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ⅩⅦ 家出。

きっと、パパもママも分かってくれないと思う。


ママが

「とりあえず行くから準備しなさい。」

と言って部屋を出て行った。


嫌。。。この子を失いたくない。

泣いても仕方ないの分かってる。でも、自然と涙が出てきちゃうの。春哉やキミを思うとね。


私は決心した。パジャマを脱いでニットのワンピースに着替えた。11月にしては早い、厚手のコートやマフラーも準備した。持ってるリュックの中で一番大きなリュックに携帯や預金通帳、お財布など必要なものを詰めた。


クローゼットにしまっておいた、スニーカーを取り出して窓の前に並べた。

外はどんよりと私の心のように灰色に染まっていた。今にも雨が降りそうだ。長靴にしようか迷ったけど、スニーカーにしよう。


窓を開けると、冷たい空気が部屋に流れ込んでくる。

「寒っ。」

私は思わず声を上げてしまった。


窓の外にだれもいないのを確認して、窓の外から、一階の屋根に下り、隣りの家との境にある塀に下りた。そして、塀から地面にそうっと下りた。

飛び降りても良かったけれど、この子のためにしなかった。

「未夢ー。」

私を呼ぶ声がした。早歩きで駅に向かった。



行き先は決まっていない。でも、このままだと確実におろすことになってしまう。そんなの嫌だ。

こんな行動が許されるとは思っていない。

だけど、納得してくれないのに、どうすればいいの?。


どこかでカラスの鳴き声がした。気がつくと、携帯の時計は4時だった。


夜をどう過ごそうかと、歩いていると春哉ときたフロートのお店の前に着いていた。


ふいに泣きそうになった。

もし、あの日、あの場所で、あんなことしなければ…。今、春哉たちと笑って学校に通えていたんだろうな。こんなにつらい思いもしなかっただろうな。


携帯にはたくさんの着信があった。ママからだ。

出ない。分かってもらえるまでは。


ポツリ、またポツリと空から雨が降ってきた。


近くの公園の屋根つきのベンチの下に入り込む。

雨でぬれて寒い。


メールが届いていた。

朝川先生からだった。

「どこにいるの?。」

と。きっとママが連絡したんだろう。そうに違いない。


こんなことしてみんなに怒られるだろうな、そう思うけれど、私の力ではもうどうしようもない。



7時、8時…と時間は過ぎて行く。

冬の夜は寒い。そんなことわかってるけど、帰りたくない。

でも、この子だけは守りたいから…。




「未夢!。」

気がつくと、目の前に春哉がいた。

「春哉。。。」

寝ていたみたいで、予想以上に冷えた体にビックリした。


「おばさん、さがしてたよ。帰ろう。」

春哉は優しく私に声をかけた。


「いやだ、帰りたくない。」

私は激しく首を振った。


「こんな状態じゃ、子供がかわいそうだよ。」


「…なんで。…何で知ってるの?。」


「ごめん。おばさんから聞いた。おばさん反省していたよ?。“言いすぎた”って。“ちゃんと話聞いておけばよかった”って。」


「え・・・?。」


「俺は、生んでそのあとその子の面倒を見なかったらその子に悪いって意味を込めておばさんは言ったんだと思うよ。」


「とにかく、俺からもお願いする。“おろさないで”って。もっと早く気付いてやれなくて、ごめんな?。」

春哉は私のぬれた髪をわしゃわしゃとなでると、私に春哉のコートをかけてくれた。


「かえろう。」

時間をおいて、春哉は言った。


私はうなづいた。



読んでいただいてありがとうございます。


次回もお楽しみに。

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