第75話 ブルの告白
広間に漂う重苦しい沈黙を破ったのは、ブル自身だった。
巨体をわずかに震わせながら、彼は深く目を閉じ、低い声を絞り出す。
「……俺は、王である前にひとりの父であり、そして……罪人だ」
その言葉に、ミロが小さく息を呑んだ。
「父上……」
ブルはゆっくりと王座から立ち上がった。
堂々たる体躯でありながら、その背は重荷に押し潰されるかのように沈んでいた。
「俺は戦争の最中、数多の命を奪った。
肉食や雑食の種族を鎮めるために、トヒを囲い、夢を奪った。
平和を築いたつもりで……本当は恐れに縛られていただけだったのかもしれん」
クロが静かに言葉を紡ぐ。
「……王として……平和の代償を背負うのですか……」
その声には非難ではなく、尊敬と自らへの問いかけが滲んでいた。
ノラは横目でクロを見やり、彼が兄シロを失って以来、どれほどの努力を積み重ねてきたのかを改めて思った。
ブルは頷き、苦笑を浮かべる。
「夢を恐れ、封じ込めることでしか平和を保てなかった。
本当は、夢とどう向き合うかを探すべきだったのに……俺には、それを導く勇気がなかったのだ」
ノラの胸に熱いものが込み上げる。
(王でありながら……一番苦しんできたのは、この人自身なんだ……)
忘れない間にノラはブルに質問した
「南西湖にて湖王ヒッポから力のルーン石を授かりましたが南西湖が沼族に襲撃された事は知られていましたか?あと、沼族はルーン石を集め何かを企てているようです」
「あぁ少しだけ分かっていることがある。沼王ナーガを筆頭にレプタにて怪しき密教があると噂話程度で聞いたことがあるが詳しくまでは情報が少ないがルーン石を集めて密教の何かで使おうとしているハズだ」
眉間にシワを寄せながら溜息とともにブルは答えた
「四人が力のルーン石に選ばれたのなら、沼族よりも先に北西湖及び北東湖にてルーン石を集めてくいれないだろうか?」
ノラとクロはたった一言
「任せてください」と答えた。
そして、ブルの視線が娘ミロへと向けられる。
「ミロ……お前は俺の誇りだ。
俺のように恐れに縛られるのではなく、夢を見据えて進んでほしい。
だからこそ、この旅人たちと共に歩むがいい」
ミロの目が大きく揺れた。
「……父上……!」
ブルはその手を差し伸べ、優しく娘の肩を抱いた。
「お前ならばできる。ノラ、クロ、そしてその仲間たちと共に……“夢を奪わぬ未来”を創れると信じている」
ミロの瞳に涙が浮かび、力強く頷く。
「必ず……成し遂げます。父上が守ってきた平和を、私たちが次へ繋げます!」
と言いながら背中に背負っていた杖を天に向ける。
その誓いを聞いたブルの顔に、ようやく安堵の微笑みが広がった。
ノラは胸に熱を感じながら、静かに呟く。
「……これが、王の背負う覚悟……」
クロは深く頷き、剣を握る手に力を込めた。
「俺も学ぶ……王とは、平和を背負う者だということを」
炎が揺れる広間の奥で、王と娘、そして旅人たちの誓いが重なり合う。
それは新たな未来への第一歩であり
クロが後に大きく成長する礎となる瞬間でもあった。




