナさん…何故ホラーゲームで変質者が出てくるのですか」
「まあそういうゲームだから…かな」
「テレビは弁償しますので…とりあえず正座してください」
「え…」
「い・ま・す・ぐ」
「ひっ…!は、はい!」
(せ、セツナが殺される〜!!)
「大丈夫です…痛みは一瞬ですから」
「あ…あがっ……」
セツナはガタガタと震え、涙目になる。
「ではセツナさん…逝ってらっしゃい」
レイナは蹴りの構えをとり、高く振り上げる。
「うわああああああっ!!」
レイナは物凄い速度の蹴りをセツナの目の前で寸止めする。
「冗談ですわ。今度はありませんからね。セツナさんの趣味をどうということはありませんがわたくしに二度とこのような見苦しい物を見せないでくださいね」
レイナは影のある満遍の笑みを浮かべてそう言った。
その日からレイナの前では下ネタ全般は禁止という暗黙のルールが出来上がった。