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羊が30匹

         ✡ニューヨーク✡ ※全部日本語にしています。


「ハロルド長老。やっと忘れ物をあるべき場所へお返しする事ができましたね。

 まさかあの鈴木財閥会長の荷物だったなんて……」


 と、ニューヨーク・ブルックリンにある教会の遺失物係のジェシーが、役割を果たしてホッとして言った。 



「極秘でこの教会に来られていたという事だからだろうか? 

 持ち主の特定に時間がかかってしまったな……」


 と、ハロルド長老が反省するように言った。



「それに、教会にこられた帰り道に心臓発作で亡くなられていたなんて……

 ニュースにはなっていましたけど、荷物の持ち主だとは全く思いもよりませんでしたね……」


 と、ジェシーが今度は暗い表情で言った。



「うちの教会は規模が大きいから、来訪者一人ひとりの把握がきちんとできていなかったのも、問題があったかもしれない……」


 と、ハロルド長老も暗い表情で言った。



「ですが、荷物に故・郡山牧師の名前が書かれたメモが入っていた事から、持ち主がわかったのですから、これには何か神様の御計画はからいがあるのではないでしょうか?

 『神のなさることは、すべて時にかなって美しい』って、聖書にもありますし!」


 と、ジェシーは暗くなった雰囲気を払拭するように言った。



「そうかもしれない……

 しかし、郡山牧師と鈴木会長の死亡について、何かひっかかる共通点があるのだが……」


 と、ハロルド長老はなおも暗い表情で言った。

 ハロルド長老は、麻酔科医として長年病院勤務してきた経歴を持っている。



「そういえば、お二人とも急病で家族から離れた場所にいる時に、亡くなっていますね。

 他にも何か医学的な共通点があるのでしょうか?」


 と、ジェシーはドクターとしてのハロルド長老の意見が気になり、質問した。



「いや、医学的には細かい病状や死亡の状況を調べたわけではないので、急性疾患による死亡という共通点があるだけだが……

 ひっかかったのは、死亡のニュース報道だ……

 郡山牧師の時も、鈴木会長の時も、同じような黒い影を感じた……

 しかし、なぜそんな事を感じたのかは自分でもわからない……」


 と、ハロルド長老は気難しい表情で言い、うつむいたのだった。



                ✡東京✡


             <鈴木財閥幹部会議室>


 鈴木会長のニューヨークに忘れた荷物の中に、鈴木財閥再興に役立つ極秘資料が複数入っていた。

 そのため、鈴木財閥の幹部は緊急会議を開き、夜の更けるのも忘れて、鈴木財閥再興に向けての会議を開いていた。しかし、核となる人物が不在である事は、相変わらず鈴木財閥復興への道のりを、険しくさせていた。

    

               <郡山家>


「お義母様! 私に従兄妹いとこが二人もいたのよ!

 明日、日本に来るんですって!」


「まぁ、良かったわねぇ。薫子ちゃん!」


 薫子は、時々郡山家を訪れては、義也の母に何かと相談したりするようになっていた。

 一応予約婚約した義也と薫子なので、薫子は早々と義也の母をお義母様と呼んでいた。

 義也の母は薫子を嫁というより娘のような気持ちで受け入れていた。特に結婚を反対しているわけではないが、嫁というには薫子がまだ若いと感じていたからだ。

 この日、薫子は明日の幸造一家との対面を控えて、期待と不安の入り混じった気持ちを義也の母に伝えに来ていたのだ。



               ✡長野✡


 家出していた次男・幸造との30年ぶりの対面を明日に控えて、堅造は眠れない夜を過ごしていた。


“……幸造が家出をしたのは、わしのせいだ……

 ヨッシーのような人物に出会わなければ、わしはまたあのときの失敗を繰り返して、最後の身内の薫子さえも失う所だった……

 今なら、心から幸造に謝ることができる……

 しかし、幸造はわしを許してくれるだろうか?”



            ✡イギリス✡  ※全部日本語にしています。


“……父さんは僕を赦してくれるだろうか?

 兄さん……最後に一目会いたかった……

 だけど、兄さんの一人娘・姪っ子に会えるのは嬉しいなぁ”


 幸造は愛する妻と二人の子供とともに、日本行きの飛行機に乗り込みながら、こちらも30年ぶりの親子、親戚の対面を控えて、眠れぬ夜を過ごしていた。


”羊が1匹、羊が2匹……羊が30匹……”

 幸造は眠れない夜は、羊を数える習慣があった。いつもは7匹目くらいで心地よい眠気に襲われて眠ってしまうのだが、今日は30匹まで数えても眠気は襲ってこない。そればかりか、その30という数字が20歳で家出をして30年経過し、50歳となった今までの自分の放蕩人生について考えさせられてしまっていたのだった。


※本文中の『』内の言葉は、新改訳聖書・伝道者の書3章11節より引用しました。

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