第41話 帰郷
ヤマトの街並みが見えてきたとき、
ノラの胸には少し離れただけなのに
懐かしさと重みが同時に押し寄せていた。
高い煙突からは白い蒸気が立ちのぼり、
変わらず工房の音が遠くから響く。
鉄と木と廃材を組み合わせた独特の匂い‥
ここが、自分の育ってきた場所だ。
だが、もう以前の自分ではない。
背には新たな仲間、タロとイヴの存在がある。
「わぁ……すごい……!」
タロは目を輝かせて街を見回した。
工房の巨大な歯車が回るたび、彼は子どものように歓声を上げる。
イヴは静かに辺りを見渡し、オッドアイの瞳に複雑な色を宿した。
「……賑やか。でも、どこかで……誰かに見張られているみたい」
その言葉に、ノラは思わずうなずく。
確かに街には監視の目が強まり、秩序の影が濃くなっているのを感じた。
紹介所の扉を押し開けると、そこにいたのは懐かしい顔。
「ノラ! クロ! 帰ってきたのね!」
チロが机の奥から駆け寄ってきた。黒白茶の毛並みを揺らしながら、ぱっと笑みを咲かせる。
「おかえり! ……それと、この子たちは?」
不思議そうにタロとイヴを見やるチロに、ノラは簡潔に答えた。
「仲間だ。……大切な存在だ」
チロはしばし黙し、そして柔らかく笑った。
「そう……なら安心した。ノラの隣に仲間がいるなら」
クロが肩を竦める。
「相変わらず、お前は心配性だな」
「だって……二人とも、すぐ無茶するんだもの!」
チロはふくれっ面をしながらも、瞳には安堵の光を宿していた。
ノラはその笑顔を見て、心の奥で小さな灯がともるのを感じた。
旅立つ前と同じ場所に戻ってきたはずなのに今は、全てが違って見える。
それは、背負った重みと共に歩む仲間の存在があるからだった。




