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すべての感覚を使ってスキャンした。

作者: 健野屋文乃
掲載日:2026/09/25

わざわざ買いに行くのが面倒くさくて、奴と同じ銘柄にした煙草。

奴が帰らない誰もいないリビングで、

煙草の箱の「煙草は有害ですよ~」ってのを一人で読んでた。


わたしも、男なら誰でも良かったし、奴も女なら誰でも良かった。

1人でいるのが寂しかったから、一緒に居るだけの関係。


そんな二人だったけど・・・

奴を他人には渡したくない。

そんな事をふと思った今日この頃。


わたしの些細な情報網によると、奴はわたしより可愛い女と一緒に飲み会に行ってるらしい。わたしの知らない女。


「女なら誰でもいい」のであれば、その可愛い女でも良いのだ。


わたしより可愛いその見知らぬ女に、わたしは勝てるのか?


わたしは辞めていた煙草に火をつけた。

点けるざる得なかったのだ。

心が騒めく。心が苛つく。

「男なら誰でもいい」程度の男なのに。

忌々しい時間だ。

なぜその程度の男の帰りを待っている?

わたしは?

わたしがその程度の女なのか?

忌々しい。


別に怒る程ではない。

なぜなら我々は「男なら誰でもいい」「女なら誰でもいい」程度の関係だし人間たちだからだ。忌々しい関係だ。


奴の足音が聞こえた。

1人か?

わたしはその足音を、すべての感覚を使ってスキャンした。

いつもと変わらない、いつもの日常の足音だ。

そんな奴の足音を聞くのは好き。

頬が少しだけ緩んだ。


奴がドアを開けた。

「お帰り」

「ただいま。何?煙草吸ってるの?辞めてなかった?」

「一本だけ」

「そう」


わたしは奴の身体と心を、すべての感覚を使ってスキャンした。

あの可愛い女の気配はなかった。

わたしにだけフィットしているはずのその身体と心。

頬が少しだけ緩んだ。


「飲み会?」

「そう、付き合いで断れなくて」

わたしはその言葉を、すべての感覚を使ってスキャンした。

嘘は感知出来なかった。

頬が少しだけ緩んだ。


「煙草吸う?」

「俺、辞めてんだけど、でもじゃあ久しぶりに」

と言って奴は、わたしの煙草を奪った。

わたしはその仕草を、すべての感覚を使ってスキャンした。

少しだけ愛を感知した。

頬が少しだけ緩んだ。


いや、もしかしたら、今まですべての感覚を使ってスキャンしなかっただけで、そこには愛がすでにあったのかも知れない(笑)&(泣)


夜の窓にわたしが映っていた。

にやけてやがる。

嬉しそうに。

自分で思うのもなんだが、可愛いじゃん。

きっと唯一無二だ。



完



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