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あゝ異世界転生、亜神成り  作者: 渡名喜橋もうれ


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水場の完成

「お~凄いね。本当に水が湧いてる。これは予想以上かもしれない」


 周囲より若干ではあるけど一段上がった感じの場所から湧出しており、一見「水たまりか?」っと思ったが、底から伏流水がゴンゴンと凄い勢いで湧いている! その小さな泉の様になっている場所から伏流水が溢れ、下流に流れていく感じがなんとも美しい。


 今回、水場と言いながらも、実際に探していたのは「伏流水」なんだよね。川でいいじゃないかと思いがちだけど、実は真水というのは結構危険を孕んでいる。清流に見えても微生物や未知の病原菌がいることが多く、当然ではあるがそのまま飲むことはできない。


 一応、我々はそういった事で状態異常になるということはないんだけど、元日本人としての精神衛生的に安全な水の方がいいし、今後拠点周辺に誰かが住みつくかもしれないという事を考えると、安全かつ綺麗な水というのは必須だったんだよね。それに飲んだり使用するなら綺麗な方がいいよねって話。


 ちなみに、伏流水とは、川の水や雨水が地表の下にしみ込み、砂や礫などの地層の間をゆっくり流れている地下水のことで、川と比べると水質悪化の影響を受けにくく、細菌などがほぼ混入していない。なので、煮沸などせずにそのまま飲めることが多い。今回発見した伏流水はまさにそれなんだよね。


「うん……冷たくて美味しいね」


 手で水を掬って飲んでみると、皆も同じく飲み始めた。


「自然の水ってのは美味いもんだべ~。これで畑さやったらきっと上手くいくべ」 


「んだべ。我が君が栽培したいって言ってた稲っちゅう穀物も、きっとこれで美味しく育てられそうだな」


「んだんだ」


 もう稲作の話をしているファームゴレム達。ここへの道中、稲の事を質問されたので稲作について簡単に説明したのだが、それだけで彼らは何かを悟ったらしく、すでに田んぼ計画を立て始めている。田舎で鍛えた自称農業マスターの俺が出る幕は無さそうだ。むしろ彼らにお願いした方がクオリティも高いでしょうね。うちの子達は天才なのである。


「素晴らしいです。水に雑味が一切なく、極めて透き通った水ですね。それでいて柔らかく凛としている。まさにアイノ様にふさわしい伏流水です」 


「本当に。水に一本筋が通っていて、とても凛としています。これでお米を炊いたらきっと美味しいでしょうね」


 マルメロとフィグのレポ能力が高い。「美味しいご飯は美味しい水から」を理解できているのは、さすがメイドゴレムである。うちの子達は天才なのである。


「……確かに美味であるな……しかし、魔境にも関わらず水が毒されていないというのも不思議な話であるな」


 テトの発言を聞いて確かにと思った。想像する魔境って負のオーラ半端ないってぇ!みたいな感じだったけど、今のところ「原生林」というだけで凶悪な感じが全くない。その証拠に湧出している伏流の綺麗さがそれを証明している。う~ん……不思議だ。


「まぁ、綺麗な水場が見つかって良かったね。このままだと色々と不便だから鳶ゴレム達に整備をお願いしようか。その後に、ファームゴレム達は農業用水路の整備をお願いね」


「「「了解だべ!」」」」


 そう言うと、俺は念話で鳶ゴレム達を呼んだ。携帯での通話を想像して念じてみたら繋がったんだよね。憧れのテレパシーですよ!しかもファームゴレム達の士気も完璧だ!


 一息つく暇もなく、鳶ゴレム達が到着した。家から五分くらいだしね。


「アイの旦那。ここがその水場ですかい?」


 親方の鳶郎が質問してきた。


「そうだよ。今のままじゃ使いにくいから整備してくれないかな。イメージは、北海道の有名な山の麓にあった公園みたいな感じがいいかな。異世界叡智にあると思うけど、昔オジイと一緒に町内会の旅行で行ったあの公園の感じがいいんだよね。多分、十五年くらい前だったと思うんだけど……」


「わかりやした! ちょっと確認しまさぁ」


 そう言うと、鳶郎は少しだけ目を閉じて情報を探している。これは、頭の中にある異世界叡智で特定の情報を探しているのだけど、傍から見ると異世界叡智ってチート過ぎるね。そう思いながら目を瞑った鳶郎が情報を探してくるのを待った。(たった数秒だったけど)


「……」


「わっかりやした! あの公園でやすね。すぐ作ってみせまさぁ! 大きさはだいたい五ヘクタールくらいになりますぜ!」


 鳶郎は、「あらよっと」みたいな感じで情報を探してきた。


「よし、おめぇらッ! ちゃっちゃと作っちまうぞッ!」


「「応ッ!」」


 ほんの数秒で情報を見つけてきた鳶郎の掛け声に鳶二郎と鳶三郎が応え、テキパキと水場の整備を始めていく。こうなってくると、俺のやる事といったら、彼らから上がってくる確認に対して改善点や要望を伝えるくらいしかない。


 完全に手持無沙汰なので小休止。万物創生で適当に一体型ベンチテーブルを創り、マルメロとフィグがお茶を用意してくれた。本日のお茶は、ほうじ茶。ゆくゆくは茶畑も作りたい。


 水場の整備は鳶ゴレム達に任せるとして、次は農業用水路についてファームゴレム達と打ち合わせをする。


「ファム吉、水場を整備した後はどうするか決めてる?」


「んだなぁ~、この水場の下あだりに少し大きな池さ作ってもらって、んでもって、水路さ引いて、田んぼさ作っていこうかと思ってるべ。我が君の御神殿から見て右側あだりを田畑区域にしたいべ。ほんで、水さ湧いてる近ぐにワサビ田も作ろうかと思ってるべ」


 完璧か!喋り方と構想のギャップが凄い。


 シレっと出てきたが、実はワサビもあるんですよ、うちには。転生前にウラノスが「集落にある使えそうなもの全てを入れてやる」と言っていたので、昨日の夜に亜空間収納を確認してみたらなんとワサビの種があったんだよね。それを今日の出発前にファームゴレム達に見せたら余裕で育てられるって話だったんだよねー。伏流水が見つかったらワサビ栽培もお願いしようと思っていたんだけど、先んじて構想を言ってくるのはさすがだよ。うちの子達は天才なのである。


「ファム吉の計画通りで大丈夫だよ。水場整備が終わったらその計画でやっていこうか」


 もう言う事はない。全部うちの子達に任せておけば大丈夫だね。




◇ ◇ ◇




 そうこうしているうちに、鳶郎から声が掛かった。


「アイの旦那! 終わりやしたぜッ! ちっと確認してくだせぇ!」


「え、凄っ」

「ほう、非常に美しい光景であるな!」


 俺とテトは思わず声を上げた。


 原生林の中に埋もれていた場所とは思えないくらいに整備されてる。基本的には日本風の庭園といった雰囲気で統一されていて、所々に建てられた東屋や小さな橋が実に良い雰囲気を演出している。


「おぉ、池もいい感じだっぺな、鳶郎」


「あったりめぇよファム吉の。こっから水路の指示はおめぇさんに任せるぜ」


 江戸時代かここは。古風なやり取りをしたファム吉と鳶郎は、水路の打ち合わせを始めている。


 鳶ゴレム達が造った公園は、最初に鳶郎が言った通り大きさは五ヘクタールくらいで、周辺の木々も間伐してくれていてかなり開けた場所になった。明るくてとても心地よい。要望通り、昔訪れた北海道の有名な山の麓にある公園みたいな仕上がりになっている。しかも二時間くらいで完成させているから驚きだよ。うちの子達は天才なのである。


 水場の整備が終わった後は、ファム吉を中心に農業用水路を整備していった。水場の整備に比べたら相当簡単との事。鳶ゴレム達はファム吉が設置した目印らしきもの頼りにすたすた歩いていく。そうすると、その後ろに水路がどんどん出来ていく。もう怪奇現状だよこれ。自分でやってるとなんとも思わないけど、他人がやってるのを見ると物凄く不思議な光景なんだな。


 水場から拠点辺りまで水路を作っていく過程で気付いたのだが、この辺り一帯はあちこちで水が湧いている。なので、追加で泉を作ったり応急処置的に川を作った。もちろん鳶ゴレム達がだけどね。


 水路は無機質な感じではなく、周囲の自然環境とよく馴染む水路にしている。うちは環境調和型です。


 ちなみに、水路造成過程でやる事のなくなった俺は、彼らの後ろからついていき、水路の両サイドにどんどん桜の木を植えていった。実は拠点を桜だらけにしようと計画している。拠点の近くには大きな桜を植えてお花見なんかもやりたい。桃源郷ならぬ桜源郷(おうげんきょう)を目指すぞ。

 

 水路の左右には遊歩道なんかも造ろうと思う。俄然楽しくなってきた異世界開拓ライフ!


 あれこれ追加で作ったけど、あっという間に拠点に帰ってきた。


「じゃっ、アイの旦那。あっしらはこのままファム吉たちの田んぼの造成をしてきまさぁ」


「あいよ。よろしくね。ファームゴレム達も田んぼよろくな」


「了解だべ。畑とワサビ田も作っぢまうから、完成したら後で呼びにくるべな」


 そういって、ゴレム男衆は作業を続けた。タフ過ぎる。


「アイノ様、この後はどうなさいますか?」


 マルメロが質問してきた。想像以上に早く終わっちゃったからどうしよう。


「う~ん……そうだな~……あっ、そうだ。今後の為に、生活排水と、アプルが言ってたガスコンロの謎を調べてみよう。この世界で再現できる方法を研究してみよう。あと、お腹すいたからお昼にしたい」


「かしこまりました。では、これから昼食にいたしましょう。他のメイドゴレム達に伝えてまいります」


 そう言うと、マルメロとフィグは軽くお辞儀をしてから、一足先に家へと向かった。


 俺とテトは少し遅れて彼女達の後から家へと向かう。


「なぁテト、二千年前はこの世界の文明水準ってどれくらいだったの?」


「そうであるな、地球で言えばだいたい中世ヨーロッパくらいであるな」


 ふわふわと浮遊しながら、あごに手を当て「ふむ」といった格好でテトが答えた。


「ってことは、現代っ子の俺の感覚からすると、中世ってかなり原始的な暮らしをしているイメージがあるんだけど、そこらへんはどうなの?」


 生まれたときから電化製品に囲まれて育った現代人にとって、アナログな生活というのは結構未知の領域なのだよ。なので、ここジェムボーデンは魔法なんかがある世界だし、現代の文明水準に少しでも近付く何かがあって欲しい。


「確か地上の子らは、魔物から採れる魔石を魔導力に変換して、生活の中で活用しておったはずであるぞ」


 そう! そういうのだよテト! ファンタジー感もあるし期待値が爆上がりだ。


「そうなると、中世ヨーロッパくらいであるものの、魔導力によってそれなりの文明水準があったってことか。ちなみに、その魔導力って地球でいうところの電気って認識で合ってる?」


「合っておるぞ。ただ、地球の電力ほど大きな力ではなかったはずであるな。部屋を明るく灯したり、調理用の火として使ったりするくらいだったと思うぞ。生活魔法というのものあったはずだ」


(なるほど。魔石の力を引き出せていない可能性もあるね。もしくは、その魔石を扱いきれないとかかな?あと、生活排水あたりは生活魔法でなんとかしてるのか?あるいはそこだけ中世の垂れ流しパターンもあるよな……まてよ、そもそも属性魔石を持った魔物討伐が出来ないのでは?)

 

 テトからの説明を聞く感じ、そこそこの文明レベルではあった可能性もある。


「私が神の座から失墜してしまった故、もしかしたら、そういった文明が廃れている可能性もあるな。魔法もどれくらい残っておるのか、皆目見当もつかん……」


 忘れてたけど、テトって元神なんだった。でも、テトの言う通りヴァイスとかいう邪神が世界をめちゃくちゃにした事を考えると、文明が想像以上に衰退している可能性は高い。そういった意味でも今はジェムボーデンの文明発展のために、魔境開拓をしていくのが最善だと改めて思った。


 よしっ、昼食後にはそれをやろう! 午後に向けて気合を入れた。


 ちなみに、本日の昼食は謎牛を使った牛丼だった。


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