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番外01 テーマパーク

山なし、オチなし、意味なし



英知(えいち)は、再び宮殿近くのテーマパークに来ていた。

前回は、神様暗殺騒動があり、結局何もしないままパークを後にした。

だが今回こそ邪魔は入らないはずだ。

モエルが来た。

「この前はごめんね。今日こそ遊びましょ」

「まあ、モエルのせいじゃないし」

「あたしはジェットコースターというのに乗ってみたいな。

 英知、いい?」


「かまわないよ」

ということで、二人してジェットコースターに乗ることになった。

列を作っていた天使達数名と一緒にジェットコースターに乗り込む。

「シートベルトを着用し、安全バーを下げてください」

係員の天使が呼びかける。

英知とモエルは隣の席になる。

ゆっくりと乗り物が前進を開始する。

やがて急な坂に差し掛かり、坂の頂上まで登りきる。

(たの)しみ~」

モエルが楽しげに口にする。

急にガクンと乗り物が下を向き、急降下する!

「きゃああああ!」

モエルが悲鳴のような歓声を上げる。

乗り物は急降下で加速した後、その勢いのまま一回転する。

急に右に折れ、左に折れ、更に一回転した後直進し、

乗り場に戻ってくる。

「曲芸飛行とは、また違った面白さがあっていいわ」

「あ、ああ」

英知とモエルは乗り物から降りていた。

モエルは楽しそうだった。正直英知はちょっときつかった。

「英知、大丈夫?」

「少し休めば良くなるよ」

そんな事を話している時、誰かが後ろからぶつかった。

「おっと、ごめんよ」

ぶつかった天使が軽く謝る。

気のせいか、やけにフラフラしてる。

若干アルコール臭い。

「英知よりも重症ね、あれは」

英知はスマホで天使を調べる。


名前:ヨエル

力:常に酔っぱらっている。乗り物にも弱い。


なんであの天使はジェットコースターなんかに乗ったんだろう、

と英知は疑問に思った。


「次は、あれにしよう」

英知が指さす先にはホラーハウスがあった。

「天使がいるんだし、本物の幽霊なんかも配置してるのかな」

英知が疑問を呟く。

「あら?幽霊なんて人間の迷信よ。

 エル様はそんなものはお造りに

 ならなかったんだから」


悪魔という反例があるのだが、指摘するのはやめておいた。

二人でホラーハウスに入る。

鬼が出るか蛇が出るか。

薄暗い廊下を歩いていく。

檻が3つほど見えてきた。

中に何者かが一人ずつ入っている。

一つ目の檻。

ガリガリに痩せて、腹がぽっこりと出た何かがいた。

「ひもじぃ、餌をよこせぇ!」

鉄格子を掴み、こちらに向かってすごむ。

英知はちょっとひるんだ。

「あら?ちょっと服装とか肌の色とか変わってるけど

 ウエルじゃない」


モエルはあっさりと看破する。

よく見ると、ボロボロに汚れた天使の羽とか輪とかが付いていた。


二つ目の檻。

何者かが、なんか得体の知れない物を食っている。

ぺちゃぺちゃ、くちゃくちゃ。

「クエルか、相変わらず悪趣味ねえ」

モエルは全然怖がる様子を見せない。残念。

英知はスマホを何者かに向ける。


名前:クエル

力:どんなものでも食べる。


最後の檻。

狼男っぽい格好をした何かが、こちらを見つめている。

「あれはちょっと分からないわね」

とモエル。

特に何もないので通り過ぎた直後。

「アオオオオオオン!」

遠吠えのような咆哮が響いた。

モエルはちょっと驚いたのか、英知の腕をギュッと掴んだ。

よし。

「ホエルか。不覚にもびっくりしちゃった」

スマホ確認。


名前:ホエル

力:吠える。


檻を通り過ぎて先へと進んでいくと、古臭くてあちこち傷んだ

和風の屋敷みたいな建物が見えた。

通路はそれの前で折れ曲がっている。

二人が屋敷の前まで来て、左に曲がろうとした時、

穴だらけの障子がガラッと開き、中に

骨と皮だけの何者かが見えた。


「同じ手は食わないわよ。あれはオトロエルね」

モエルは余裕だった。英知はスマホ確認。


名前:オトロエル

力:生き物や機械などを衰えさせる。


見た目よりも能力の方が怖いな、と英知は心の中で突っ込む。


いろいろ見てきたが、最後は墓場の中を突き進むコースだった。

そろそろ出口が見えてきたかな?というときに

白い布を被った何かが横の方に浮いていた。

「変装してるし、何か分からないわね」

モエルが言う。

英知がスマホをそれに向けた瞬間、フッと布お化けが跡形もなく消えた。

モエルが思わず、後ろから英知の肩にしがみついた。

英知の心音が高まった。

モエルちゃんの腕、あったかいナリィ。

スマホの情報。


名前:キエル

力:消えたり現れたりする。

  物も消せるが、消えた物は戻らない。


ほう。色んな天使が働いて (?)るんだなと英知は思った。


ホラーハウスから出られた。

「ぜ、全然怖くなかったわね!皆知り合いだったし!」

モエルが強がる。

「最後のは何だったんだろうね」

英知がとぼける。

「知らない!」


回るカップやら、メリーゴーランドやらをはしごして

次に英知達はちょっとした迷路に入った。

迷路の必勝法!どちらかの壁に手を付けたまま進む!

英知は提案したが

「そんなのつまんないじゃない」

とモエルに却下された。

よって、無策で攻略する事となった。

5分後。見事に迷った。

似たような通路を右に左に折れ曲がり、行き止まりに当たっては

引き返した。

もう、方向感覚も無くなっていた。

途中、何度か天使に出会ったが、

スマホで調べてみると、全部同じ天使だった。


名前:マヨエル

力:道に迷う。


「サマヨエルの親戚かな?」

「あら、天使は皆、同時期に生まれたのだから

 皆兄弟みたいなものよ」


皆同年代。ということは。

「モエルっていくつくらいなの?」

英知がデリカシーのない質問をする。

「とっくに数えるのやめちゃったから、正確には分からないけど、

 人類の記録を頼りに考えると、数万歳?」


うわお。おばあちゃんとか、そんなレベルを超越している。

世界で最長寿の樹木よりも年上。すごーい!


更に迷うこと30分。ようやく出口に到着。

「ちょっと休憩ー」

そう言って、英知は近くのベンチに座り込む。

モエルが隣にちょこんと座る。

「英知というか人間って疲れやすいのね」

モエルが口にする。

「天使は疲れないの?」

「休みなしで働いていたら流石に疲れるけど、

 1秒くらいの休憩で元気回復よ」


体の構造が異なるのだ。それでも割とすごい。


英知はスマホで時刻を確認する。そろそろ夕方だ。

「最後は、あれにしようか」

英知は観覧者を指さす。


モエルと二人、観覧者の狭い部屋に向かい合って座る。

観覧者からの景色は、遠くの雲の壁ばかりでぱっとしない。

下を見ると、様々なアトラクションが小さく見える。

「英知、見て!雲の切れ目!」

モエルが示す方向には、雲の壁に切れ目が入っていて

そこからオレンジ色の夕焼けが見えた。

ん?あれは飛行機?

こっちへ向かってくる。

「飛行機だ。ぶつかったらやばいんじゃない?」

「平気よ。宮殿を含むこのエリアは、特殊な空間にあって、

 空飛ぶ乗り物とかはうまくすり抜けちゃうの。

 天使関係の者しか、ここに来れないのよ。

 もちろん、天使に招かれている英知も問題なく来れるわ」


モエルが説明する。随分便利なものだ。


観覧者を降りて、テーマパークを後にする。

「英知、じゃーねー」

「おう」

二人は軽く別れの挨拶を交わす。


英知は、ムカエルの運転する変てこな車に向かって

歩き出した。



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