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3―4 盗賊団のシスター

 残る火の魔石は火山に作られた要塞の奥ふかくにありました。人語を話す獣どもが守り、正面突破しか道はありません。できる限りの準備をして、深夜に突撃しました。激しい戦いと険しい道のりが続きます。少女は懸命に動きますが、多くの団員が命を落としていきました。お嬢が姉御の制止を聞かずに先へ進むので、団員は危険を冒してついて行かねばなりませんでした。ようやく魔石の前に到着した時、団員は疲れ果て、傷ついていました。姉御がお嬢をたしなめるのも聞かず、お嬢は魔石に手を伸ばし、左手に装着します。

 途端に、お嬢から黒い霧が激しく吹き出し、背中から黒い翼が血しぶきと共に生えてきました。振り返りざま、強烈な火炎が姉御へ向けて放ってきます。少女が駆け寄り、とっさに光の壁を展開して姉御を守ると、驚いている姉御から剣を奪い取りました。お嬢は魔法が効かないと見るや、高く舞い上がり、少女に突進します。少女は爪をかわしながら、すれ違いざまに五回も切りつけました。剣どころか、腕の動きすら目に留まらないほどの早わざです。お嬢は傷をもろともせず、空中で力を溜めました。地面と壁がふるえ、空間が黒く凝縮されていきます。力が放出されれば火山そのものを吹き飛んで、生き埋めになるかもしれません。少女は複雑な図形を空中に描き、大きく腕を回してから手をお嬢に差し向けて叫びました。

「『浄法』!」

少女からほとばしった光の激流が、一瞬でお嬢を飲み込みます。直撃したお嬢は傷ついた姿をさらし、地面へ墜落したかと思うと、ぼろぼろの翼を翻してその場から逃げて行きました。

 誰もが何も話すことはできませんでした。少女は軽く息を弾ませながら、そっと剣を姉御に手渡しました。姉御が少女を爪先から頭までまじまじと見つめています。少女はそれほど疲労しているように見えませんでした。姉御は表情を厳しくさせました。

「いつから使えたんだ」

 少女は何も答えられません。姉御は首を振って、生き残った団員たちを奮い立たせると出口へ向けて歩き始めました。火山から出たあと、帰り道の馬車で宴会はありませんでした。お嬢は魔石の異常な力に飲み込まれ、盗賊団を裏切りました。それを救ったのは力を隠していた少女でした。しかしそれは同時に、今まで命を懸けて闘ってきた団員たちへの裏切りでもありました。


 次の日、それはとても静かな高原の朝でした。目が覚めるやいなや、酷い頭痛が襲います。少女も隣でうめき声を上げています。周りを見回すと、高原に停めてあるはずの馬車はなく、自分たちの荷物だけが側に転がっています。見渡す限り他に人影はありません。昨晩の夕食に薬を盛られたようです。盗賊団は、何も言わず立ち去って行ったのでした。少女はつぶやきました。

「お嬢さんは、裏切り者には容赦しなくていい、と言いました。誰の事だったのでしょう」

 誰も答えてくれません。高原の澄んだ空気と景色が、あたりを包むばかりです。


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