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5 女神

 少女はいつの間にか高貴な衣服をまとい、溢れる光をまとって輝いています。

白い景色のなかに、ときおり雷が光るように景色が浮かび、流れて去っていきます。私立大学の校舎、ファミレスの厨房、サークルの部室、一人暮らしの部屋。なぜだかそれらは見覚えがあります。そして、そのどれもに、憎みに近い感情が浮かんできました。初めて付き合った恋人の横顔、相手が残したメールの履歴、一人きりの最終電車、なぜそんなものがこの場に浮かんでくるのかが分かりません。買いたくもないけれど、仕方なく初めて買ったスーツ、採用面接の沈黙。ただどうしようもなく、白い光の中に見えるのです。少女は目を開きます。

「私が女神になった時、やりたかった事は一つだけでした。この世を作った神様に、なぜ私にこんな悲しい人生を歩ませたのか尋ねたかった」少女はこちらの手を両手で包みました。

「けれど私が女神になった時、神様は自ら命を断とうとしていました。だから私は万能の力を使い、神様をこちらの世界に引き込んだのです。記憶までは連れてこれなかったけれど、本を窓にして記憶を読みとる能力は残すことができました。記憶は、世界が作られた順にしか引き出すことができませんでした。私は、もう一度人生を繰り返すことに決めました。世界が生まれたとき、神様に何があったかを聞くために」

 記憶が戻ってきます。少女が何者か、ようやく確信が湧いてきました。

「理由はよく分かりました。神様は自分が泣く代わりに私を悲しませていた。私の悲しみを通じてしか、神様は涙を流せなかったのですね。本を読んで下さるたび、私の命は神を慰めるためにあったと実感できました。不安な心が癒される思いがしたんです」

 少女は手を握る力を弱め、悲しい表情を浮かべました。

「けれど、神様はいつしか私を思い出さなくなりました。神にとって、私が悲しむだけでは意味が無くなってしまったのだろうと思います。私には神様の生きる世界がわかりません。けれど、これだけは伝えさせて。慰めの為に作られ、今や忘れ去られた私でも、この命を下さったことに感謝しています。悲しい人生だったけれど、幸せな事もたくさんありました。もう会う事はないかもしれないけれど、最後にもう一度だけ、あなたを助けさせてほしい。この命をくれた恩返しです」

 少女はこちらの背後に回ると、首に手を回しました。指を丸め、手のひらの側で首筋に優しく押し当てました。


「私の名前は、最後までありませんでしたね。でも今なら分かります。私はミレン、あなたの未練…」


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