第186話 戦いの幕開け
ヤマトを旅立ち、大陸中央の統一政府に向かう荒野の途中。
地鳴りが走る。
黒鱗を纏う2頭の恐竜が現れた。
ノラたちは即座に陣形を取る。
「ビャクさんとの鍛錬の成果……!」
ミロは冷静に槍を構える。その先端は三つに分かれていて、雷のように唸る。
ヤマトの職人がミロに作り上げた槍「イザナミ」を握り締める。
「もうあの頃とは違います!」
三叉の刃が光を帯びミロが踏み込み、一閃。
地を貫いた光が一頭の脚を貫通した。
ティカは身を翻し、腰から鞭を解いた。
「カゼキリ…。」
しなやかな鞭が風を巻き起こし、テールの刃が閃光を描く。
「無理矢理復活させられたその命……もう一度眠りにつく時です」
彼女の言葉と同時に、鞭は獣の眼を裂いた。悲鳴が森を震わせる。
オロチは静かに大鎌カイジャを持ち上げる。
「ベル……見てて。」
刃が青白く輝き、鎌の先から蛇の幻影が走る。
「父様が目覚めさせた失態。ケジメをつけるのが俺の役目!」
振り下ろした瞬間、恐竜の尾は切断され恐竜はバランスを崩した。
クロはその隙を見逃さない。
「ヤマト無双流-牙連-」
クロは両手に握り締めた狼牙で連撃を与え恐竜は倒した。
ノラは仲間の動きを見届け、深く息を吸った。
「いいぞ……だが、こいつはまだ終わらねぇ。」
残る大型の一頭が咆哮を響かせる。
ノラの瞳が赤く染まり、体毛が逆立った。
「下がれ! ここからは俺の領域だ!」
骨が軋む音。皮膚の下で筋繊維が膨張し、牙が伸びる。
古代種——剣歯虎と猫の血が混ざる、ノラの本当の姿。
ヒトフリを構え、獣の咆哮とともに地を蹴る。
その速さは音をも置き去りにした。
「……喰らえッ!」
振り抜かれた一閃が炎を断ち、恐竜の巨体を縦に裂いた。
黒煙が舞い、ノラの息遣いだけが残る。
ティカが苦笑いして呟いた。
「ノラ……強すぎ……」
「ノラその姿カッコ良すぎるよ!!!」とタロは興奮気味になる。
「へへっ。これが俺の“古代種”の力。」
ノラはヒトフリを地に突き、ニヤリと笑う。
「……だが、力だけじゃ何も守れねぇ。だから、《みんなで》が大切だ。」
「そうだよね!恐竜は怖いけど、みんなで力を合わせる事それが一番大切…!!」
とイヴは笑顔を見せる。
イヴの笑顔を見てミロも笑った。
「もちろん!私たちも同じ気持ちです。ねっ?クロ、ティカ、オロチ?」
ティカがうなずき、オロチは無邪気な笑みを溢して鎌を肩に担ぐ。
七人は中央の道へと急ぎ走った。
そして、遠くで警報が鳴り響く。
まだ遠くに聳える統一政府の防壁の姿が見えてきた。
ナナシの世界の中央。
かつて種族間の争いを起こさない為に設立された場所…。
彼らが求める真実がある。
「……行くぞ。ナナシの平和を、そして未来を守るんだ。」
ノラの声に七人がうなずいた。
風が彼らの衣をはためかせる。
ヒトフリ、狼牙、イザナミ、カゼキリ、カイジャ
五つの武器が光を放ちながら……。




