表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
9章 北西湖

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/201

第82話 北西への道

北へと向かう街道は、次第に荒々しい岩肌と険しい山道へと変わっていった。

風は冷たく、草原の匂いを抜けて湿り気を帯びた大気が漂う。


ノラは義手の留め具を確かめながら、隣を歩くクロに目をやった。

「……空気が違うな」


クロは周囲を警戒しながら頷いた。

「北西湖にはエアーも隣接する。 話によれば北西湖にて祀られるルーン石は優しさのルーン石。

 真に強い者だけが抱ける資質だ。湖王ゲータに会うには、試されるだろう」


ミロは背筋を伸ばし、前を見据えた。

「父も四天王も、私に“夢を奪わぬ未来を見ろ”と言ってくれた。

 だからこそ……私は逃げない。この道を共に歩む」


タロが元気に笑いながら跳ねるように進んでいく。

「よし! じゃあ僕が先頭ね! みんなついてきて!」


「ちょ、ちょっと待ってよタロ!」

イヴが慌てて追いかける。

彼女の小さな手には、旅の途中で拾った古い笛が握られていた。

風が吹き抜けると、かすかに澄んだ音が鳴り、どこか懐かしい響きが漂った。


ノラは二人の姿に微笑みを浮かべつつ、心の中で呟いた。

(……夢を奪わぬ未来、か。あの二人の無邪気さを守ることも、それに繋がるんだろうな)


やがて、視界の先に深い森と大きな湖を囲む山並みが現れた。

湖面はまだ見えないが、冷たい風に混じって湿った土と苔の匂いが漂ってくる。


クロが足を止め、剣に手を添える。

「気をつけろ。この辺りからは湖王ゲータの縄張りだ。

 外敵には厳しく、試練を課すと聞いている」


その言葉に、一行は足を揃えた。

冷たい空気の中に、静かな緊張感が満ちていく。


その時、木々の奥から重く低い水音が響いた。

水面がわずかに揺らぎ、まるで見えざる巨体が息を潜めているかのようだった。

湖は、確かに彼らを迎えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ