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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
4章 ヤマト(1.5)

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44/201

第44話 古代の手掛かり

紹介所の掲示板に、新たな依頼が貼り出された。

【依頼:旧時代遺跡の調査と遺物の回収】

依頼主は統一政府の調査局。報酬は保存状態の良い返礼品だという。


ノラは迷わずその依頼を手に取った。

「……行こう。何かが、俺たちを待っている気がする」


クロは腕を組み、慎重に頷く。

「旧時代の遺物か。司法警察でも触れることの少ない代物だ。

 何が眠っているのか……警戒は怠るな」


タロは好奇心に目を輝かせ、イヴは小さな不安を抱えながらも彼らの背に寄り添った。


――


遺跡はヤマト郊外の森の奥深くに眠っていた。

苔むした石壁、崩れかけた柱、草木に飲み込まれながらもなお立ち続ける廃墟。

かつて人間〈トヒ〉が築いた文明の残滓が、ここに静かに息づいていた。


「わぁ……本当にトヒがこんなものを?」

タロが感嘆の声を上げ、崩れた壁に触れた。


その瞬間、淡い光が走り、壁一面に古代文字が浮かび上がる。


「……タロ!」

イヴが驚いて彼の腕を引いた。

だが光は害をなすどころか、むしろ彼を温かく包み込むように消えていった。


クロが目を細め、光の残滓を凝視する。

「……やはり。古代の仕組みは、トヒを“鍵”としているのかもしれない」


ノラは壁に浮かぶ文字を見つめ、胸にざわめきを覚えた。

その瞬間――義手に鈍い痛みが走った。


「……っ!」

金属の接合部が震え、義手の奥から熱が広がる。

古代の文字と義手が呼応し、まるで封じられた何かが目を覚ますように共鳴していた。


「ノラ、大丈夫!?」

チロが駆け寄ろうとするが、ノラは苦笑して首を振る。

「平気だ……ただ、何かを……思い出しそうなんだ」


壁に刻まれた古代文字は、淡く光りながら三つの語を繰り返していた。


――「力」

――「夢」

――「継承」


イヴが小さく呟いた。

「これは……夢を紡ぐ者に与えられる力……?」


ノラは荒い息を整え、義手を胸に押さえながら決意を固める。

(……俺の中に眠るもの。これが答えへと導く……)


やがて彼らは遺跡の奥で、黒ずんだ金属片と小さな水晶を発見した。

水晶は微かに光を宿し、触れると低い振動音を放つ。


クロが慎重に袋へ収め、頷いた。

「これが“依頼品”だな。報告用に持ち帰ろう」


ノラは水晶を見つめながら、まだ胸の奥に残るざわめきを抑えきれなかった。


――調査と回収は完了した。

だが、この遺物が示す“継承”の意味は、まだ扉の奥に隠されている。


次の依頼が、彼らをさらに深い真実へと導こうとしていた。

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