3―3 盗賊団のシスター
五つの魔石を手に入れる冒険が始まりました。ラーマの一団はいつも陽気で、道行く人の心ない目線や声を知らんぷりで道を進みます。魔石を奪うのはとても困難でした。土の魔石は深い洞窟でできた自然の迷宮に匿われ、風の魔石は切り立つ崖にそびえる城の中に守られています。木の魔石はあやしい地域信仰のシンボルとして寺院にまつられ、水の魔石は一年でわずかな間だけ現れる海底神殿に隠されています。危険な獣や、手厚い守備隊が立ちはだかりました。団員たちはあの手この手で策を出し合い作戦を立てました。あるときは、守衛にお金を渡して地図を入手したのち奇襲を掛けました。あるときは、城へ続く長い長いトンネルを三か月かけて掘りました。魔石を奪おうとするたびに、団員は傷つき、いなくなったり死んだりしました。少女はできるかぎり回復を努めましたが、死までは癒やせませんでした。一団が戦闘になった時は、離れるか守ってもらうかして参加しませんでした。そのせいで人が死んでしまうとき、少女は誰よりも悲しい表情をしました。さまざまな作戦と犠牲のすえ、魔石はひとつ、またひとつと手に入りました。魔石を手に入れた帰り道、団員たちは陽気な宴をしながら馬車で移動します。死んでしまった団員達の分まで楽しむように大きな声を上げては、街道を行く人たちを驚かせ、怖がらせました。そして少女は、盗賊のシスターとして団員みんなから認められるようになっていました。少女が亡国の民謡を歌うと、盗賊たちも歌を覚えて合いの手を入れました。
魔石は深い色の宝石です。リングは持ち主の意志によって指輪にも腕輪にも変化しました。手に入れた魔石は、お嬢が左手に指輪として着けています。指輪が増えるたびに、お嬢の『冥法』はますます強力になり、そしてますます無口になっていきました。
その日は夕食を終え、高原の街道沿いに馬車を停めキャンプ地としていました。目の前には暗闇を蛍が飛び交います。背後では、少女が濡らした布で体を拭いています。
「お嬢さんを見ていると、なんだかわだかまりというか、息苦しいものを感じます。魔石が増えるたびに、それが強くなるのです。お話して打ち解けようと思うのですが、なかなかうまくいかなくて。姉御さんは、私を信頼してくれているみたいですが」
と、少女が短い悲鳴を上げました。お嬢が音もなく近づいていたのに気づかなかったのです。少女は服を慌てて着て、こんばんは、と言いました。お嬢は何も言わず、指輪を付けていない左手を少女に見せました。
「私、あなたの事きらいだったの」
お嬢は眉間にシワを寄せながら、魔石の指輪をひとつひとつ着けていけます。着けるたびにお嬢と少女の顔は歪み、全て点け終わる頃にはお嬢は汗まみれになった息切れしてしまいました。たまらず指輪を外します。少女も顔は苦しそうですが、汗や息切れはありません。
「今、理由が分かったわ。『冥法』と『聖法』の使い手は互いの力を不快さで測れるのよ。相手の力が大きいほど、不快感は増す。シスター、あなた魔石を四つも着けて力を増幅した私よりも平気そうね。それがどういう事か分かってるの。この冒険で沢山の同胞が死んだ。あなたが本気を出せば、どれだけの人が助かったかしら」
少女は顔を伏せて悲しい顔をしました。お嬢は首を振って、続けます。
「盗賊団のおきてを教えてあげる。裏切り者には、容赦しなくていいのよ」




