すべての感覚を使ってスキャンした。
わざわざ買いに行くのが面倒くさくて、奴と同じ銘柄にした煙草。
奴が帰らない誰もいないリビングで、
煙草の箱の「煙草は有害ですよ~」ってのを一人で読んでた。
わたしも、男なら誰でも良かったし、奴も女なら誰でも良かった。
1人でいるのが寂しかったから、一緒に居るだけの関係。
そんな二人だったけど・・・
奴を他人には渡したくない。
そんな事をふと思った今日この頃。
わたしの些細な情報網によると、奴はわたしより可愛い女と一緒に飲み会に行ってるらしい。わたしの知らない女。
「女なら誰でもいい」のであれば、その可愛い女でも良いのだ。
わたしより可愛いその見知らぬ女に、わたしは勝てるのか?
わたしは辞めていた煙草に火をつけた。
点けるざる得なかったのだ。
心が騒めく。心が苛つく。
「男なら誰でもいい」程度の男なのに。
忌々しい時間だ。
なぜその程度の男の帰りを待っている?
わたしは?
わたしがその程度の女なのか?
忌々しい。
別に怒る程ではない。
なぜなら我々は「男なら誰でもいい」「女なら誰でもいい」程度の関係だし人間たちだからだ。忌々しい関係だ。
奴の足音が聞こえた。
1人か?
わたしはその足音を、すべての感覚を使ってスキャンした。
いつもと変わらない、いつもの日常の足音だ。
そんな奴の足音を聞くのは好き。
頬が少しだけ緩んだ。
奴がドアを開けた。
「お帰り」
「ただいま。何?煙草吸ってるの?辞めてなかった?」
「一本だけ」
「そう」
わたしは奴の身体と心を、すべての感覚を使ってスキャンした。
あの可愛い女の気配はなかった。
わたしにだけフィットしているはずのその身体と心。
頬が少しだけ緩んだ。
「飲み会?」
「そう、付き合いで断れなくて」
わたしはその言葉を、すべての感覚を使ってスキャンした。
嘘は感知出来なかった。
頬が少しだけ緩んだ。
「煙草吸う?」
「俺、辞めてんだけど、でもじゃあ久しぶりに」
と言って奴は、わたしの煙草を奪った。
わたしはその仕草を、すべての感覚を使ってスキャンした。
少しだけ愛を感知した。
頬が少しだけ緩んだ。
いや、もしかしたら、今まですべての感覚を使ってスキャンしなかっただけで、そこには愛がすでにあったのかも知れない(笑)&(泣)
夜の窓にわたしが映っていた。
にやけてやがる。
嬉しそうに。
自分で思うのもなんだが、可愛いじゃん。
きっと唯一無二だ。
完




