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"ピッ"

「ねえ! 僕の連絡先をこの前教えたのに、どうして一回も連絡してきてくれないの?」

 

 ある朝、義也がたまりかねて、寂しそうに薫子に尋ねた。

 薫子に連絡先を教えてから、もう2週間になるが、まだ一度も薫子からの連絡がなかったからである。

 連絡先を教えたあの日から義也は毎日、何回も携帯を確認し、新しい番号からの連絡を待ち続け、今か今かと、今日こそはと楽しみにしていたが、待てども待てども一向に薫子からの連絡はない。

 しかし、早朝の5分間は、今までどおりに二人で会って話していた。

 


「よ、用事が無いから連絡しないだけよ。こうやって毎朝会ってるし……」


 薫子は、内心すごく嬉しいのを我慢しながら答えた。

 本当のところ、連絡先を聞いたあの日から、毎日義也にメールを送ろうと文章を考えてメールを作成しては、送信する勇気が無くて連絡していなかったのだ。

 だから、義也からまさかこんな事を言ってくれるとは思わず、薫子としては天にも上る喜びだった。

 

「わかったわ。もし、そのよければ、赤外線で……その……する?

 そうしたら、あなたから連絡してくれてもいいのよ」


 と、薫子はこのままでは自分からはいつまでたっても連絡できそうもないと思った事と、予想外に義也が自分と連絡を取りたがってくれていた事を嬉しく思って、新たな提案を出した。

 


「うん、そうしよう。メルアドも入力するの面倒だしね。

 ごめんね。そういうこと、気付かなかったよ」

 


 義也のメルアドなど教えてもらったその日に速攻登録した薫子だったが、ツンデレ気質な薫子にそんなことは正直に言えるわけも無かった。

 あと薫子は、好きな人と赤外線で "ピッ” ってする、あの行為に少し憧れていた事もあって、なんだかワクワクした気分になっていた。

  

”ピッ”

 

「ありがとう! これで、連絡が取れるね。

 タコライスの件、母さんにも話してあるから、また日にち決めて家に遊びに来てよ。バイクの後ろに乗るのでよかったら、僕がここまで迎えに来るからさ」


 と、義也が満足そうな笑顔で言った。

 


「ありがとう。嬉しい!」


 好きな人のバイクの後ろに乗る行為に前から憧れていた薫子は、義也からの思いもかけぬ提案にあまりにも嬉しくなり、ついつい本音が出て少女のように喜んで答えていた。

 


「今日は、かわいいね。

 いつもそんな風にしてたら、周りの男子達がほっとかないだろうね」


 と、義也が素直に喜ぶ薫子をたまらなく愛しく感じながら、言った。

 


「ちょっと! それ、どういうこと? いつもはかわいくないって事?

 確かに周りの男子には、近寄りがたいって思われてるみたい。

 実際、私もそんなに男子達に近寄りたくないから、ちょうどいいんだけど……」


 と、薫子は少しつっかかりながら、照れた。

 


「そうなんだ……もしかして、君にこんなに近づいた男って僕だけ?」


 と、義也が薫子の言葉を聞いて、期待に胸を膨らませて聞いた。

 


「うっ……そうね……あなたが初めてよ。それに、あなただけ……悪い?」


 と、薫子が顔を真っ赤にして、照れながら答えた。

 


「いや、嬉しいよ。なんか、すっごく嬉しい!」

 

 気付くと義也は、薫子の両肩に手を回し、薫子のおでこにキスをしていた。

 

「あっ、ごめん! こんなことするつもりじゃなかったのに、本当にごめん!

 あんまり君がかわいい事言うから、つい身体が勝手に……」


 義也が真っ赤になって、弁解した。

 

 薫子は今、現実に何が起きたのか把握できずに放心状態になったあと、我に返ると、義也に負けないくらい真っ赤になり、平静を保とうと最大限の努力をしながら、壊れた機械人形みたいになって答えた。

 

「い、い、い、いえいえ……私は平気でございます! ははは……」

 

 そんな薫子に対する愛しさが、義也の中で満杯になってあふれ出た。

 義也は真剣な表情で、薫子の目をじっと見つめながら言った。

 

「こんなことしちゃったから、今きちんと伝えたい!

 君のことが好きだ! 最初は君みたいに変わった子、初めてだと思ってた。

 だけど、君に対する愛しさが日に日に増していって、君からの連絡を毎日待ち続けてすごく胸が苦しかった。

 君に出会ってまだ数ヶ月だけど、僕にとって君はかけがえのない大切な存在なんだ。僕と付き合って欲しい!」

 

 全く予想もしていなかった突然の義也からの告白に、薫子の頭の中はまさにパニック状態。真っ赤なまま、うつむいてこう答えるのが精一杯だった。

 

「ええっと。ちょっと待って……整理して考えてみるから……」

 


「わかったよ。すぐじゃなくてもいいから、よく考えて返事をして欲しい。

 今はそういう恋愛事を考えたくないっていうなら、僕はいつまででも待つから……本当の事を言うと、朝だけじゃなくて昼間にもデートしたりしたいと思ってるし、毎日メールしたり連絡取りたいとも思ってる……」


 と、義也は自分の思いが、本気で強いものである事を語った。

 

 その時、真っ赤になって向き合っている二人の周りが、急に明るくなった。

 見上げると、雲の切れ目から光が差し込み、スポットライトのように二人を照らした。そして、さわやかな風が吹き抜けて、小鳥のさえずりが二人の耳に心地よく響いた。

二人ともガラケーの設定です。古くてすみません。m(,,)m

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