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03 一種の革命



天使達との出会いから10日ほど経過した。

回収して修理に送った自転車も直り、

英知(えいち)は平凡な日々を過ごしていた。

もう二度と天使達に会うことはないのではないか。

英知はそのように考え始めていた。

学校も終わり、自宅に戻ると、英知は何気なく

スマホを起動した。

なんだか怪しげなメールが来ている。


件名:送信テスト


添付ファイルは無し。

普段なら即削除モノだが、英知には思い当たる節があった。

メールを恐る恐る開く。


無事に届いたかな?

届いていたら返事ちょうだい。

モエルより。


ビンゴだ。

英知はさっそくメアドを登録し、返事を書いた。


届いたよ。メール使えるようになったんだね。

おめでとう。

正直もう会えないかと思ってた。


送信。

それから10分後くらいにまたメールが来た。

来るのがやたら早い。すぐに開く。


いつでも会えるわ。いつがいい?


明日はちょうど日曜日で、学校は休みだ。

グッドタイミング。


明日の午前10時はどうかな?


送信。

それっきりメールは来なくなった。

なにかまずいこと書いたかなと英知は思い悩んだ。


翌日。

朝食を食べ終わり、午前10時より少し前に玄関を出た。

上空から何かが向かってくる。

かなり近づいたソレは、ゆるやかに減速して

自宅前の道路に静かに停止した。

なんだろう、翼が二対生えた自動車のような何か。

自動車もどきから天使が出てきた。

モエルではない。ちょっと残念。

「英知様ですね、お迎えに参りました。

 私はムカエルと申します」


相変わらず直球なネーミングだと英知は思った。


ムカエルの運転する自動車もどきに乗り

一行は天空の宮殿に向かった。

15分ほどで宮殿に着いた。以前、天使に直接

運んでもらったときの半分も時間短縮できた。


宮殿入り口の扉に立つと、扉が自動的に上にスライドした。

前に来た時はこんな感じだったかな?と

英知は首を傾げた。


入り口から入ってすぐの所に赤い服の天使が立っていた。

モエルだ。

片手にスマホを持ち、英知を見かけると手を振ってきた。

「こんにちは、英知」

「やあ、モエル」

二人は軽く挨拶を交わす。

「ちょっと寄ってほしいところがあるの。一緒に来て」

モエルは英知の手を引いて、宮殿内を進んだ。

英知は驚いた。

階段に乗ると、ゆっくりと進行方向に動き出したのだ。

階段はエスカレーターと化していた。

ちょっと下を見ると、エスカレーター脇に謎の扉がある。

エレベーターだろうか?

「なんか宮殿が魔改造されてない?」

「ええ。スマホから下界の情報を引き出したの

 あなたがここに来るときも車に乗ったでしょ?

 あれも下界の技術と宮殿の技術を組み合わせたものよ。

 下界は技術が進んでいるようね。参考になったわ」


10日ほど音沙汰なかったのは、宮殿中を改造していたせいか。

英知は納得した。


それにしても、すれ違う天使はほとんどスマホを持ち歩いている。

大量に複製して配ったのか。

その様子はまるで、都会の歩行者天国の様だった。


エスカレーターを下りて、廊下を歩き、何度か角を曲がると

扉に突き当たった。

前に立つと、自動で左右にスライドした。

自動ドアだ。

ドアの先の部屋には一人の天使がいた。

天使は大体が似たような整った顔立ちなので、

英知には誰が誰なのか見分けがつかなかった。


天使はこちらを向いた。

「こんにちは。モエルと、その顔は英知さんですか」

「俺の顔は知れ渡ってるのか?」

英知は疑問を口にする。

「貴方の顔写真は皆のスマホに記憶されていますからね」

「いつのまに写真なんて取られたんだろ?」

「ツタエルという情報伝達の得意な天使がおりまして。

 モエル経由で君の顔の記憶を情報化して貰いました。

 おっと、自己紹介がまだでしたね。私の名はテツダエル。

 何か御用でしょうか?」 


「テツダエル、頼み事があるの」

モエルが本題を切り出す。

「英知のスマホを、私達と通話できるようにしてほしいの」

「少々時間が掛かりますが良いでしょうか?」

英知は少し迷ったが、首肯する。

「英知さん、スマホを貸してください」

英知はスマホを差し出した。

「シリエルの所まで行ってきます」

テツダエルは部屋を抜け出すと、どこかへ行ってしまった。

10分後、テツダエルが戻ってきた。

英知にスマホを手渡す。

「終わりましたよ」

「どうも」

英知はスマホを受け取る。

「メールアドレスは無料のものがありますが、

 電話番号というものは手続きが面倒でして

 私達専用のものを開発したのです」


そっちのほうが面倒じゃないかと思ったが

英知は突っ込まなかった。


「これで、英知とも電話できるね。

 ちなみに私達と通話する分は無料(タダ)よ」


モエルは笑顔で言った。可愛い(英知の感想)


スマホを確認すると、

連絡先にモエルとテツダエルが追加されている。


「ツクリカエル、ありがとう。さぁ英知。行くわよ」

「どうもありがとう」

モエルと英知は頭を下げると、テツダエルの部屋から出て行った。


「下界の情報のおかげで、宮殿の娯楽も増えたわ

 そうだ、映画館ができたの。見に行かない?」


「もちろん」

英知は即答した。まるでモエルとデートしている気分だ。

廊下を歩いていると、通りすがりに天使が冷やかしてきた。

「お二人様。デートですか?お似合いですよ」

「失せなさい、カラカエル。私達はただの友達よね」

友達かあ。まあ、そうなるな。

英知はちょっとへこんだ。


映画館、甘味処と順に足を運び、英知はそろそろ帰ることにした。

「じゃあね」

「じゃあまた」

英知はモエルと別れると、ムカエルの車で自宅に送ってもらった。



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