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死因:不幸

「逃げられた」


また、逃げられてしまった。落胆と、またかよ!という怒りが込み上げてくる。なにに逃げられたか。犬、だ。実に可愛らしいチワワだ。リードに繋いでおいたはずなのに、朝、散歩に連れていってやろうと、清水拓未は、犬小屋を覗いた。するとどうだ。いないではないか。リードは無惨にも食いちぎられ、もぬけのから。果たして、チワワがリードを食いちぎっていいものだろうか?


そんな疑問があるが、拓未はなにも、逃げたこと自体には、驚きはしない。ただ、こんなこと、あり得ていいのだろうか、とか、もう犬は諦めよう、とか。実は、犬を飼うのは4回目、とか。


そして、全てにおいて逃げられている。恐らくは、というか、ほぼ確実に、原因は己の体質にあるのだ。その体質というのは、......圧倒的、圧倒的な不幸体質。それは、もう某博打漫画の主人公なんかよりも、だ。


敗戦、敗戦、敗戦の連続。あらゆる勝負事には負けたと自負している。拓未が最近やった不幸は、道を歩いていると、小石に躓き、お店の看板に頭をぶつけ、お店の親父に怒られしょんぼり具合で帰っていると、ドブに足を突っ込んだ。


と、言った具合でバリバリに不幸な人生を送ってきた拓未だが、今日ばかりはこの不幸体質を発揮したくなかった。その理由は、学校。高校2年最初の。最初、と言うことは、クラス替え。恐らく、拓未の不幸体質を発揮すれば、クラスメイトは知らない生徒、もしくは根倉な生徒、という高校2年生を全く楽しめない面子のはずだ。せめて、知っている奴が1人でいい。いてほしい。


―――ところで、時間が余っている。チワワの散歩に行くために30分早く起きてしまった。


仕方ないので、1人で散歩にでようと思う。壁にかけてある、シャツを手に取り、七分丈のズボンを履き、ラフな格好で外にでる。快晴。雲ひとつない日本晴れだ。春の清々しい風が頬を撫でていく。拓未が空を見上げ、深呼吸。と、電柱にぶち当たる。ここまでは、日常茶飯事。


「いってぇ」


頭をさすりながら再び歩く。

なんで自分は色々な物にぶち当たるのかを考えながら、近くの公園を目指し再び歩き出す。

すると拓未のすぐ後ろで、車の気配がした。驚いて後ろを振り替えると、

一瞬、だった。それは、光のような速さで拓未の体を宙に舞わせた。





眼が覚めた。そして、驚いた。真っ暗な空間。無限に続いているかとも思われる。しかし、そこに驚いたのではない。人がいる。性別は暗くてわからないが、人が立っている。すると、突然にその人が口を開いた。


「えーと、すいませんでした」


謝られた。拓未は突然謝られて困惑の表情を浮かべる。それに気づいたのか再び口を開いた。


「ここは、死後の世界です。そして、私は死神です。」


「死後のって、俺死んだのか?」


「はい。ただ......」


今だ、全てを把握し切れてない拓未に目の前の死神と名乗る者はどこからか真っ赤な手帳のようなものを取り出し、拓未に見せてきた。拓未というと、ただただ、唖然。


「この手帳にこれから死ぬべき人の名前が書かれているのですが......」


そうか、とやっと拓未は理解する。恐らく、あの手帳に自分の名前が書かれていて、それで死んでしまったんだ、と。

それが妥当な考えだったのだが、


「これを見てください」


そう言われ、手帳を手渡された。そして、その手帳のページには

『清水拓実』と書かれていた。まさか。と思った。


「間違えました」


死神は言った。まさかであろう。まさか、ここまで自分の不幸さが及ぶなんて。これは、朝のチワワの件などとは比べ物にならない。拓未と、拓実。誰だこんな紛らわしい名前のやつは!と無駄な怒りと共に


「マジかよ」


思わず声がもれる。名前の間違いで死んだ俺って。ここはもう、生き返らされてもらうしかない。


「すいません。俺って生き返れないんですか?」


「死の取り消しは出来ません」


最悪だ。もう終わった。短い人生だった。高校2年生、俺の青春が......


「ですが、提案があります」


提案、とは一体なんだと拓未は再び困惑の渦へ。それはお構い無しに進める死神。


「あなたに神としての命を代わりに授ける、と言うのはどうですか?」


「え?」


神としての命?と困惑の渦から、疑問の渦に変わっていく。しかし......


「神としての命は別にいいけどよ。俺がいた世界には戻してくれんだよな?」


「いえ、適当にどっかの世界に飛ばしますんで」


適当って。と、思わずツッコミを入れたくなってしまう拓未だが、それを上回る疑問が拓未にはあった。


「神の命ってなんか人の命と違うのか?」


そう。神の命と人の命の違いだ。拓未はさっきからこれが気になっていた。


「はい。神の命を人にいれた場合、恐らく、いれた人の特徴がさらに伸びる、と思います」


拓未の特徴が伸びる。

拓未に戦慄が走った。まさか?俺の特徴......『不幸さ』か?

そう、拓未の特徴は不幸さ意外の何物でもなかった。最悪だ。これ以上不幸になったら生き返ってもまた、この死神に間違えられて、


「死んじまう」


二度も死ぬなんてやだ。


「おい!俺の特徴って不幸さ意外無いんだよ!これ以上不幸になっちまったら大変だろ!」


ありのままを死神に話した。拓未は、恥ずかしい、などと思ってしまった。俺の特徴は不幸だ!と宣言しているのだから当たり前だ。


「不幸さ?」


死神の反応は、なぜだか、嬉しさに満ちた笑顔、だった。


「なるほど。面白いですね」


と一言。面白い、だと?お前は人をバカにしているのか?

もう、いい。早く生き返ってこんな死神とはおさらばしたい気分だ。


「もういい。早く飛ばしてくれ」


「......わかりました。では、行きます」


その声は少し微笑みをはらんでいた。



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