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あゝ異世界転生、亜神成り  作者: 渡名喜橋もうれ


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謎の動力(前編)

 さぁ、お昼も食べたし、午後のタスクに取り掛かりたいと思う。午前中のタスクはゴレム達が有能すぎてあっさり終わったので助かった。


 午後のタスクは、異世界転生前から気になっていた「ライフライン」についてだ。ウラノスが特別に融通してくれた事なんだけど、その内の一つである「上下水」はとりあえず「神力」で解決しているのだが、「ガスコンロ」に関してはアプルとフィグがシレっと使用していたんだよね。


 風呂からお湯も出てきていたし、そもそもどうやってガスを使用していたのかは謎だったんだよな。っと、思っていた矢先にメイドゴレム達が普通にガスコンロで調理をしていたので驚いた。なので、まずはガスコンロから解明していこうと思う。


「今朝も聞いたんだけど、『変幻自在』でガスコンロの仕組みを想像したら使えたって事だよね?」


「はい。ガスコンロというモノを異世界叡智にて探してきて、使用方法や動力源を想像したら使用できました」


 俺の質問に対し、アプルがあっさり答えた。初見でそれができちゃうのって凄すぎるでしょ。


 アプルの説明を聞き、俺も自分でガスコンロを使用してみたら、地球で使用していたようにガスコンロの火が付いた。


 ただ、少し気になるところもあった。


「これ、やっぱり神力で動いてるっぽいな。これだと再現性がないから、動力源をどうするのかがポイントになってきそうだね」


「確かに、我々以外だと使用できないですね」


 指でこめかみを抑えながら「う~ん」とフィグが斜め上を見つめた。


 そんなフィグの仕草に釣られて、俺も「う~ん」と少しばかり考え込んだ。


 あっ、そういえばテトが二千年前の世界には「魔導力」とかいう未知の動力があったって言ってたよな。これは解明してみる価値がありそうだ。


「なぁ、テト。さっきテトが言ってた『魔導力』について詳しく教えてくれない?」


「ふむ、よいぞ」


 近くでふよふよと浮遊していたテトが、質問を受けて「サッと」俺の横に飛んできた。元神である事を忘れてしまいそうな容姿と仕草だ。ゆくゆくはこの拠点のマスコットになれるんじゃないかと思うくらい可愛らしい。まぁそれはそれとして魔導力の話だよ。


「先ほども話したが、地上の子等は魔物から採れる『魔石』を利用して、生活の中に役立てておったぞ。その魔石というのは全部が全部同じというわけではなくてな、いわゆる『属性魔石』を日常的に使用しておったな」


 なるほど。火属性魔法を行使する魔物ならば火属性の魔石が採れるってわけか。異世界なので「そういうもの」であると、この件は納得するとして、その属性魔石をどうやって使っていたのかだよね。


「その属性魔石をどうやって使ってたの? 部屋を明るく灯してたって言ってたよね? あと調理にも使ってたんだよね?」


「そうであるな。部屋を明るく灯すといっても地球の様に煌々と煌めくようなものではなく、部屋全体が柔らかく灯される感じだったはずであるぞ。調理に関しては、台のようなモノの中に火属性魔石を入れて、その上にトリベットを置いて調理していたな。それと、幌馬車くらいの範囲を冷やせる氷属性魔石なんかもあったと記憶しておる。まぁこれは一般的ではなく大商会や王侯貴族レベルの話であるが」


「へぇ~。氷属性の魔石もあるのか。幌馬車を冷やすって事は結界でも張ってたんだろうか……」


 未知の事象がぽんぽん出てきて面白過ぎる! まずは拠点を魔導と現代科学を融合させた超ファンタジー村にしてやろうという野心が生まれたよ。これは追々やるとして、今は魔導力だよ魔導力!


 お昼前にテトが言っていたけど、この世界の魔導力って地球みたいな大きな力ではなかった感じなんだよね。動力源の大きさに疑問が残るが、俺としては最も気になる事があったのでテトに聞いてみる。


「属性魔石云々は理解したんだけど、そもそもその魔石からどうやって魔導力を使ってたの?」


 そう!俺が最も気になった部分がここ。仮に火属性魔石があったとしても、その中に格納されている動力源をどうやって魔導力として使うのかって話。逆にこの魔導力さえ解明できれば、異世界で現代地球文明を取り戻したに等しい。


「確か、魔導力を行使するには『魔法陣』と『詠唱』の二つの方法があったはずであるな。例えば魔法陣の場合、ランタンであれば入れ物に魔法陣を刻印し、それに手を触れたら灯りが点き、再度手を触れれば灯りが消えるといった感じであったな。詠唱は文字通り『明かりよ灯れ』みたいに詠唱すれば明かりが灯されるといった感じである」


「なるほど。これ、魔法陣と詠唱で分ける必要あるの?」


 ボタン一つで家電が起動し、明かりが点く世界出身の俺からすると、わざわざ魔法陣と詠唱を分ける必要性を感じないのだが、その辺は魔法世界の都合があるあらしい。


「大まかに分けると、魔法陣は魔力を消費する必要がない分誰でも使用できるがゆえ、より大衆向けであるな。逆に詠唱は魔力を消費する分、より多くの属性魔石から魔導力を使うことができるのだ。例えば、『一度の詠唱で街頭に設置しているランタン全てに明かりを灯す』とかであるな」


 説明を聞くとなんとなく納得できる。一般家庭の八畳部屋に業務用クーラーは不要だよねって理屈に近いのかな。詠唱については、術者の能力に依存するところが大きいらしく、やはり一般向けではないっぽい。


「ちなみに、幌馬車を冷やすような魔石は、かなり強い魔物を倒す必要があるぞ。なので、その価値も必然的に高くなってしまうから、庶民では手が出せないはずだ」


「え、それでも魔石が普及してるってどういう事なの?」


「庶民が使っているのは、弱くても魔石を持っている魔物だったはずだ。確か名前は……ランプホッグとかいう小型の猪と、火鼠という魔物だったと記憶しておる。ランプホッグは日本の猪より少し小さいくらいで、火鼠はヌートリアくらいだったと思うぞ」


 例えがヌートリアて。


 あまり強くもなく、且つ庶民でも討伐できるくらいのお手軽魔物がいるわけね。しかも属性魔石を持っていると……世界は上手く出来ているんだなと感心するよ。


「って事は、火属性魔石が一般的で、それ以外の魔石はほとんど使われていないって感じだよね?」


「で、あるな。仮に村人総勢で大型魔物を討伐したとしても、その魔石を売って村の収入とするはずであるからな」


 まぁそうだよな。デカイ属性魔石を持っていても、その魔導力を享受できる可能性はないはずだし、それなら売って収入にした方が先立つものがあるからね。


 その後もテトから魔石や魔導力について、あれこれ説明を受けた。その中で判明したのは、無属性魔石なる魔石があること。そして、その魔石にも魔導力があるものの、これを活用する技術が当時はなかったということだ。だが、これはテトが神の座から失墜するまでの話だから、ヴァイスが神となり世界をめちゃくちゃにした事を考慮すると、魔導力が発展しているとは考えづらい。


 なんとなく、この魔導力については理解した。次は、魔導力でこの家のガスコンロを稼働させられるかやってみようじゃないか。そうなれば魔石を集めるところからだな!




◇ ◇ ◇




「アイノ様、その下級霊が言っていた属性魔石とはこれのことではないでしょうか?」


「「?!」」


 驚く俺とテトを気にすることなく、「すっと」マルメロがサッカーボールくらいの魔石を俺に差し出してきた。ワインレッドとオレンジが入り混じった様な色をしていて、宝石みたいで非常に綺麗だ。恐らく火属性魔石だよな、これ。


 (え……探しに行こうと思ってたんだけど、もうあるんかいっ!)


「え、なんであるの?」


「昨日、ファム吉達が採ってきた魔物に入っておりました」


「あぁ、あの牛型の魔物かぁ。あれ結構大きかったもんな」


 ちょっと驚きはしたが、俺的にはあんだけ大きい魔物には、これくらいの魔石が入っていてもおかしくはないよなぁなんて思っていた。だが、やはり埒外の事すぎて荒ぶる奴がいた。


「デカッ!! なんだその魔石はッ!? あり得ない大きさではないかッ!!」


 下級霊……もとい、神霊族テトが尋常ではないくらいに驚いている。異世界初心者の俺からすると、大きい綺麗な石って感じなんだけど、テトは続けて声を荒げた。


「よいか!普通魔石というのは、そこら辺の道端に転がっている小石程度の大きさなのだぞ?! 大型の魔物ですら手の平ほどの大きさなのだッ! しかも、マルメロが持ってきたその魔石に内包されている魔導力は、下手すると大都市を賄えるほど膨大であるぞッ!」


「へぇ~、この魔石がねぇ……。じゃぁ、砕いてみよう」


「ツェーーイッ!! 正気か貴様ッ!」


 テトが勢いよく顔をくっつけてツッコんできた。っが、すぐにマルメロに捕獲され引き剥がされた。


「別にいくらでも採ってこれるから大丈夫だって。それに実験するんだから割ってみないと分からないじゃん。そもそも元神なんだから、こんなのに執着しないでよ、みっともない」


「……そ、そうであるな。元神が石一つに執着するなんてみっともないな」


 ふぅと一息ついてテトが落ち着いた。うちの神社に封印されていた二千年で、テトの神感はすっかりと薄れてしまい、ずいぶんと庶民的になったなーっと感じた。それはおいといて。


「よし、じゃぁやっていこう」


 そういうと、俺はマルメロから受け取った属性魔石を素手でコツンと叩いて割ってみた。割ると中にある魔導力がどうにかなるのか?とも予想していたが、特になんともなく、魔導力を含んだまま割れただけであった。


 グラスプで解析した感じだと、魔導力が分散されて全体的な力は下がるようだが、属性が消滅したり暴発したりという事はなかった。属性魔石が沢山増えたという感じが適切かなと思う。


 次に、その属性を発生させてみる事にする。


 机の上に紙を置き、その上に魔法陣を刻印するのだが、どうやらテトは知らないとの事。なんか元神だけど微妙に役に立たないんだよな。そんな時に活躍するのが「想像創造」という能力。異世界叡智からそれっぽい魔法陣を探してきて、それを想像創造で精査して万物創生で魔法陣を刻印してみた。我ながら雰囲気が出ていて良くできているなと自画自賛したい。


 紙に刻印した魔法陣の上に砕いた属性魔石を置き、魔法陣のいわゆる「オン」スイッチみたいな場所に触れると、「ぽっ」と小さな炎が魔石から出てきた。「オフ」に触れるとその炎はシュンっと消えた。


「なにこれ、めちゃくちゃ面白いじゃん……!!!」


 元・ディーアイワイの領域を超えたモノ作り大好きおじさんからすると、こういった未知のカラクリは大好物なのだ!


 もはや、これだけでも神力を使用しないでガスコンロを使用する事ができるはずだ。ガスコンロの動力であるガスを火属性魔石として、着火は魔法陣を刻印すればいいだけだ。恐らく火力調整も魔法陣を改良すればすぐ可能だと思う。


 さらに、魔石を砕いてグラスプで解析した時に分かった事が二つある。


 一つ目は「魔導力そのものは「無属性」の動力」である事、二つ目は「属性を発動させる際に変圧器のような回路がある」という事。


 回路が勝手に生成されるのは異世界っぽくてそそられる。


 テトも言っていたが、地球でいうところの電気と等しい仕組みだった。また、性質上ガスや水、氷などにも変換されるため、電気より使い勝手が良い。


 魔法陣パターンは解明できた。お次は詠唱パターンを調べていきたい。


 我々は神力でなんとかなってしまうため、魔法に関してはそこまで詳しくない。想像創造と万物創生でそれっぽい事はできると思うのだが、この世界においての「魔法」でこれらを再現するのは難しいかもしれない。なので、今回は適当に「灯せ」「消灯」くらいの単純な言葉で属性が発動するようにしてみた。


 詠唱実験は、机の上に砕いた魔石を置き、魔石に向かって「灯せ」と唱えてみる。すると、魔法陣と同じく「ぽっ」と小さな炎が出てきた。「消灯」と唱えるとシュンっと消えた。万物創生で創ったランタン風の入れ物に魔石を入れると、雰囲気あってかなりエモくなったよ。


「大成功だね」


「「「「「さすがアイノ様です!」」」」」


 横で見ていたメイドゴレム達が一斉に褒めてくれた。


「これで世界の文明がひとつ進みましたね」


 さらにマルメロが代表して労ってくれた。ものの一時間でできちゃったんだけどね。


 余談だが、この属性魔石の寿命は結構長く、一般的な石ころくらいの大きさで、だいたい五年は使用できると言っていた。意外に便利だな異世界。



 午後は始まったばかりだし、まだまだ文明を発展させていくぜ。


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