第四話
クラスの全員が注目する中、扉がゆっくりと開いていく。
教室中が喉をならした。
中に入ってきたのは、二人の美少女だった。
すべての雑音が俺達の耳から遮断され、彼女達の一挙一動に目が釘付けになっていた。
瞬きすら許さない時間が過ぎてゆく。
「男じゃないのか」
河鍋の落胆した声が教室に響いたが、誰の耳にも入ってはいなかった。
彼女達が教壇までたどり着いたとき、ゴルバチョフが口を開いた。
「名前と趣味を簡単に言いなさい」
ゴルバチョフの手からチョークが手渡される。
まず、亜麻色の、腰まで届きそうなロングヘアーの少女が、黒板にチョークを走らせる。
ただ名前を書いているだけで、何か気品を感じさせる。
名前を書き終え、振り返った。
西洋人形のような少しふっくらとした顔立ちをしており、少し太めの眉は、髪と同じ亜麻色である。
澄んだ森の泉をたたえる翠瞳で、やはり少し西洋の血が混ざっているのかもしれない。
瑞々しい少し厚めの唇は、健康的な薄紅色だ。
「天野幸です。趣味は、クレー射撃です!」
眩いばかりの笑顔を振りまく彼女に、クラスの殆どが驚きで自らの口元を押さえる。
趣味がクレー射撃だったから。ではなく、それが些細なことに思えるほど、彼女の身体的特徴に、目を見張るものがあった。
セーラー服を押し返して自己主張を行うそれは、青春真っ盛りの俺達の起爆剤になるには十分すぎるほどだった。
彼女が一礼すると、それの全容がシャツから覗かせる。
『キターーーー!』
『マイエンジェル!』
『フォルテシモ!』
教室中が歓喜に湧いた。
机を叩いて喜ぶものや、真剣に神に今日までの感謝を述べるもの、中にはこんなものもいた。
『ダッ、ダイナマイッ!』
バタッ
『さっ、佐伯ッ!? 逝くな! 戻ってこい! 佐伯ィッ!』
佐伯が自らの顔を血で染め、うつ伏せに倒れた。
「よ、よろしくお願いします・・・」
みんなのテンションに押され、声が尻すぼみになっていた。
次にチョークを手に取った少女は、天野さんとは対照的に、漆黒の艶のあるショートヘアである。
彼女は流麗な文字を書き、満足そうにうなずくと振り返った。
腰に手をあて、面倒くさそうに自己紹介を始める。
「名前は武本紫暗。趣味はないけど、格闘技全般は得意よ」
眉は細く、少しつり上がった目が凛々しい印象を与える。
ビスクドールのような、白く、どこか冷たいそうな印象をもつ肌。
腰の位置が恐ろしいほど高い位置にあり、少し短めのスカートから伸びる足に思わず目が行ってしまう。
バストは少し控えめながらも、もはやモデル顔負けのスタイルを誇っていた。
『クールビューティー!!!』
『エクセレント!!』
『我が生涯に、一片の悔い無しッ・・・!』
バタッ
『佐伯ッ! 何て男らしいんだ!』
うん、もう死ね。
武本さんは眉をひそめ、一歩後ろへ下がった。