第一話 憎しみの銃弾part4
「さすが神崎のところから送られてきたランクAのジェネラルだな。
疑ったりしてすまなかった。」
「確かに俺はまだ17歳ですからね。俺より上の人からみたら生意気なところもあると思うし、
気に障りましたら申し訳ございません。」
「いや、私はお前が気に入ったよ。できれば専属のボディーガードになってもらいたいもんだ。」
鉄兵は「考えておきます」というと、道場に倒れている山崎を抱え起こし、
背中から気を送り込んで、気絶していた山崎を蘇生させた。
山崎は最初はボーっとして周りをキョロキョロしていたが、目の前に鉄兵がいるのを確認すると
顔を怒りに染めて襲い掛かろうとしたが、三嶋に止められた。
応接室に戻り、三嶋の対面にあるソファーを勧められ座った。
硬くもなく軟らかすぎでもなく絶妙な座りごこちだ。
三嶋の後ろにはスーツ姿に着替えた山崎がバツが悪そうにたっている。
もう一度三嶋から今回のボディーガードの件を聞く。
三嶋は家にいるときに2度、銃で狙われている。
応接室でくつろいでいたときに1回と、寝室で本を読んでいたときに1回。
今は両方ともガラスを防弾ガラスに変えたらしいが、不安なのは変わらず早く犯人を捕まえてほしいとの事だった。
会社にいるときや、出退勤のときは三嶋専属のボディーガードに守らせている。ガードも厚い。
ガードの薄い自宅でのボディーガードと犯人逮捕が依頼だということだった。
「では早速ガードに入らせてもらいます。」
「うむ、頼んだぞ。」
応接室を出ようとすると30歳くらいの男がいた。
髪とヒゲはボサボサで伸び放題。服は上下ともヨレヨレのトレーナとジーンズ姿。
鉄兵を見るとそそくさと逃げていった。
「あれはわしの息子の祐次だ。32歳にもなって仕事もせずに部屋にこもって何かをやっている。
あれじゃあ、わしの会社をまかせる事はできん。困ったもんだ。」
鉄兵は三嶋にも色々悩みがあるんだなと思いつつ、三嶋が狙われた日の防犯カメラの録画されたものを
見せてもらった。家の門に1台、外壁に5台、庭に6台、玄関に1台と合計13台ものカメラがあり
建物の周りはほぼ全てカバーしているらしい。
カメラの録画に映っていたのは32歳の息子の祐次と、巡回するボディガードだった。
特に怪しい人物が外から入ってきたり、犯行後逃げていく姿などは映っていなかった。
録画されたフィルムを解析したが編集された後もなく、あとは遠距離からの射撃も考えたが
三嶋の家に残っている銃弾をみると、中国やロシアなどで流れている改造されたハンドガンタイプのものだった。
今度は実際に自分で庭を見て回ろうと思った。警察が色々調べたらしいが見落としがあるかもしれない。
「はあ、俺こういう捜査みたいなのはあまり得意じゃないんだよなあ。」
三嶋の家は門を入ると幅10メートルくらいの道が50メートルくらい続き正面に家屋の玄関がある。
家屋までの道の両脇は色とりどりの花がさく花壇があったり人間の背丈くらいはある果実の木が植えられている。
そして建物を囲むように外壁があるが、正面以外は家屋と外壁の間は10メートルくらいだ。
そこにも人が隠れられそうな木も植わっているが、逃げずに未だに隠れ続けるのは不可能だろう。
色々歩き回り、あることに気づいた。
あるルートを使えば防犯カメラにまったく映らずに寝室や応接室にいけるのだ。
巡回などでは通らないようなルートだ。玄関からでて5メートルくらいまで門に向かって進む。
そこから門を見ている状態で左側の木の陰に入る。まずここはどのカメラにも映らないだろう。
そして他のカメラは常に左右に動いているので、その動きのタイミングに合わせて
草の茂みや木や岩の陰に隠れながら寝室や応接室を銃で狙えるところまで近づける。
実際に鉄兵はそのルートを歩いてみて、録画された防犯カメラを見てみると
玄関からでたのを最後に鉄兵の姿はまったく映っていなかった。
「外部の犯行ではなく内部のものの犯行だな。」
それならカメラに怪しい人物が映っていないのもうなずけるし、あのカメラに映らない複雑なルートも
よほどこの家に詳しくないとわからないだろう。
そして決定的な証拠としてルート上にタバコの吸殻を発見した。