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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
15章 統一政府(2)

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191/201

第191話 オロチの決断

タロの夢の力を宿したノラに太陽のように燃える光が纏い戦場を染めた。

ノラの刀ヒトフリが閃き、複合素材でできた刃が光と植物の奔流を纏い、恐竜の巨体をなぎ倒す。

ヒトフリから放たれる光は金属の硬度と植物の柔軟性を併せ持ち、刃先が触れるたびに大地が震える。


「これで……全て終わらせるッ!」

ノラの声が轟き、古代種の力が頂点に達する。

拳を振るうポンタと九尾の幻炎を舞わせるタマモは、力を使い果たし疲労の色を深めていた。


「ノラ、もう限界だ……!」

ポンタが叫ぶが、ノラは振り向きもせず突き進む。


恐竜の群れを次々となぎ倒す中、北東湖の女王マナス、南東湖の湖王トール、南西湖の湖王ヒッポ、北西湖の湖王ゲータ

――四人の湖王たちが戦場を越え統一政府の門に到着した。


「湖王たち……間に合ったか!」

クロが息を切らしながら声を上げる。


「ナナシの平和の危機。力を合わせる時だ!!」

ゲータとヒッポが戦線に加わる。


だが、戦況は依然として悪化していた。

ノラの古代種化が長時間に及び、暴走の兆しを見せる。

更に筋肉が隆起し、爪は黒鉄のように光り、ヒトフリから放たれる炎と植物の奔流は、恐竜を蹂躙する一方で戦場を巻き込み始めた。


「ノラが危ない!」

タマモが叫ぶも、力を使い果たし古代種化が解け始め、ポンタの前で膝をついた。


ポンタも同様に身体を縮め、古代の姿から通常の狸のナチュラビストの姿へ戻る。

二人は後方へ撤退するしかなかった。


ノラは咆哮と共に恐竜をなぎ倒す。

しかし、その暴走は制御を超えていた。

恐竜が何匹も倒れてく最中、ノラの意識も薄れ、足元が崩れ落ちていく。

古代種化も解け

巨大な恐竜の口が迫り、捕食されかけるその瞬間――


「ノラッ!」

クロが駆け込み、ノラを引き起こす。

さらにビャクが横合いから飛び込み、二人で支えた。


ノラの身体は震え、汗と血で光る瞳がかすかに光を帯びていた。


「まだ……まだ終わってない……!」

ノラの声は弱々しいが、瞳の奥には自我が残っている。

戦場には恐竜の群れがまだ数十体押し寄せ、状況は絶望的だった。


湖王トールが統一政府に集められたルーン石を眺める


「このままでは被害は最悪を迎えるだろう。恐竜たちを化石へ戻すしかない……だが間違った使い方をし実現した願いの為、この力を抑える願いをした使用者は命を落とすであろう…。」


マナスが冷静に付け加える。

「トール様。貴方……。」

ヒッポとゲータも目を閉じ頷き、湖王たちの存在感が戦場に静寂を生む。


クロが耳を澄ませると、トールが続ける。

「私がその役目を引き受ける。かつて弟子たちが失敗した力、弟子たちの過ちは師の過ち。私が責任を全うする。」


その話を、オロチは静かに聞いていた。

タロとイヴを支え、シバの弓の射線内で息を整える間もなく、彼の胸には決意が芽生える。


「……俺がやるんだ……。俺が、ルーン石に願う……!父様の過ちは俺が正すんだ!」

オロチの目が鋭く光る。自らを犠牲にしても、恐竜たちを化石へ戻す…。

――その決意が、体の奥底で確かに燃え上がった。


戦場の混乱、仲間たちの疲弊、そして迫り来る古の王者たち。

全てを背負い、オロチは静かに息を整え、覚悟を固める。


──オロチの決断が、この戦いの次の大きな一手となる。

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