第67話 夢が灯す光
黒い湖面を揺らして異形の群れが襲いかかる。
牙を剥いた魚が跳ね、鱗をきらめかせた巨大な影が渦を巻いた。
ノラは《ヒトフリ》を振り抜き、迫る怪物を斬り裂く。
水飛沫が宙に舞い、刃に月光の残滓が煌めいた。
「はあっ――!」
クロの剣が矢のように閃き、別の異形を切り裂く。
だが数は尽きず、次から次へと押し寄せてきた。
「……このままじゃ、押し切られる!」
イヴが必死に声を上げる。
その横でタロが震える拳を握りしめた。
「僕だって……! 守りたいんだ!」
次の瞬間――タロの胸から淡い光が広がった。
その光は波紋のように湖面を伝い、仲間たちを包み込む。
ノラは目を見開いた。
「……これは……!」
イヴも驚きながら、タロの手を強く握る。
「タロ……あなた……!」
タロの声は涙で震えていた。
「強くなりたい……みんなを守れるように……!
その夢だけは、誰にも奪わせない!」
光はさらに強くなり、襲いかかる異形の群れを一瞬ひるませた。
その隙を突いてノラとクロが一気に反撃に転じる。
「今だ、行くぞ!」
クロの剣が閃光を描き、ノラの《ヒトフリ》が湖面を裂いた。
すると、今度はイヴの瞳が淡く輝いた。
オッドアイの片方が蒼く、もう片方が金に光り、周囲の空気が澄み渡っていく。
「私は……夢を失いたくない。
誰かと一緒に生きて、笑って、歩いていきたい。
小さな夢でも……ずっと続けたい!」
イヴの声と共に、淡い光の幕が広がり、仲間の傷を癒していった。
ノラの義手に絡んでいた痛みが和らぎ、クロの疲労もすっと軽くなる。
ヒッポの目がぎらりと光る。
「……ほう。夢が形を持つか……。
弱者の幻と思っていたが、これは……!」
ノラはタロとイヴの姿を見つめ、心の奥から熱く込み上げるものを感じた。
「……これが……力……!」
湖面に広がる光は、闇の中で確かに灯った小さな炎のように輝いていた。
それはまだ儚く、頼りない。
だが確かに、この戦いの行方を変える力となっていた。




