4―1 賞金首の吟遊詩人
いちめんのブドウ畑を、夕焼けの光が染め上げています。ワインの屋台は、ゆかいな歌声と華やかな香りに包まれていました。歌っているのは、吟遊詩人に扮した少女です。小さなギターを鳴らして歌えば、陽気な客はどんどん飲むぞと声を上げ、楽しい夜が始まります。
荒くれものの冒険者たちが話しています。
「血気盛んな軍国が、盗賊団のシスターの首に莫大な賞金を懸けたらしい」
「有名な悪党を捕まえて、他国に力を知らしめたんだろう」
「例の軍国、周りの国を荒らして領土を広げていると噂じゃないか」
「国の中もえげつないらしい。逆らう者は皆殺しで反乱も起きないんだと」
「俺たち賞金稼ぎにゃ、金払いさえよけりゃ何でもいいさ。早いとこ獲物を見つけようぜ」
少女は何食わぬ顔で陽気に歌っています。夜はますます盛り上がり、荒くれ者たちも少女といっしょに踊りました。
ワインの屋台はブドウ畑を出発し、にぎやかな街道を進んでいきました。少女と二人、街道をそれて人の少ない海岸通りを目指します。
「昨日はさすがにバレるかとひやひやでした。吟遊詩人になって正解ですね。誰も酔ってる時に仕事しようとは思いませんから」
少女はギターケースを大事そうに持ち直して、穏やかな風が吹く下り坂を歩いていきます。誰かが落としたコートのボタンを蹴りました。
「例の軍国っていうのは、私の国を滅ぼした国です。身分を代えても命を狙われ続けるなんて、なんともつまらない縁です」
少女との旅路は、あてのない放浪でした。最初は盗賊の姉御から受け取った宝剣と魔石を戻しに行こうとしました。宝剣のあった教会の総本山に近づくと、賞金稼ぎがそこらじゅうに待ち構えていました。魔石があった場所にしたって同じでした。賞金稼ぎに見つかり、襲われ、戦っては逃げる日々が続きました。ずっと何者かが正体を暴こうと近くをうろつく気配がします。少女は諦めて、ほとぼりが冷めるまで変装し、見つからないように各地をさまよう事にしました。少女は吟遊詩人となり、各地の酒場を巡って人々を楽しませます。聖なる宝剣と悪魔の魔石を隠し持ちながら。




