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あゝ異世界転生、亜神成り  作者: 渡名喜橋もうれ


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2/7

まぁいっか、異世界転生

転生までサクサク行こうと思います。

 山の日暮れは早い。周囲を木々に囲われているため、街に比べると圧倒的に暗くなるのが早い。


 一人暮らしをしていた街は常に灯りで満ち溢れていた。街に夜はなかった。

 煌々と輝くその街の灯りにどこか酔いしれ、灯りの下を歩くのはなぜか誇らしかった。


 元は山奥の限界集落の出身である。大自然の中で生まれ育ち、専門学校を卒業してすぐに就職し、実家から車で約二時間の場所にある大都会の近くで一人暮らしをした。


 実家が神社だったから、漠然とした考えで宮大工系の専門学校に入学し、流れのままにそういった関係の企業に就職した。休日は先輩たちに連れられ飲み歩いたり、イベントに参加してみたりと、人並みに都会暮らしを楽しんだと思う。


 十八歳で三年制の専門学校に入学し、二十一歳で就職したのを機に一人暮らしを始めたが、三年も経ったころには満員電車が嫌になり、当初希望していた現場仕事ではなくデスクワークが増え、休日の過ごし方にも飽きてきた。


 オジイも高齢になってきたから……そう自分に言い聞かせ、二十五歳を迎える前に会社を退職し神主となった。半ば都会暮らしから逃げてきた形にはなるが、やはり田舎暮らしが性に合っていた。


 脱サラして神主になってから十五年目になった冬に、オジイは天国へと旅立った。老衰だった。

 限界集落だったとはいえ、氏子さんたちを全員見送ってから旅立ったオジイは立派だと思う。

 

 オジイが亡くなってからは一人忙しなくしていたため、オジイが亡くなってからの数か月間はほとんど覚えていない。何故かそれくらい忙しかったことだけは覚えている。




 忙しさが一段落ついたある日、俺は本殿でオジイや氏子さんたちとの思い出を振り返っていた。


 武術の鍛錬中に何度も怪我をしたこと。気付いたらオジイといい勝負ができるように成長(達人の域に到達)していたこと。近くに住む婆さん(っといっても老人の足で15分はかかるけど)がしょっちゅう干し柿くれたなとか、ジジイやババア達の音楽サークルに参加したり(おかげで大抵の楽器扱えるよ)、農業を手伝ったり(本業レベルになったよ)、害獣駆除を手伝ったり(ジビエの解体とか余裕できるよ)、DIYで家の補修をしたり(DIYの域超えてるけど)、神社に料理持ち寄って飲み会したり(料理完璧です)……神主になってからの十五年、色々あったけど本当に楽しかった。


 だけどもう、誰もいない。俺、天涯孤独ってやつになったんだな……。改めて痛感する。

 

 今日くらいは悲劇に酔ってみようかと思った……。その瞬間、突如目の前に「全銀河の創造神」を自称する薄っすら発光している半浮遊状態の老人が現れ、「亜神に成って異世界転生してほしい」などという、あまりにも非現実な頼みごとをしてきた。


 ちょっとカッコつけようと思った瞬間に現れるとは無礼なジジイだ! 悲劇に酔ってみようと顔と気持ちまで作った自分が恥ずかしいわ!




◇ ◇ ◇




 突如として現れた創造神ウラノスの言葉をまとめると、俺は地球とは違う世界の神だった人(?)の能力を受け継いだ人間だということ、その神が「神の座」から失墜したことが原因で異世界の発展は停滞し崩壊寸前であるということ、そして神から受け継いだ力を使って異世界を救済してほしいということ。重要なのはこの三点。


 田舎育ち且つあらゆる武術を修めた俺でも、全く知らない世界に行って、亜神という人間とは全く別の種族に成って、恐らく原始的な生活をするっていうのは流石に怖すぎる。とはいえ、地球にいても天涯孤独だし、やりたいことはもう特にないし、オジイと暮らしたこの家、この地域に思い入れはあるものの、ぶっちゃけ異世界転生の話は「転生特典」次第だ。


 そう思い、ウラノスに質問してみる。


「恐らく亜神と成って異世界に転生するってことは、現状のままってわけじゃないんだよね?なんか能力みたいなのって付与されるのか?」


「ん~、そうじゃのぉ~。それは彼の世界で神だった者に聞いてみるとしようかの」


 ウラノスがそう言った瞬間、強い光が差し込み、そしてその光が消え、目を開けると……目の前にはモヤモヤとした煙に包まれた光の玉が現れたのだ。


 ソフトボールほどの大きさをしたその煙に包まれた光の玉は、ふよふよとウラノスの側に浮いている。超常現象が続いているが、段々と慣れてくるは実に不思議だ。


 そう思っていると、光の玉が喋り出す。


 「やぁ、初めましてカミマエ・アイノ。私はジェムボーデンの元神テティオスである。この度は難儀なことに巻き込んでしまい大変申し訳なく思う……」


 た、玉が、喋ってる! ファンタジー過ぎてちょっとテンション上がる! ウラノスは微発光した浮遊老人なので少し怖かったけど、光玉が喋るのは実にファンジーっぽくて良い! 非常に良い! こーゆー演出が欲しかったのだよウラノス爺さん!


 っと、ここ数年で最大のテンション爆上がりだった。心の中ではオタク全開にホットホット状態になってしまったが一度落ち着き、目の前の喋る光る玉に問いかける。


「さっき爺さんから聞いたよ。そのことはもう大丈夫。それよりその姿ってなんなの?」


 考えるより先に質問が口から出ていた。どうしても気になるその姿について、質問せずにはいられなかった。


「これは思念体である。肉体はジェムボーデンから地球に渡った際に消滅したのだ。能力についてはウラノス様から聞いている通り『輪廻の螺旋』に移した。なので思念体としてこの姿になったというわけだ」

 

 全てがファンタジーです! ウラノスには同情してしまうくらいファンタジーだ!

 「聞こえてるぞ」と言わんばかりにウラノスがこちらを見ているが、まぁそれはそれとして。


「なるほどー。あっ、そうだ。異世界転生する時って能力みたいなのが付与されるのか?」


 色々と気になることはあるけれど、俺は異世界転生についてテティオスに聞いた。


「あぁ、付与されるぞ」


 凛としたオーラを出しながらテティオスは続けた。


「まず、私の神力はそのままお主に受け継がれているはずだ。それが自覚できないのは恐らくウラノス様による封印術であろう」


「さすがに地球で神力が発動すると厄介じゃからの。愛命が生まれたときに封印したんじゃよ」


 なるほど。確かにあまり変わったところはなかったように思う。トップアスリートを凌駕する程度の運動能力・心肺機能・筋力はあったけど、それって山の中で生活して鍛えてれば誰でもそうなるよな。


「私の神力を受け継いでいるはずであるから、ジェムボーデンでは万物創生や森羅万象といったお主が想像する所謂ファンタジー的な力が使えるはずだ」


「亜神とはいえ神じゃからの、向こうへ行けば不老不死に成るぞ。言語なんかも心配不要じゃ」


 何それファンタジー過ぎるじゃん。もうワクワクが止まんないよね。止まんないけど、話が壮大すぎて怖くなってきた。あと、人間って寿命がある前提で生きてるから不老不死になるって逆に怖いな。何があっても生き続けないといけないのだから。っていうか、世界の命運がかかってるじゃんこれ。多くの命が関係してくるわけか……いや、そんな責任を負うのは大変そうだなー。よし断ろっ。


「うん、今回はお見送りということでお願いします」


「「ッッッ!!!!????」」


 いや、もう行く感じだったじゃんッ!! っていう顔をしながら大慌てしている二人。何度も顔を見合わせながら挙動不審になっている。異世界の荒廃についてはそれなりに同情はするけどさ、だってよく考えたら世界に対して責任持つなんて無理過ぎるでしょ。単なるド田舎者の神主ですよ俺は。


 これまでド田舎の小さな神社で神主をしていただけの中肉中性39歳独身神主ですよ。突然、縁も所縁もない異世界というあまりにもファンタジーな話をされて、しかもその世界で亜神に成ってその世界を救えだよ?その重みにきしんでしまうよ。冷静に考えたらとんでもない話だよな。だからここはちゃんと断って、お二人には帰ってもらおう。


「じゃぁ、お二人ともお体に気を付けて。あっ、これウチで漬けた梅干しだけどよかったら持って帰ってな。ここら辺は暗くなると猪とか出るから注意してね。それじゃぁ、元気でな」


「突拍子もないことを言い始めた、光る玉を携えた痛い老人が来ちゃったから早く帰ってもらおう……っじゃないんじゃよっ!」


 ウラノスのツッコミが冴えわたる。とんでもない切れ味だ。(あんた売れるよ)

 ごほんとわざとらしく咳ばらいをして仕切り直し、ウラノスは続ける。


「愛命や、亜神に成って転生すれば、田舎でのんびりスローライフが満喫できるぞ。税金も必要なく悠々自適に暮らすことだってきるんじゃ。万物創造といった能力もあるし生きていく上で困ることはほとんどないぞ。その能力でやることさえやってくれれば……そして世界の救済をしたら……じゃけどの……」


 最後の方はめちゃくちゃ小声で早口だったけど。


「流石に俺には責任が重すぎて背負えないよ。じゃぁ、元気でな」


そそくさと二人を帰そうとする愛命だったが、ウラノスの言葉で状況が変わった。



「お主、神社を畳んだらまた都会生活に戻る気かの?」


「ッ!?」


 愛命の動きがぴたりと止まる。


 このジジイ。俺が都会暮らしに嫌気が差して逃げるように神主になったことを知っている……だと?そりゃ言われてみれば御祭神だもんな……。知っていて当然か。くっ……。


 これ好機とみるや否や、ウラノスが畳みかけてくる。


「そうじゃ愛命。お主の家があるじゃろ。氏子たちが建ててくれたあの豪邸が」


 そうなのだ。うちの集落は俺が生まれるずっと前に、砂金や林業、松茸やシイタケなどの産業でボロ儲けした謎の地域なんだよね。なので、氏子さんたちは漏れなく大富豪であり、神社の改修と、神主であるオジイの家の建築費用を全額負担してくれたのだ。この地域は、山奥の田舎にも関わらず豪邸が多く、我が家も氏子さんたちの家ほどじゃないにせよ、一般的にみれば豪邸の部類に入ると思う。平屋の書院造だからな。建築費なんて超高額だと思うけど、一体どうなってんの氏子さんたち……。


「今回は特別に、テティオスの神力に加えてワシからも色々と融通してやる。まず亜空間収納という能力の付与! これは生物以外なら入れることができるし、中の時間も止まるんじゃ。料理を嗜むお主にはかなり便利な能力のはずじゃ。そしてその中に今の家を収納しといてやる!」


 このチャンスを逃がしてなるものかと、かなり前のめりでウラノスの説得は続いた。


「さ・ら・にッ! お主の住む集落にある使えそうなもの全てを入れて転生することを許可する! どうじゃッ?!」


 これでもかと特典を付与してくるウラノスだが、こういう時はゴネたもん勝ちだ。そもそも種族も変わるし住む世界も変わってしまうのだから、あれこれ要求する権利くらいはあるだろう。向こうが被る不利益は税金だと思って欲しい。


「えー、でもなー、異世界って日本みたいに近代化されてないんでしょー?俺田舎育ちの現代っ子だから原始的な生活なんて無理だよ爺さん」


「くっ……お主はジビエの扱いなんかも熟練者レベルじゃろうて……」


「日本と異世界は違うでしょ。わけわかんない生物解体するのなんて怖いから嫌だよ」


「ぐぬぬぬ……ん~、よしっ! 家にある調味料などはとりあえず満タン、赤字覚悟で水回りまでは付けてやろう! これでどうじゃッ!」


「「……」」


「ふっ、いいだろう」


「「本当かッ!?」」


 ウラノスとテティオスが「ぱぁ」っとした顔をして、安堵しながら喜んでいる。


 俺はウラノスと握手を交わし、異世界行きを決めた。まぁぶっちゃけ地球にいてもやりたいこともないから異世界行きを断る気なんて無かったんだけどね。貰えるものは貰っとかないとな。


 ちなみに、ウラノスからのサービス以外には、転生のデフォルト特典として若返りと、地球全ての知識を扱える「異世界叡智」という能力が付与されるとのこと。さらに、神の加護もない重力も厳しい地球の中で、且つ山奥という過酷な環境下で日々鍛錬していたため、ジェムボーデンでは神力などの能力を抜きにした素体だけでも超常的な存在になるとのこと。フィジカルモンスターじゃん。


 条件山盛りすぎてちょっと申し訳なくなってきたな。これだけやってもらったんだから、異世界ではできる限り頑張るとしよう。




 準備万端の異世界転生になってしまった。改めて転生に関する情報をまとめてみる。


 <名前>

 アイノ・カミマエ(神前 愛命)


 <年齢>

 不明(見た目は二十歳前後)


 <種族>

 亜神(人間から亜神へシフトした特殊個体)


 <能力・称号>

 万物創生、森羅万象、異世界叡智、亜空間収納、言語理解、不老不死、フィジカルモンスター、武術ノ達人、ド田舎の怪物


 <亜空間収納リスト>

 家(備品・設備万端)、神社、周辺施設




 改めてみると最高じゃん。もうここまで良くしてもらったらもう文句はない。

 

 正直、気になることはちょいちょいあるけど……まぁいっか。転生しても俺、頑張るからな。っと、心の中でオジイに報告した。


 時はきた。それだけだ。



 さぁ行こう! 自分をあげて異世界へ。


異世界転生、準備万端!

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