第一話
暗闇の中で金髪、碧眼の男が俺を呼ぶ。
深淵の底の様に辺りは暗いが、不安感は一切感じない。
男は、中々の甘いマスクをしている。
殆んどの女性は彼を振り返るだろう、そう思わずにはいられない。
しかし、男は険しい顔をして俺を呼ぶ、というより何かを叫んでいる。
口は大きく動いているものの、まったく何も聞こえない。
どれ程時間がたったのだろう。
無数に発する男の言葉の中で、たった一言だけが聞こえた。
『起きろ!!!』
「起きなさいっ!!遥希っ!」
「・・・ふぇ?」
目を覚ますと、母親が俺の布団を引っぺがしていた。
「何変な声を出してるの!今日から学校でしょうが!」
学校?まさか?
「今日、何日?」
「四・月・八・日!」
おっと始業式の日ではないか。
「はい?」
時計を見る。
八時・・・十分?
「ちくしょーーー!!」
ベットから飛び起きる。
始業式に遅刻なんて、セオリー
過ぎるぜ!
眠気もすぐに吹き飛んだ。
急いで仕度し、玄関まで飛んで
いく。
「遥希!ちょっと、今日から――――」
「ゴメン、母さん!急いでるから!」
母親の言葉を遮り、勢い良く家を飛び出す。
正確には家ではなく、マンションの一室である。
四階からダッシュで階段を駆け下りた。
「急げー!!!」
そして通学路を全速力で走りぬける。
桃や桜などの花が咲き誇る中、走る。
一年で最も爽やかな季節の中、汗だくで見苦しく走る。
あぁ、間に合えばいいなぁ。
そんなことを思いながら。
俺の青春、スタート