プロローグ 光
明るい室内に女性が多く見られる。
男性も幾人かはいるものの女性が圧倒的に多い。
先ほどの部屋に良く似ているが、こちらはゆったりとしたチュニックのような服で、白が多く見られる。
彼女達は忙しそうに動き回っていた。
「シルフィム様、ボスがお呼びです」
一人の女性が話しかける。
「はい?なんでしょう?」
その声に反応したのは一人の少女。
大きな翠瞳を瞬かせる。
彼女は席から立ち上がり、部屋の奥にある黒塗りの両開き扉を開け、中に入る。
「お呼びでしょうか」
中には大きな木製のデスクがあり、肘掛のある大きなイスに一人の老人が座っていた。
彼は白い口ひげを蓄え、威厳のある姿をしている。
目は優しい光に満ちているが、見るものを圧倒する何かをその中に秘めていた。
そして、奥にある大きな窓には真っ青な空が広がっており、ここがかなりの高さだという事をうかがわせる。
「うむ、大切な任務を君に頼みたい」
彼は机から封筒をを取り出した。
大きくSECRETと印字されていた。
「この対象を監視、護衛して欲しい」
封筒にはある男の写真と、彼のプロフィール。
まったくもって普通の高校生。
身長、体重、身体能力、どれを取っても平均値だ。
最後に注意事項。
目を通すが、これには流石に遠慮したくなった。
「目立たないようにしたかったのでしょうが、これはやりすぎですね」
「そうだ。解っていると思うが、全てがまったく平均をはずしていない」
身長、座高は1ミリの狂いも無く、体重も63.39キロ。
こんなに正確無比な人間はいない。
「しかも彼の生まれ変わりとは」
「そうだな。本来仏や、他神に転生してもらうはずだが・・・」
「拒否したようですね」
「うむ。まったく困ったものだ」
髭をしごきながら眉をひそめるボス。
「了解しました。承ります」
「頼んだぞ。くれぐれも起こしてはならん」
「理解しています」
恭しく一礼し、部屋を退室する。
そしてそのままエントランスまで歩いた。
大理石で出来ている建物は、天井にあるステンドグラスから差し込んでくる光が反射し、
室内を明るくする。
目の前には大きすぎる門。
「どちらに行かれるのですか?」
受付の女の子達が話しかけてくる。
「ちょっと下へ」
そう答えると、彼女の体が輝き、背中に純白の翼が6枚現れた。
「いってきます」
受付に手を振ると、彼女達は一礼した。
同時に門が開かれる。
シルフィムは翼を羽ばたかせ、門を出た。
「行ってらっしゃいませ、熾天使様」
彼女がそう呟いたときには、シルフィムは遥かか彼方へと消えていた。