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すうぃーと or デッド  作者: 霜月夢人
プロローグ
1/11

プロローグ 闇

カタカタ・・カタカタ

カチカチッ


閑散とした薄暗い室内に、不規則なキーボートとマウスを叩く音が響く。


多くのデスクに一つずつパソコンが設置されている。


そして数人の女性が、それぞれの席についていた。


一見普通のように見えるのだが、異様な点がある。


まず、女性しかいない。


それならまだしも全員の服装が黒に統一されている。


まるで喪中のようだ。


だがそんな様子は無く、彼女達は働いていた。


そして、デスクの九割が不在である。


明らかに何者かが使用した形跡があるのだが、しばらく触れていないのか大量に埃をかぶっている。


「はぁ・・・」


その中に一人ため息を吐く少女がいた。


漆黒のショートヘアで紫黒(しこく)の瞳は吸い込まれそうなほど深く、勝気な印象を与える。


かなりの美貌を放つ彼女だが、今は美しい眉を寄せていた。


「なにしてんの~?」


隣から同僚が話しかけてきた。


「今度ボーナスなんだけど、どれにしようかと」


パソコンのスクロールを動かし画面を見る。


学生、サラリーマン、主婦、果てまた赤ん坊。


様々な人間の写真がある中、一人の男で手が止まる。


「へぇ~、こいつ中々良いじゃん」


移っているのはごく普通の少年。


容姿も身長も体型も平均値を外していない。


だが・・・


「霊能力が少し多いだけの一般人ね。でも私達には十分なご馳走だわ」


写真をクリックし、画面が飛ぶのを待つ。


「出た」


"今回の査定では220年が表示されました。この査定を承諾しますか?"


そしてその下にいつもの"はい"と"いいえ"の選択ボタン。


「220年て。私達って本当に薄給」


文句を言いながら"はい"をクリックする。


"申請を受理いたしました。健闘を祈ります。"


「ふ~ん、じゃあ頑張ってね」


「はいはい」


おもむろに立ち上がりデスクから離れる。


そして部屋の中央にある木製の大きな扉の前に立った。


「ちょっと!これ忘れてるわよ!」


後ろから同僚の声がかかる。


振り返ると、彼女の手には身長ほどもある大きな杖が握られていた。


そしてその先には巨大な刃。


「あぁ、それ私のよね。投げちゃって!」


「はいっ・・・、よっと!」


全身をしならせ投げてきた。


ドスッ


大きな刃が扉に刺さる。


「ありがと」


それを抜き、扉を開けた。


その先は真っ暗で何も見えない。


「いってらっさ~い」


「いってきます」


そして何の迷いも無く、暗闇に飛び込む。


すぐにその姿は闇に呑まれた。


残された同僚が一人また席に付く。


パソコンに一通のメールが届いていた。


「なになに?」


メールを開く。


"御園遥希への接近を禁ずる。担当の者は今すぐ項目を削除し、以後関わることを一切認めない。


彼は――――――"


そこには到底ありえないことが書かれていた。


「あちゃ~!こりゃ駄目だね。大丈夫かなぁ?まぁ、どうしようもないんだけどね」


まったく声音にそんな様子が見えない。


そして、あの彼女のことを思った。


彼女は止めに入った私になんと言うだろうか。


勝気な瞳が目に浮かぶ。


「ふふっ」


思わず笑みがこぼれた。


「知ーらない!」


考えを放棄し、自分の仕事に戻った。

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