表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
3章 ハコニワ(1)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/201

第31話 ハコニワへの旅立ち

朝靄に包まれた街道を、ノラとクロは並んで歩いていた。

背後には巨大な統一政府の城塞が遠ざかり、前方にはまだ見ぬ西の大地が広がっている。


「……いよいよか」

クロが小さく呟いた。


ナナシの西の地――そこはリーフラ族が長く暮らし、土地を守り続けてきた大地。

豊かな草原と綺麗な砂漠、そして“トヒ牧場”と呼ばれる場所が多く存在する。

今回の任務は、その異変の調査だった。


ノラは朝の光を浴びながら、義手を握りしめる。

「ハコニワ……この前訪れた牧場はあくまでもハコニワの端の玄関口。、実際にハコニワの中心地まで足を踏み入れるのは初めてだ」


クロは頷き、慎重な面持ちで言葉を継いだ。

「リーフラ族は誇り高く、友好的で温厚な種族だ。

 だが、“トヒ家畜化”の始まりは彼らだ。……本来なら、他種族に調査を任せるはずがない」


ノラは眉をひそめた。

「……じゃあ、なぜ俺たちに?」


クロはしばらく黙り込み、やがて低く答える。

「見せたい“何か”があるのか……あるいは、俺たちが駒として試されているのかもしれない」


その言葉に、ノラの胸にざわめきが広がる。

トヒを牧場で飼う、以前見た牧場の経験を元に

この目で見れば、きっと何かを得るだろう。


「真実を知るために、俺たちは行くんだ。たとえ答えが重くても」


街道沿いには、小さな村が点在していた。

通りすがる農夫たちはリーフラ族であり、その傍らでは柵に囲まれたトヒが畑を耕していた。

黙々と土を掘り返す姿は、まるで旧時代で実在したとされ語られる“奴隷”を思わせる。


ノラは足を止め、視線を逸らさずに見つめる。

クロは隣で短く言った。

「……これが平和の“現実”だ」


沈黙の中、風が草原を渡っていく。

その先には、果てしなく広がる緑の大地――ハコニワが待っていた。


ノラとクロは再び歩き出す。

彼らの旅は、いま新たな舞台―― ハコニワへの旅立ち を迎えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ