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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
10章 アトラ

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第90話 アトラの門番

青の世界を進むノラたちの前に、巨大な大門がそびえ立っていた。

珊瑚と貝殻で組み上げられたその門は、まるで生き物のように脈動している。

古代文字で刻まれた紋様が光を帯び、静かに呼吸するように明滅していた。


「……あれが、アトラの門……」

ノラは義手にヒトフリを握りしめながら、思わず呟いた。


門の前に漂う影が二つ。

一体は半透明のクラゲのナチュラビスト――ルミナ。

触手が青い光を放って揺れ、静かな威厳を漂わせている。

もう一体は巨大な蟹のナチュラビスト――カルナ。

分厚い甲殻には無数の古代文字が刻まれ、圧倒的な重厚さを放っていた。


オルガが低く告げる。

「彼らはアトラの門番。王に会う資格があるか、心を量る」


ブチが慌てて手を振り、ノラたちに向かって叫んだ。

「ち、ちがうからね! “量る”って言っても戦うってことじゃないよ! 安心して!」


ルミナの触手が揺れ、音もなく声が響いた。

『――心を試す。恐れを抱く者は光に飲まれる』


カルナの鋭い瞳が光り、低く大地を揺るがすような声が轟いた。

『――虚偽を抱く者は甲殻に押し潰される』


イヴは息を呑み、タロはごくりと唾を飲み込む。

クロは鋭い眼差しで二体を見据え、ノラへ視線を送った。

「……どうやら、言葉ではなく“心”を見られるようだな」


ノラは仲間たちを見渡し、静かに頷いた。

「俺たちは夢を持ち、信じてここまで来た。その心を見せればいい」


その時、ミロがイヴの手を握り、小さく微笑んだ。

「大丈夫。きっと乗り越えられるわ。……一緒に」

イヴは驚いたように彼女を見たが、すぐに力強く頷いた。


触手が光を放ち、門全体が青白く輝き始める。

次の瞬間、ノラたちの身体は柔らかな光に包まれ、心の奥底を覗かれるような感覚に襲われた。


――過去の記憶、痛み、願いが泡のように浮かび上がる。

ノラは血に染まった戦場とシロの背中を。

クロは兄を失った夜の闇を。

タロとイヴは孤独の涙と、寄り添って見つけた温もりを。

そしてミロは、王女として玉座に縛られながら、父の背を見続けた幼き日々を思い出していた。

(……私はずっと守られてばかりだった。でも今は違う。私自身が、共に進む仲間の一人でありたい)


「これは……」クロが低く呟いた瞬間、ルミナとカルナの声が重なった。

『――心に虚はないか』

『――夢は誠実か』


ノラは義手を握りしめ、深く息を吸った。

「……俺の夢は、仲間と共に、この世界をもう一度守ることだ。

 シロの意志を継ぎ、トヒやナチュラビストが共に歩める未来をつくる」


クロも続いた。

「俺は……兄さんの死の真相を求めてきた。だが今はそれだけじゃない。

 平和の代償を背負う覚悟が、俺にはある」


タロの瞳が輝いた。

「僕は、まだ夢を探してる。でも……イヴと一緒に、生きる喜びをたくさん見つけたい!」


イヴも強い声で応えた。

「私は……儚くても、夢を信じたい。

 いつか多くの人に、この景色を伝えられるように」


最後にミロが前へ進み、胸に手を当てて言った。

「私は……王女である前に、一人の仲間としてここに立っています。

 皆と共に歩む未来を、私も選びたい」


静寂の中、ルミナとカルナが互いに光を交わした。

やがて巨大な大門が荘厳な音を響かせて開いていく。

まるで海そのものが割れ、光の道を示すかのように。


『――心、確かに受け取った。アトラはお前たちを受け入れる』


光が消え、門の奥にまばゆい都市の光が差し込んだ。

ノラたちは顔を見合わせ、強く頷き合う。


「行こう。アトラの心臓部へ」

ノラの声に導かれ、一行はゆっくりと門の中へと進んでいった。

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