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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
7章 南西湖

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72/201

第72話 忍び寄る沼

南西湖を後にしたノラたちは、夕暮れに染まる大地を歩いていた。

湖での戦いは仲間の絆を強めていた。


「……夢が、本当に力になるなんて」

イヴは歩きながら、まだ信じられないように胸に手を当てていた。


タロは小さく笑い、力強く頷く。

「僕、守れたんだ。ちょっとだけだけど……でも、次はもっと強くなれる気がする」


ノラは二人の姿を見守りながら歩みを進めた。

(夢は確かに力になった……。でも、それを利用しようとする者たちもいるかもしれない。

 ここから先が、本当の戦いになるのかもな)


クロが隣で低く口を開く。

「次はハコニワだ。……トヒの真実と、ルーン石の秘密を聞きに行こう」


その声には、辞めたばかりだが司法警察としての冷徹さと、兄シロを想う複雑な思いが混じっていた。

ノラは頷き、表情を引き締める。

「真実を……俺たちの目で確かめよう」


――その頃。


霧深い沼の奥、岩の祭壇に腰掛ける巨大な影があった。

ナーガである。黄金の瞳がぎらりと光り、薄い笑みを浮かべていた。


「……ヒッポまでも夢に呑まれるとはな。弱さよ

そしてこのルーン石が殻の石だとは舐めてくれる。」


背後に立つのは、逞しい体躯のコドラだった。

鱗に覆われた腕を組み、低く唸るように言う。

「奴はもとより甘かった。だから敗れる。

 だが我らには知のルーン石がある。揺らぐものか」


ナーガは頷き、長い尾をゆっくりと揺らした。

「そうだ。南西湖はただの布石。

 次に狙うは――“ハコニワ”。

 リーフラどもが築いた虚飾の平和を、我らの手で暴き立ててやろう」


コドラの目が冷たく光る。

「ナチュラビストもトヒも、すべて力の前に跪かせるのだな」


「そうだ。そして――恐竜の時代を再び呼び覚ます」

ナーガの声は湿地を震わせ、夜の霧に溶けていった。


一方その頃、湖畔に取り残された波紋は、夕日に照らされて静かに揺れていた。

それはまるで、次なる嵐の前触れであるかのように。

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