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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
8章 ハコニワ(2)

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81/201

第81話 疑念の広がり

ハコニワで起きたトヒ大量失踪の報は、瞬く間に周辺の町や村へと広がっていった。


「リーフラ族が守れなかったらしい」

「トヒが消えるなんて……まさか空族の仕業じゃないだろうな」

「いや、沼族の影に違いない。……新たな争いの始まりか?」


真実が分からぬまま、噂は形を変えて膨れ上がり、種族間の不信を煽っていく。

牧場から消えたトヒは平和の象徴であり、その失踪は誰にとっても衝撃だった。


統一政府の役人たちも慌ただしく調査に乗り出したが、痕跡はほとんどなく、柵も壊されていない。

「内部の裏切り」や「不可思議な術」といった憶測ばかりが飛び交い、布告はむしろ人々の混乱を深めていた。


――その頃。


ノラ一行は、ハコニワを離れて北西に進む道を歩んでいた。

途中の村で耳にした噂に、タロは不安げに眉をひそめる。

「……トヒが消えた? 本当なのかな」


イヴは胸に手を当て、寂しげに呟いた。

「もし本当なら……トヒたちは今どこにいるの……」


クロは険しい顔で応じた。

「信憑性はまだ分からないが、事実だとすれば一大事だ。

 リーフラ族が“平和の象徴”を守れないとなれば、統一政府全体の威信が揺らぐ」


ミロは強い眼差しで前を見据えた。

「だからこそ、私は王女として真実を掴みたい。

 父や四天王を疑う者たちの声に負けぬよう、証を見つけなければならない」


ノラは義手を握りしめ、低く言った。

「夢を奪われたトヒの未来を……俺たちが見届けなきゃならない。

 失踪の真相を突き止めるまで、この旅は終われない」


朝焼けの光が道を照らし、仲間たちの影を長く伸ばしていた。

その影は揺れながらも確かに繋がり、未来へと続いていた。

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