表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

04 山火事



神の宮殿でデート(仮)した日の翌日。

今日は月曜日だ。

英知はテレビのニュースを流し見ながら、朝食を食べていた。

「次のニュースです。今朝7:00ごろから、

 奇王県の表山で火災が発生しています」


へえ、割と近くじゃないか。

英知は咀嚼しながら考える。

あそこは確か、山の麓に住宅が隣接していて

山火事が起きたら割と危ない。


英知は朝食を食べ終え、歯磨き、洗顔など朝支度を済ませてから

鞄を持って自宅を出る。


月曜の授業も終わり、これから帰るというときに

英知はスマホでちょっと気になっていた山火事の情報を見る。

「まだ鎮火してないのか」

火の手は住宅地に迫っている。

このままだと住宅地に火事が飛び火するのも時間の問題だろう。

しかし英知にできることは何もない。


ふと思いついた。どうになかるかもしれない。

英知はスマホでモエルを選択して電話を掛けてみた。

7コール目でつながった。

「もしもし、モエル?

 急な話なんだけど、地上にある奇王の表山って分かる?」


「英知ね。現在火事になってる山でしょ?

 上空にも煙が届いてるから、天使の間でも少し話題になってるわ」


「あの山火事を鎮火することって出来る?」

「出来なくはないけど、それは必要なことなの?」


「いやさ、あのまま火が消えないと、

 大勢の人が住処を失ったり、

 最悪死者がでるかもしれないんだ。

 だから、鎮火をお願いできないかな?」


「下界のことは基本的にあまり干渉しないのだけど、

 英知の頼みなら聞いてあげてもいいわ。

 問題は、嫌いな奴の手も借りないといけなくなるかも」


「是非ともお願いします」

どうにかできるかもしれない事を放っておいて

死者がでたら、寝起きは良くないだろう。

英知はそう思った。


「うーん。しょうがないわねえ。

 何人かの天使でどうにかしてみるわ。

 あ、英知も現場に来なさい。あんたが望んだことなんだから。

 迎えは出すわ」


「分かった。ありがとう」


校門を出た所で待機していると、昨日の自動車もどきが

道路を走るように超低空飛行してきて、英知の前で止まった。

「英知様、お迎えに参りました」

多分ムカエルさんだろう。しかし、

天使達の見た目がほぼ同じなので誰が誰だか分からないのは

ちょっと面倒くさいところがある。

あとでテツダエルさんに相談しよう。

スマホに便利機能を追加してもらえるかも。


車もどきは人通りのない脇道に入ると、垂直に上昇した。

ムカエルさん曰く、騒ぎを起こしたくないためらしい。


車は十分な高度まで達すると、表山向かって

一直線に飛んだ。

結構な速度だったのか、たった十数分で表山上空に到着した。

恐ろしい量の黒煙が立ち昇っている。

車は、煙の当たらないように山と一定の距離を保っていた。


下方から、五人の天使がこちらに向かってきた。

車と合流する。

モエルと、水色服の天使と、ガリガリに痩せた天使と、

あごひげをたっぷり蓄えた天使と、特に特徴のない天使。


「来たわね、英知」

とモエル。

「酷い煙ですね。モエル、大方貴方が放火したのでしょう」

「なんですって?ヒエル。エル様のご意思でもない限り

 私が下界にちょっかい出すわけないでしょ」


モエルとヒエルが軽く口喧嘩している。

「やめようよ、争ってる場合じゃないんだ」

英知が()める。

「住宅地に火が移ると大変なので、そこを重点的に鎮火して

 もらえないかな?」


「分かりました」

「お任せください」

ヒエルともう一人、知らない天使が頷く。

二人は住宅地と山の境目に飛んで行った。


「私達も近くに行きますか?」

ムカエルが英知に問いかけてくる。

「うん、行こう」

英知達も消火現場に向かった。

二人の天使の消火活動に若干興味があるのだ。


名も知らぬ一人の天使が、ごうごうと燃える火炎のふちに立ち、

火炎を押し出すように両手のひらを突き出した。

その途端、炎の侵攻がピタリと止まった。

天使は力んでいる様子で、顔が険しくなっている。

「あの天使(ひと)は?」

英知がムカエルに尋ねる。

「オサエルですね。固有の能力を用いて、炎を抑え込んでいます」


抑えられていた炎がいきなり消え、

燃えていたはずの木々が次々と凍り付いた。

凍った木々の間からヒエルが現れ、未だ燃えている木々に視線を向けた。

燃えていた木々が10メートルほど先まで一斉に凍り付く。


ヒエルが飛び回るたびに火災は弱まり、

オサエルが前進して炎を食い止める。

そうした作業が淡々と進められ、山火事はとうとう収まった。


消火活動していた消防士たちが唖然としていたが、

すぐに立ち直り、報告やら後片付けやらに追われていた。


他の三人は何をしたんだろう?と英知は疑問に思った。

ムカエルの車でモエル達のいる地点に向かった。


「さあ、ハエル、ウエル。私達の仕事はこれからよ!」

モエルが張り切っていた。

「もちろんですとも」

「腹減った」

一人だけ場違いなことを口にしている気がする。


痩せぎすの天使、ウエルが焼けた地面を見つめる。

地面に直径数センチほどの穴が等間隔で無数に()く。

その後に穴だらけの地面の上をモエルが飛んでいく。

モエルが通った後から、何かの植物が芽吹いた。


ひげ面の天使は、一人で焼け焦げた地面を歩いていた。

歩いたその後からやはり、植物が生えてきた。


「あ、英知。こっちも順調よ」

モエルが話しかけてくる。

「何してるの?」

「山の木がほとんど燃えて死んじゃったでしょ?

 だから、代わりになる新しい木の芽を作っているの。

 あたしには、植えられた種を芽吹かせる力もあるのよ」


なるほど。ウエルが種を植えて、モエルが芽吹かせる。

ひげ面のハエルは、何もない所から植物を生やす。

植える、萌える、生えると言ったところか。

英知は納得した。


焼け焦げた山が新芽まみれになった頃、五人の天使は合流し、

天空の宮殿へ帰っていった。

英知は中学校の校門まで車で送ってもらった。

自転車で自宅に戻ってテレビをつける。

ちょうど山火事のニュースをやっていた。

「表山の火災は、消防職員らの手によって無事消し止められました。

 この火災による死傷者は今のところ確認されていません」


英知は、モエル宛てに感謝のメールを出し、

テツダエル宛てに、天使の判別問題についてのメールを出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ