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6 (神様)
目覚めると酷く息苦しかった。首にタオルが巻き付いている。タオルと首筋の間に、自分の手が挟まっていた。足を動かすとすぐに地面を感じる。膝を立てると首筋の圧は弱まった。タオルを首から外す。ドアノブから輪を作ったタオルがぶら下がっていた。タオルに首を預け、腰だけ浮かせていたようだ。近くに転がっていたスマートフォンに触れると、「ドアノブで首を吊る方法」のページが表示されていた。棒人間が首を吊っている分かりやすい図解があった。
今自分がどこにいるのか分からない。どちらの世界にいるのかが分からない。八畳足らずのワンルームアパートの一室に、無数の埃が空中を飛んでいる。部屋の中央に白い封筒が置いてある。中にはいくつかの便箋が入っていて、少女に読み聞かせた内容がそのまま書いてあった。それは遺書だった。
長い時間、ドアにもたれて座り続けた。後頭部にはぶら下がったままのタオルが当てがわれている。自分の人生を思い、少女との旅を思い、それから少女の名前を思った。
小銭を持って部屋を出た。ダイドーの自販機には、500mlのオレンジジュースがまだ売っていた。購入後のスロットははずれだった。
机に向かって新しい便箋を取り出した。オレンジジュースを飲みながら、文字を書き始める。




