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恋心と、対峙

グランドルと巫女の事が、映像を見せられてよく分かった。

人間になっても、グランドルは彼女を見つけようとした。


それが本当に彼女なのか、アイスミントやレンたちには分からない。

グランドルは彼女だと信じているけれど。


そしてやっぱり、グランドルはアイスミントを巫女だと思っている。


正直、グランドルが暗黒龍だろうが邪悪龍だろうが、アイスミントが一番衝撃的だったのは彼女への恋だ。多分、人間時代の映像の方が長かった関係もある。


アイスミントは、相談相手のレンに心をこぼす。

「私は、アイスミントよ。それだけなの」

どうして巫女でもそれ以降の彼女たちでもないのだろう、と自分に落胆すら感じる。


「そうだな。確かめようがない。グランドルが言ってたのはこの事だ。人の理解から外れている。グランドルが仮に正しかったとしても、真実そうだったとしても、俺たちでは理解できない」

レンの言葉に、うん、とアイスミントは頷いた。


「バレてるから言うけど、グランドルは一目惚れなの。でもあの映像を見たから言うわけじゃないけど、龍の姿を見た時に、大丈夫だって思ったのも事実なの。安心して頼れるって思ったって言うか」


この言葉にレンはアイスミントを見て同意するように頷き、それから言った。

「人である俺たちには、どうしても分からない部分があるさ。普通の男女でも考え方や判断の違いはあるのに、グランドルは龍だ。もっと差は開く」

「う、あ」

彼女持ちのレンでもこんな発言なのだ。確かに、人と龍では、理解できない事もあって当然なのだろう。


「アイスミントの気持ちは男の俺でも分かる。ヒューミーが俺に別の人生を重ねていたら嫌だと思う」

ヒューミーというのは、レンの王都に残した彼女の名前だ。

「とはいえ、綺麗に俺だけを好きでいてくれるのは理想であって、実際ヒューミーが他の誰かの人生を俺に間違って重ねてようが、それが俺を選んだ理由だとしたら、俺は幸運に感謝するな」

「え?」


「だってそうだろう。他の男に行かなくてラッキーだ。俺に関心が向いているなら、俺自身に惚れさせる」

「え!? レン、自信家!?」

「そうか? 俺はそうは思わない。どうしてアイスミントが俺のように思わないのかむしろ不思議だ」

真顔のレンの言葉にアイスミントは驚いた。そういうものなのだろうか。少なくともレンはそう考えるのだ。


少し沈黙が訪れる。部屋ではハヴィの再契約が次々と行われている。


***


グランドルは1人で、昨日アイスミントと過ごした広場にいた。

項垂れた。

全て彼女に知られてしまった。見せるつもりは無かったのに。


動けない。もう空は暗くなり始めている。


「グランドル。迎えに来たよ。晩御飯食べて、会議しよう」

グランドルは顔を上げた。

アイスミントが迎えに来ていた。

彼女はどう思っただろう。グランドルはじっとその表情を見つめる。


穏やかそうな表情の彼女は徐々に顔を赤くした。

「えっと。あの、迎えに、来たよ。ご飯行こうよ」

手を差し出される。

グランドルは自分が手を重ねるのを見つながら、静かに笑った。

するとアイスミントも笑った気配がした。顔を見れば優しげに嬉しそうに笑んでいた。

少し、安心する。


グランドルはゆっくり立ち上がってから尋ねた。

「・・・レンとハヴィはどうしている」

「レンは多分、食堂の席をとりに行ってると思う。ハヴィも合流するはず」

「・・・そうか」

「グランドル」

アイスミントが名前を呼ぶ。グランドルを見上げた。


「なんだ」

「・・・あの、討伐に、本当に一緒に来てくれる?」

「もちろんだ」

「私を、気に入って、くれてる?」

「・・・その通りだ」

「じゃあ、あの、一緒に、いてくれる?」


アイスミントの言葉に、グランドルは少し意味を掴み兼ねた。討伐に一緒にいくと答えを返したばかりなのに重ねて聞いてきたからだ。どこまでの意味を、彼女は乗せたのだろう。


即答しなかったので、アイスミントがグランドルを見上げてから迷うように視線をさまよわせて、また見上げてくる。

グランドルは顔を見つめて微笑んだ。


「私を傍においてもらえるなら、喜んで」

「私の方からも、どうか、よろしくお願いします」

と、アイスミントは言った。ほっとした様子だ。

それを見たグランドルもなぜか落ち着いた。


良かった、少なくとも、今は拒絶されていない。

傍にいよう。龍の私が力になれる限り。


ただ、過去を全て知られて、自分が身を引こうと結論を持った事も、グランドルにはよく分かった。

自分は龍だ。人の時でさえうまくいかなかったのに。

どうしようもない。


***


昨日とは違う食堂だった。違う味を楽しみたいという事だ。


4人で大皿料理を次々頼んで平らげる。グランドルが呆れるほどに、食べる時は皆よく食べる。

今日はテーブルに合流する者もおらず、すぐに宿で戻って身体を湯で流し、宿泊する部屋にて作戦の時間になった。


作戦会議において、話を進めるのはアイスミントだ。


「グランドルがくれた情報に照らし合わせると、昔の魔王軍の、なんていうのかしら、残留思念、みたいなのが今の魔王たち、という認識で良いのかしら」

「グランドルがここにいるのに向こうに暗黒龍がいるのは、そういう事になるかな、やはり」

「本来の6分の1の力って言うのもねぇ」

レン、ハヴィもそれぞれ意見を上げていく。


「グランドル、こういう事は前にもあったの?」

「いや、知らない。だが幻灯篭は完全にあの者の姿だった。能力もだ。あの時代が利用されているのかは分からないがな」

「魔王も、人間の姿だと確認されている。魔王だけは本来の力を持っているという可能性は無いか」

「無いだろうな。あの龍は、魔王も消してしまっただろう。それぐらいできる存在だ」


「じゃあ、本当のところの推察は置いといて、勝機についてだけど」

「あぁ」

「昨日、結構体力を消耗したわ。つまり相手が本来の6分の1の強さだろうが何だろうが、私たちは確実に戦力不足よ」

「同感だ」

「解消方法として、戦力増員は思うようにならないのが現実よね」

「そうだね」

「だから自分たちを鍛える方が現実的。その中で強い戦力が勧誘できたらもっと良い」

「つまり基本方針は変わらないね」

「そうね。まだ、魔王討伐には実力不足と分かったという事よ」


「一つ良いだろうか」

「なに、グランドル」

「昨日は、私は龍の姿では無かった。龍で戦って良いならば、あの廃墟丸ごと燃やし尽くすのに20秒もかからない。中のもの全てを含めて、勿論あの『幻灯篭』を含めてだ」


皆が無言になってグランドルを見る。


「だから、今なら私は魔王にでも勝てるかもしれない。魔王の実力は分からなかったが、6分の1ならば勝算はある」

「なるほど、つまり」

とアイスミントは言った。

「私たちは、魔王が強敵であった場合に備えて、撤退しても生きて帰って来れる強さを身につければ良い。という事ね」

「そうだな」

「分かった。それで行こう」

「どうせなら、他の遺跡を見て回ろう。幻灯篭以外のものに当たるかも。そしたら最悪、周辺潰してでもグランドルに勝ってもらえばそれで良い」

話ながら、皆の視線がグランドルに向く。グランドルは頷いて、話を受けた。


***


町で噂を収集する。今までの情報と照らし合わせて、6体の残りが現れそうな場所にグランドルで移動して、探索する。

2体にあたった。着実に力をつけていくアイスミントたちは、勝ち進んだ。

息切れしないで『樹賢者』を倒せた時に、魔王に向かってもいいのでは、と皆は手ごたえを持った。


そして、魔王の住む城にグランドルは皆を背にのせて飛んだ。


***


魔王城は、昔住んだ城と同じ姿をしていた。

「懐かしい」

グランドルは背に3人を乗せたまま、空から城に降り立った。

自分の部屋として与えられた場所に降り立つ。

この部屋は大きくて、龍の姿でも身をおさめることができた。


自分の姿があるのだろうかと、好奇心のようなものを持っていたが、そこに『暗黒龍』はいなかった。

背中のハヴィが、

「6体は遺跡に配置しているのかもね」

などと言ってくる。

「そういえば、最後の方は、私も適当な遺跡に入り浸っていたな」

なぜなら城にいるのが飽きた頃合いだったからだ。6体それぞれが。


「グランドル。魔王に注意して!」

アイスミントが、どこかくつろぎ気分になったグランドルに気づいたようで鋭い声をかけた。

「すまない。あぁ、注意しよう」

詫びて、グランドルは奥に向かって吠えた。


オォオオオオウウウ・・・


王を呼ぶ。

あまり深部にいられては、燃やしても防ぐ力は魔王だから備えていると考えていた。


『・・・あれ。グランドルか』


呼び声に応えたように、ふらりと人のようなものが現れた。


『久しいね。懐かしいよ。私に会いに来たのかい』


グランドルは身体が震えた。再会の喜びだった。

「グランドルッ!」

異変ととらえたアイスミントが、鋭い声で注意を促す。

「大丈夫だ。忘れてなどいない」


『人化はしてくれないの?』

「魔王。勝負をしにきたぞ」


『はは。きみが勝つに決まってる』

「・・・なぜだ」

グランドルが動揺した。


『私は、幻だ。グランドル。でも会えてよかった』

「魔王だろう。魔物が活性化した。なぜだ。なぜこのような」


『さぁね。私にも分からないよ。私は確かにもう死んでいる。ここにいるのは燃えカスのようなものだ。だが、楽しかったよ。グランドル。お前は、人間の側に、戻ってしまったのか。とても、残念だ。あれほど、あれほどに、怒り呪っていたお前が』

「聞くな! グランドルッ!」

ハヴィの叱咤にグランドルはハっとなった。つい魔王の言葉に耳を傾けていた。従うように頭を下げかけていた。


『皆に、会えたかい? 樹に、獅子に、蜘蛛に、幻に、花に。仲間に、会えたかい?』

「・・・獅子は見ていない」


『獅子はどこだったかな。湖に浮かぶ島が気に入ったと言っていた。行くと良い。会っておいで。それから、またおいで』

「魔王、お前を倒すと、獅子も全て消えるのだろうか」


『知らない。なぜ私が今ここに現れたのかも。そもそも、私は自分が何かを良く知らない。お前たちがいたのは、楽しかった、嬉しかった・・・お前たちを集めるために、私は生まれたのかもしれない。お前はひどく泣いていた。世界を壊そうとしていた。私はそれを好ましく思った。だけれど、今思うのには。それすらも、世界を守る力なのかもしれないと、思う』

「なんだと」


『考えても見てよ。長い時間の中で、世界を壊す意志と力を持ったものを集めて過ごすんだ。それなのに世界は変わらない。それどころか私たちは消されてしまった。今戻ったのはどうしてだろう。きっとそういう力が溜まったのかな。なら、私たちはなんなのだろうね。良いように利用されて、消されて。だとしたら、酷く悔しいよ。グランドル。お前たちには戻る場所があったのに、私には無いという事も』

グランドルが飲まれているのをレンが気づいた。

「気をしっかり持て!」

と声がかかって、背中の3人を思い出す。


「魔王。勝負を挑みたい。過去、私は負けたが、今なら勝てるだろうか」

『勝つと思うよ。それで良い。お前に負けるなら、仕方ない。楽しい思い出ごと、全て灰にすると良い。お前の手でね』

この言葉に動揺する。仲間を裏切るような気分になる。

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