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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
15章 統一政府(2)

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第195話 平和の兆し

恐竜との長き戦いが終わり、焼け落ちたレプタの大地に、ようやく柔らかな風が吹いた。

焦げた土の匂いが薄れ、どこからともなく草花の芽が顔を出す。


崩壊した村々には、各族が肩を並べて立っていた。

沼族は水を引き、空族は上空から物資を運び、犬族と猫族は瓦礫を片付け、リーフラ族は建築及び負傷者の手当てをしていた。


ノラは額の汗をぬぐいながら、笑顔で声をかける。

「おいクロ、そこ、梁がまだ緩んでるぞ!」

「わかってる。お前こそ手止めんなよ!」

二人は笑い合い、いつの間にか空に伸びる白い雲を見上げた。


「……終わったんだな。」

クロが呟く。


「いや、これから始まるんだ。平和ってやつが。」

ノラは静かに応えた。


近くではミロとティカが子どもたちに食糧を配っていた。


「怖い夢を見た子もいるでしょう? でももう大丈夫。朝が来たわ。」

ティカの声は羽音のように優しく、ミロの指先からは小さな光の粒が零れ、子どもたちの傷を包んでいく。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

「うん。今度は君たちが、この国を照らす番だよ。」

ミロは笑い、手を振った。


その頃、レプタの崩れた遺跡群の祭壇で、ベルルが、民の前に立ち、静かに頭を下げた。

「沼族はこれまで間違えた道を歩んでしまっていた。だから今日この日から平和と協調、未来を、皆の手で取り戻す。どうか皆の力を貸してほしい。」


民たちは歓声を上げる。


その背後には、鎧を整えたオロチがいた。

「ベルルさん……いや、沼王。俺はあなたの右腕として、レプタを立て直して側で学びます。」

「オロチ、君がいてくれて心強い。トール様も南東湖から見守ってくれている。」

「ベル……そして父様……。ようやくレプタが平和な時代を迎えられるよ。」

オロチは鬱然とする木々の隙間から空を見上げ、拳を握った。空には揺れる雲と、木々の隙間から陽の光が遺跡群をそしてレプタの民を照らした。


その夜、復興途中の仮設広場で、各族の王たちが集まった。

焚き火の明かりが円卓を照らし、炎がゆらめく。


ノラが立ち上がり、周囲を見渡した。

「戦いは終わった。でも、まだ俺たちは“勝った”わけじゃない。本当の平和は、誰も見下さないことから始まるんだ。」


クロが頷きながら言葉を継ぐ。

「そうだ。力を競う時代は終わった。これからは守るための力を磨くべきだ。」


ティカは翼を広げ、炎の光を受けて金色に輝いた。

「空の上から見てたわ。みんながひとつになって働いてるの。…とても綺麗だった。」


ミロが穏やかに微笑む。

「恐怖ではなく、希望で動く世界。絶対作れるよ。だって今、私たちがここにいるんだから。」


タロとイヴが顔を見合わせ、小さな声で言う。

「ねえ、イヴ。オロチも、ノラも、みんな笑ってる。」

「うん……“生きる”って、こんなにもあったかいんだね。」


その瞬間、夜空を裂くように星が流れた。

誰かが息を呑み、ティカが羽根をはためかせて空を見上げる。

「見て、星が…まるで新しい夜明けを祝福してるみたい。」


ノラは小さく笑い、焚き火に枝をくべた。

「だったら、俺たちの時代は――今、始まったんだな。」


炎がぱちりと弾け、仲間たちの顔を照らす。

その光は、もう二度と消えることのない“平和の兆し”だった。

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