第45話 夜の食卓
遺跡の調査を終え、ノラたちは紹介所へ戻った。
カウンターの奥で待っていたチロが、安堵の笑みを浮かべて迎える。
「本当におつかれさま! 無事に戻ってきてくれて……ありがとう」
彼女は包みを差し出した。
中には保存状態の良い“レコード”と、数点の古代の小物が収められていた。
「これが返礼品よ。遺物としての価値も高いし、大切にしてね」
ノラは深く頷き、丁寧に受け取った。
義手越しに触れた円盤の重みは、ただの物ではなく“過去の声”を感じさせる。
――
その後、クロは司法警察の宿舎へ戻り、ノラはタロとイヴを連れて自宅へと帰った。
長旅の疲れが残ってはいたが、久しぶりに戻った家は懐かしく温かい。
タロはあちこちを覗いては感嘆の声を上げ、イヴは小さな花瓶に花を挿して微笑んでいた。
夜。
街の食堂に、四人は集まった。
蝋燭の灯が卓上を照らし、焼きたてのパンと煮込み料理の香りが広がる。
「いただきます!」
タロが勢いよく頬張り、イヴは小さな笑みを浮かべてゆっくり口に運ぶ。
ノラはその様子を眺めながら、胸の奥に静かな安堵を覚えていた。
だが、クロの顔は少し硬い。
食事が一段落した頃、彼は真剣な眼差しで口を開いた。
「ノラ、タロ、イヴ……話がある」
三人の視線がクロに集まる。
クロは一呼吸置き、低い声で続けた。
「俺は、兄さん――シロの死の真相を追いたい。
その答えが、“南東湖”にあると踏んでいる」
ノラの胸がざわめく。
義手の奥がわずかに熱を帯び、遺跡で見た文字が脳裏をよぎる。
「……湖に?」
クロは強く頷いた。
「湖には古い伝承とルーン石が祀られている。
司法警察の記録でも触れられているが、詳細は意図的に隠されている。
……だから俺は、仕事を辞職してきた。ノラとタロとイヴと一緒に全てを確かめたい」
タロはパンを握ったまま目を輝かせる。
「湖!? 行こうよ! きっとすごいものが待ってる!」
イヴは少し不安げに俯いたが、やがてノラを見上げて静かに言った。
「……真実を知るためなら。私も、一緒に行く」
ノラは三人の顔を順に見つめ、深く頷いた。
「……分かった。覚悟を決めたんだなクロ。俺たちで行こう。シロの死の答えも、この世界の真実も全部」
食堂の外では夜風が吹き抜け、月が湖の方向を照らしていた。
その光は、まるで彼らを次の舞台へ導く道標のようだった。




