第185話 団結の誓い
夜明け前、議事堂の前庭に七つの影が並んでいた。
薄紅に染まり始めた空の下、ノラたちは静かに立ち尽くす。
冷たい風が頬を撫でるたび、それぞれの胸に決意の炎が揺れた。
「いよいよ、統一政府へ向かうんですね……。」
ミロが小さく呟いた。
その声には、不安よりも強い覚悟が宿っていた。
「恐竜が北上してる。のんびりしてる暇はない。」
クロが腕を組み、唇の端を僅かに上げる。
「だが──今の俺たちなら大丈夫だ。たとえ相手が恐竜でもな。」
タロが頷きながら笑った。
「うん。だって僕らは“自分のため”に戦うんじゃない。
“みんなの世界”を守るために戦うんだ。」
ティカは腰の鞭を撫でながら、静かに言葉を継いだ。
「……レプタの空を見た時、悍ましさに身が震えた。
でも、あれを放っておけるほど私は弱くない。」
イヴが柔らかく微笑む。
「悲しみを背負うのはもう終わりにしよう。
ベルも、みんなの願いも──この手で繋いでいくために。」
オロチは少しうつむきながら、拳を胸に当てた。
「俺には、父様の血が流れてます。
それでも……信じてくれるなら、僕は命を懸けます。
ベルのように、誰かを救う側に立ちたい。」
ノラはしばらく空を見上げ、ゆっくりと仲間たちを見回した。
まだ薄暗い空の向こうに、東の光が少しずつ差し込み始める。
「……俺たちは、それぞれ違う種族だ。
生まれも、力も、考え方も違う。
だが──“守りたいもの”は、同じだろう。」
クロが鼻で笑う。
「ふん、そんなクサい台詞、似合わないぞ、ノラ。」
「そうか?」
ノラが微笑む。
「でも、本気だ。」
その言葉に、ミロが優しく頷いた。
「うん……私たち、もうバラバラじゃない。
“七つの心”で一つの願いを抱く時だね。」
タロが手を差し出した。
「じゃあ、誓おう。ナナシの世界を、守り抜くって!」
イヴがその手を掴み、クロ、ミロが重ね、ティカ、オロチが続く。
最後にノラが静かに手を置いた。
「どんな結果が訪れても、恐れるな。
この手は、仲間を離さない。
俺たちは──“七つの誓い”で結ばれた仲間だ。」
朝日が地平線を染めた瞬間、七人の想いの灯火は一つに重なりまるで虹のように輝きをみせる。
その光の中に、確かな未来が見えた気がした。
ノラは振り返らずに歩き出す。
「行くぞ。統一政府が待ってる。」
彼らの足音が、まだ眠る街に響く。
その音は、ナナシの世界に希望を告げる新たな鼓動となった。




