4―2 賞金首の吟遊詩人
海岸通りの食道や宿屋を渡り歩き、数日が経ちました。海岸通りはやがて元の街道へ合流し、人々の往来が多くなっています。先方にずいぶん賑やかな旅の一団がありました。見れば、数日前にブドウ畑で出会ったワインの屋台が、大所帯になって街道を進んでいくではありませんか。屋台の馬車は三台に増え、馬車と共に街道を行く冒険者・旅行者の列がそれを取り囲みます。カード賭けやナイフ投げ、手品師や珍獣使いなんかもいます。きっとみんな後から勝手についてきたのでしょう。
夜、屋台は広場に馬車を停め、店を広げ始めました。デタラメな編成の音楽隊が陽気に奏でます。引き連れた旅人たちは毎夜の大騒ぎです。昨日の続きは今日にあり、今日が過ぎても明日がある。向かう先が一緒となれば、みなついて行かずにいられません。少女とふたりで輪に混ざり、知った顔も知らない顔もごちゃまぜで大いに飲んで踊りました。街道の来た道からは、速馬の馬車がおかわりのワイン樽を次々と持ってきました。
ワイン屋台の即席パレードは、姿を隠すには持ってこいでした。楽しい場で人の正体に目を光らせる無粋な人は少なかったし、酒癖の悪い暴漢には腕利きの兵士たちが出張って片づけてしまいました。聞けば、彼らは近くの国の護衛部隊だったのですが、あまりに一行が楽しくて脱走兵になってしまったとの事でした。
そんな愉快な旅路にも、暗い噂はささやかれました。例の軍国がますます乱暴なやり方で、周りの国を滅ぼして領土を広げているとのことです。少女の賞金額はもとの十倍にまで膨れ上がりました。こちらに暗い噂が伝わるように、軍国にもワイン馬車の評判が伝わったのでしょう。ある日、軍国を名乗る遣いが街道に現われ、こう言いました。
「諸君の賑やかな噂は我が国にも届いている。将軍様も、民衆にこのような楽しみを与えたいとお考えだ。我が国まで来て、ひとつ大きなフェスティバルをしてはくれないか。場所や機会は惜しまない。もちろん路銀と報酬も用意しよう」
同行している旅人達は、困惑したり、断るよう勧めたりしました。軍国へ行くなら離れると言う人もいました。しかし、ワイン屋台の店主は、軍国の誘いを引き受けました。
「こんな騒ぎはずっと続いちゃダメさ。終わりがあるから楽しいんだよ。悲劇になろうが最高の騒ぎになろうが、最後にぱっと燃えつきて終わりにしよう」
店主はそう言うと、逃げ腰だった周りの人たちも覚悟を決めてついて行きました。




