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02 謁見



サマヨエル、モエル、英知の三人が宮殿内を歩いてから5分。

「このへんで失礼しますね」

サマヨエルが一行に別れを告げた。

「またね」

「もうヘマするんじゃないわよ」

英知とモエルも返事を返し、サマヨエルは

脇の廊下へと入って見えなくなった。

「さて、どこに行きたい?」

「まず神様を見てみたいな」

モエルの問いに英知は即答した。

「決まりね。もう少し歩くわ」

階段を数階分登ると、広い廊下に出た。

「あの廊下の先が、エル様のお部屋」

モエルが腕を伸ばして紹介した。

すると、その廊下の先から天使が歩いてくるのが見えた。

中性的な顔だちで、サマヨエルとそっくりだが

彼 (?)と違い、水色の服を着ている。

「あいつは!」

呟くモエルの顔が険しくなった。

「どなたかと思えばモエルさんではないですか。そちらの人間は?」

水色の天使が話しかけてきた。

英知(えいち)です。よろしく」

「こいつに自己紹介なんていらないわ。

 ヒエル。さっさと消えなさい、目障りだわ」


なんでこんなに険悪なんだろうと英知は思った。

「こちらのセリフです、モエル。貴方こそどこか

 目の届かない所に行って頂けないでしょうか?」


モエルと水色服のヒエルはしばし睨み合い、フンと

顔を背けてすれ違った。

英知は気のせいか寒気を感じた。

ヒエルはそのまま階段を下っていった。

「あの天使(ひと)は?」

「ヒエルは冷気を使う天使で、あたしとは相性最悪なの」

「すると君は火を扱うのか?」

「厳密には違うわ。火なんて使わなくても

 あたしの視界10メートル以内にあるものは燃やせるもの」


英知は感心した。天使達には個別の能力があるらしい。

「さあ、エル様に会いにいくわよ」

モエルにやや強引に手を引かれ

英知は神様の部屋の扉の前に立った。

扉をノックすると、例のテレパシーを感じた。

(入れ)

「エル様、失礼します」

「失礼します」

モエルに釣られて英知も同じことを言う。

扉が開くと

全長1メートルほどの、L字型の立体が椅子に座っていた。

立体には一対の白い翼が生え、上方には無機質な輪が浮いていた。

「あれは?」

「エル様に向かって失礼よ!身をわきまえなさい!」

モエルに窘められて、英知は慌てて頭を下げた。

どうやらあの立体が神様らしい。

「わが宮殿へようこそ、英知」

改めて神様は歓迎してくれた。

「あの、質問があるんですが」

「何だ」

「神様ってやはり全知全能なのですか?」

英知は思い切った質問をぶつけた。

心なしか、モエルの表情が青ざめているように見える。

「出来ることは多いが、出来ないこともある。

 天使や、お前たち人間よりも少しばかり優れているだけだ」


宗教や神話で得た知識の神様とはちょっと違うようだ。

その程度の者が神を名乗っているのかと

英知は失礼なことを考えた。

「そう、その程度だが、

 お前を軽く消し飛ばすくらいの力はあるのだぞ?」


心を読まれた!

テレパシーを使えるのだからある意味当然だった。

「た、大変失礼致しました!」

モエルは英知を(多分)思い切り引っ張りながら、

部屋から全力で逃げた。


神の部屋から遠ざかると、モエルは怒鳴った。

「あんた馬鹿じゃないの!エル様がお怒りになれば

 この惑星丸ごと破壊するくらい造作もないのよ!」


「ご、ごめん」

英知は反省した。恐るべし、神様。

「気を取り直して、次はどこに行く?」

「食堂とかはないの?」

英知は小腹がすいてきた。

「ないわ。残念だけど、エル様も天使も食事は摂らないのよ。

 あ、何人か例外がいるけど、彼らのためだけに

 食堂なんて作らないわよね」


階段を何度か降りて、行く当てもなく二人でぶらついていると

なにやら香ばしくて良い香りが漂ってきた。

「何か食べ物のにおいしない?」

「ああ、きっとあの天使(ひと)よ」

モエルが指さした先には、翼と輪を持つ、よく分からない

物体が浮かんでいた。


「こんにちは、ムニエル」

モエルが挨拶すると、謎の物体は近寄ってきた。

よく見ると、サケの切り身を唐揚げにしたような見た目だ。

だからムニエル(●●●●)か、と英知は一人納得した。

「こんにちは、モエル。その人間は?」

英知が軽く自己紹介を終えると、天使ムニエルは去っていった。


英知は鞄からスマホを取り出し、時刻を確認した。

「もうそろそろ帰るかな」

「ねえ、なにそれ?」

モエルが興味深げにスマホを見ている。

「スマホと言って、色んな情報を見れる機械だよ」

「ちょっとだけ貸してくれない?」

「うん、まあいいよ」

予備もなくて貸すと困る代物だが、英知はモエルに甘かった。

「ここでちょっと待っててね」

モエルはスマホを手に、急いでどこかに行ってしまった。

10分は経過しただろうか。モエルが戻ってきた。

両手には、なぜかスマホが二つ握られていた。

「はい、返すわ」

英知はモエルから片方のスマホを渡された。

「どうも。なんで二つに増えてるの?」

「ちょっと複製して貰ったのよ。いろいろと研究したいしね。

 えと、英知は帰りたいんだっけ?家まで送るわ」


宮殿の入り口から出た後、英知はモエルに抱き抱えられて

自宅の前まで戻った。

「そうだ、せっかくスマホが二つになったんだから、メアド交換しよう」

「メアドって?」

「いいから、もう一つのスマホを貸して」

英知は二つのスマホをいじった。

ああしてこうして、

しまった。

「メアドまで全く同じだから、つながらない」

英知はメアドの映ったスマホをモエルに見せる。

「よく分からないけど、それを別のものに変えればいいのね?」

「そうなんだ」

英知は落胆した。

モエルとのメアド交換のチャンスだったのに。

スマホをモエルに返却した。

「宮殿に戻ってから試してみるわ。それじゃまたね」

「うん」

英知は飛んでいくモエルを見送った。


あっと英知は気づいた。

自転車を道路に置きっぱなしだったのだ。

「明日にでも取りに行こう」


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