まずは水場を探そう
転生から一夜明け、日本から亜空間収納に入れて持ってきた地球での我が家で目覚める。異世界で初めての朝を迎えた。……が、見知った天井、使い慣れた寝具、トイレ、お風呂、などなど。うん、ここまではあまり変わらないな!
地球で暮らしていた時と違うこと言えば……
「おはようございます、アイノ様」
「おぉ、おはようマルメロ」
自室から出たら、ドアの前にメイド長であるマルメロが待機していた。そして、挨拶もそこそこに俺の後ろを付いてくる。
「いや、付いてこられると気になるんだけど……」
「いえ、アイノ様のお世話が我々の使命ですので」
「……」
雰囲気的に何を言っても続けてきそうなのでここは黙認した。
さて、初の異世界朝だし外の空気でも吸いに行くか。そう思って家の外に出てみる。
「ん、んーーーーッ!!」
軽くストレッチをして家の周囲を見渡す。小さな丘とはいえ、周囲の樹々が巨木すぎて空しか見えない。鳶ゴレム達の家を建設する時に、200坪くらいだが家の周囲を開拓した。それでも周囲の状況がわからないくらいの巨木が生い茂っている。ここは間違いなく魔境だなと再確認した。
「ん? 昨日はあまり意識してなかったけど、この拠点周辺に魔物? っの気配を感じる……いや結構いるな。しかも巨獣もいるし、そこそこ強い魔物の気配だらけじゃん。なんで襲ってこなかったんだろ」
「どうやら、この拠点は結界のようなもので覆われているようです」
「……結界? 張った覚えはないけど、だから襲ってこないのか」
そうマルメロと会話をしていると、ふよふよとオバケ型の神霊族ことテトが後ろから話しかけてくる。
「アイノ、お主は一応神であるぞ。お主が開拓し生活している場所であれば、自然と『聖域』になるはずだ。魔物共が襲ってこないのも当然よな」
「なるほど。多分、襲ってきても問題ないとは思うけど、いちいち対応していたら面倒だからラッキーだな」
特に夜寝ている時に襲ってきた鬱陶しくてしょうがいないと思うので、自動結界は素直にありがたい。
マルメロ達とあれこれ話をしながら、家の周囲をぐるっと見て周っていると、家の中にいるメイドゴレムからお呼びが掛かった。
「アイノ様ぁー!御朝食の準備ができましたよー!」
「わかった、今行くよ」
テトが「わぁい」と一目散に家の中に入っていく。二千年も岩の中に封印されてたら、そら現実で飯食うのも楽しみになるのか? そう疑問を抱きつつマルメロと共に家の中に入った。
本日の朝食の献立は「これぞ日本の朝ご飯」という感じだった。ご飯、味噌汁、卵焼き、それと、昨日の夕飯に食べた牛型魔物のしぐれ煮。うちの子達は天才なのである。
あれ? まだガスコンロ使えなかったと思うんだけど、どうやって調理したんだろうか……。
「ガスコンロってどうやって使ったの?」
「アイノ様から付与していただいた変幻自在にて稼働させました。日本でいうところの『ガス』なる燃料の代わりに神力を流すことで使えるかと」
本日の調理担当アプルがさらりと答えた。俺より早くガスコンロの謎を解き明かしただとッ! お願いする前にタスクを完了させてくれるなんて、やはりうちの子は天才である。
ちなみに、なぜ地球の料理が作れるのかというと、やはり異世界叡智の影響があるようで調理方法が「分かる」らしい。この辺りは流石俺の眷属だ! 何度でも言うが、うちの子達は天才なのである。
「どうぞアイノ様」
「ありがとう」
そういって、メイドゴレムのアプルが配膳してくれた。そして、俺への配膳の後にテトにも配膳した。
「これは下級霊の分だ。アイノ様に最大限の感謝を示してからありがたくいただきなさい」
「あ、朝から散々であるな……」
メイドゴレムのテトに対する扱いが強めだけど、テトも下級霊を受け入れてくれてよかった。
「「「いただきまーすっ!」」」
今日の給仕・配膳担当はアプルとフィグのようだ。マルメロ・オリンジ・プラムも一緒に席に着いて食事をしている。もちろん、鳶ゴレムやファームゴレム達も一緒に食べている。
「アイの旦那! これが旦那の故郷の味ですかい? こりゃぁ、たまりませんなー!」
江戸っ子風でクセが強めの鳶郎が、そう言いながらガツガツと気持ちの良い食べっぷりをみせている。
「この米っていう穀物も非常に興味深いだ」
農業関連のリーダーであるファム吉はさすがに目の付け所が違う! そう! その米を作るのが何よりも大事なんだよ!
「水場が見つかったら、まずはその米を作るところから始めたいんだよね」
俺がそう言うと、ファム吉が興味津々に質問してくる。
「この世界に『米』なる作物はあるだか?」
「ふっふっふっ。ファム吉くん。その辺りは山奥育ちの田吾作であるこの俺に任せてよ」
「アイノ様が言うなら問題ないべ。楽しみにしておくべ」
実は米には当てがある! っというより、もう見つけてしまっているんだよ。だが、それは水場を見つけ、整備してから炸裂させることにしたい。
実際にこれだけの人数がいると、当初は数年くらい持つかなと思っていた家の食料や調味料も、一年くらいしか持たないと思う。なので、食料の自給は急務なんだよね。特に米だけは切らしたくない。元日本人としては米がないと生きられない。水場の発見と整備は何よりも優先しなければならない。
なんてこと考えながら、皆でわいわい会話をしながら食事を続けた。こうやって大勢で話をしながら食事をするのは本当に懐かしい。テトもパクパクと美味しそうに朝食を食べていたし、これが毎日続くと思うと、やっぱり異世界にきてよかったなと思うよ。まだ二日目だけどね。
稲作や農業が落ち着いたら、海産物なんかも探しに行きたい。どんどんタスクが増えるな。
◇ ◇ ◇
さて、朝食も済ませたし今日のタスクを確認しよう。本日のタスクは大きく分けて二つ。一つは水場の捜索と整備。二つ目は拠点の開拓と整備。
水場捜索メンバーは、俺、テト、ファームゴレム全員、マルメロ、フィグ。
拠点開拓メンバーは、アプル、オリンジ、プラム、鳶ゴレム全員。
「よし、じゃぁやるか~」
「「「はっ!」」」
俺の軽い掛け声に対して丁寧に返答してくれるゴレム達。朝食を食べ過ぎてのろのろと浮遊しているテトとは大違いだよまったく。
拠点開拓メンバーは各々作業を開始するため持ち場へ向かって行った。我々水場捜索メンバーは、玄関前に造った庭に集まった。
「アイノ様、本日はどのように水場を探しましょうか?」
メイド長であるマルメロが質問してきた。
「家の周辺を広域探査してみようと思うんだけど、多分この場でできると思うからやってみるね」
「かしこまりました」
そう言ってマルメロは一歩下がった。
広域を探査するとなると、イメージ的には立体マップがいいかな。そう思うと想像創造が仕事をしてくれるので後は楽なもんだ。両手を上向きにして目の前に出して念じると、ホログラムのような立体マップが浮かび上がった。
「こりゃ分かり易くて便利だべ」
「んだな。これがあれば水場さすぐに見つかりそうだな」
「んだんだ」
立体マップを見たファームゴレム達が関心している。驚いてくれることは素直に嬉しいではあるが、実はまだ注目機能があるんだよね。
「ふっふっふっ。ファムゴレ達よ。このマップの凄いところは、ここからだ!」
俺はそう言って注目機能をホログラム立体マップに表示させた。
その注目機能とは「地図上検索」というもの。
地図上検索と念じるか「地図上検索」と唱えれば、ホログラム立体マップに検索結果がピンとして落ちるようになる。そのピンを見たいと念じるかタップすればポップアップで詳細が表示されるという、現代地球でもありえないであろうとんでも機能が今回の目玉機能なのだ。
「「さすがアイノ様です!」」
マルメロとフィグが驚いてくれている。嬉しい。
「拠点周辺の水場を探してみよう……ん~、五百メートル以内にある水場っと……」
俺がそう言うとホログラム立体マップ上にいくつかピンが落ちた。散策が面倒なので、できれば近くにあってくれと思ったが、約三百メートルほどのところに良さげな水場を発見できた。しかも、ピンをタップして詳細を確認したところ、想像以上に良い感じの水場だった。
「よかったわ~近くにあって。散策するの面倒だったからラッキーだわ~」
「凡そ神とは思えない発言であるな」
俺の心からの言葉に対して、テトが小言を言ってくる。テトよ、これが効率化なのだよ。
「あっ、ここ、アイノ様の御神殿の横にある斜面あたりですね」
横からマップを覗き込んでいたフィグがそう言ってマップ内の水場を指さした。
「本当だ。じゃぁ、あの原生林を開拓していけば水場があるっぽいね。行ってみよう」
「すぐ近くとはいえ、これだけの原生林を前に『ちょっとそこまで』みたいな感覚で行けることが異常事態であるな」
一応この世界のナビゲーターとして着いてきたテトがそう言うほど、この魔境っておかしい存在みたいだ。確かに原生林のレベルがおかしいし、テトも知らない魔物だらけって言ってたからね。とはいえ、俺の敵ではないのだ!
あきれ顔のテトを横目に、散歩感覚で水場へと向かう。普通であれば、三百メートルとはいえ原生林の中を歩くので、それなりに時間を要すると思うが、そこは曲がりなりにも我々は亜神の一団である。その水場まで一直線ですたすたと歩いて向かう。
そう! 自動伐採&収納というチート能力があるのだよ!
自動伐採を発動させて歩くだけで、大木が勝手に伐採され自動的に亜空間収納に入っていく。しかも亜空間収納内で分解と製材までしてくれる。ちなみに、これはゴレム達も全員できるんだよね。
自動伐採をしながらすたすたと水場へと向かい、五分足らずで目的地に到着した。マップの詳細で情報としては知っていたけど、やっぱり実際に見ると全然違う。
ただ水場を見つけただけなのだが、文明発展に一歩近付いた気がして気持ちが上がった。それと同時に妙な安心感があった。水は偉大だ。
さて、ここが拠点発展のための第一歩だ!
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