第33話 四天王との対面
広場の中心。
パオの足音が石畳を揺らし、その巨体は大地そのもののように立ちはだかっていた。
隆起した筋肉、戦紋に刻まれた歴戦の傷跡
その存在が「力の化身」であることを示している。
「我らの里に足を踏み入れる者よ。……名を名乗れ」
低く響く声に、ノラは義手を握りしめ、一歩も退かずに答えた。
「猫族のノラ。……そしてこちらは、司法警察所属のクロだ」
パオの眼差しが二人を貫く。
その瞬間、風を裂く疾風が広場を駆け抜けた。
「……遅いな、猫族。俺の一撃を見切れたか?」
風のように颯爽と現れたのは
馬のナチュラビストでリーフラ四天王のブレッド。
鍛え上げられた四肢は稲妻のごとき速さを誇り
その瞳には揺るぎない自負が宿っていた。
「戦士を迎えるなら、脚で確かめるのが礼儀だろう?」
誇らしげに胸を張るその姿に、ノラはわずかに眉をひそめた。
続いて、低く重い声が響いた。
広場の隅から現れたのは
橙の毛並みを持つ巨躯の持ち主タンタン。
オラウータンのナチュラビスト。その姿は落ち着きを纏い、腰には複数の武器を携えている。
「……速さだけが力ではない。知恵と重みもまた試さねばならん」
組んだ腕をほどき、鋭い眼差しをノラとクロへと注ぐ。
最後に、大地を踏み鳴らすような重音が広場を揺らした。
現れたのはサイのナチュラビストで分厚い皮膚と角を持つ巨体、メイル。
その威容はまるで動く城塞。たった一歩で群衆のざわめきは凍りついた。
「……我らは、四天王。リーフラの守り。
お前たちがどの目を持つのか、試させてもらう」
広場に張り詰めた空気が広がる。
市場の喧騒は消え、集まった者たちが息を呑み、ただ見守るだけになっていた。
ノラはクロと視線を交わす。
互いに言葉を発さずとも、同じ思いが胸に刻まれていた。
(……この四天王を越えなければ、ハコニワの真実には辿りつけない)
リーフラ族四天王。
その姿は試練であると同時に、この地の秩序と策略を体現する存在であった。




