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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
14章 レプタ(2)

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183/201

第183話 蹂躙される世界

ヤマトの城門が見えた時、ノラたちは無意識に息を荒げていた。

南の空はまだ赤く染まり、遠くで聞こえる地鳴りのような音が、不気味に世界を揺らしていた。


「急げ、議事堂へ!」

クロの声に、ミロとティカ、タロ、イヴが続く。

焦燥と緊張の中で、六人は駆け抜けた。


重厚な扉が開くと、そこには犬王チャピと猫王ライガが待っていた。

二人の王の顔には、すでにただならぬ気配が漂っている。


「お前たち……。無事でよかった。しかし、この様子……ただ事ではないな。」

ライガの低い声に、ノラは頷いた。


「はい……。すべて、話します。」

ノラは深く息を吸い、これまでの出来事を語り始めた。


「タロとイヴ、そしてミロとティカを人質にされルーン石を奪われました。

 ナーガはそれを使って……恐竜を、復活させたんです。」


議事堂の空気が一瞬にして凍りつく。

チャピの耳がピクリと動き、ライガの瞳が細められた。


「恐竜か……。言っていた太古の生物が蘇ったのだな……。」


「ええ……。ナーガはその力を制御できず……復活した恐竜に食べられ、命を落としました。」

ノラの言葉に、ティカが唇を噛む。ミロは拳を握りしめた。


「では……沼族の王は……」

チャピがつぶやく。


ノラは静かに頷いた。

「ええ……でも、それで終わりではありません。恐竜たちは暴走を始め、レプタの地そのものを――喰い尽くしているんです。」


重苦しい沈黙。

やがて、ライガが深く息を吐いた。


「沼王が命を落としたのは知らなかったが……太古の未知の生物が復活したと、すでに一部は届いている。ノラ達の出発後に、レプタに走らせた従者がとてつもなく大きい爬虫類を見たと報告してきた。」


「レプタはもう……国としての形を保てぬほどの惨状か…」

チャピの言葉には震えがあった。


「恐竜たちは北上している。草原を、森を、村を……全てを蹂躙しながら進んでいるはずだ。」

ライガの声が低く響く。


ノラたちは顔を見合わせた。

「……ナナシの世界そのものが、食べられていきます…。」

ミロが呟く。


「統一政府はどうしているのですか?」

ティカが問う。


「混乱している。」

チャピが答えた。

「報告が錯綜し、各族の王たちがそれぞれ兵を動かしているが……まだ全体の指揮系統は整っていない。トール王からの使者も到着したばかりだ。」


「ベルルもあの後動いたか……」

ノラが小さく呟く。


「恐竜の進軍速度は速い。放っておけば、3日も経たずに中央圏まで到達するだろう。」

ライガが地図の上に爪を立てた。


「ノラ。お前は現場を見てきた。恐竜たちは、ただの生き物か? それとも……意思を持っているように見えたか?」


ノラは目を閉じ、あの光景を思い出した。

破壊、咆哮、そして――どこか哀しげに見えた眼差し。


「……言葉は通じません。ただ……あいつらは、怒っていました。

 この世界そのものに。そんな気がします。」


その言葉に、議事堂の全員が息を呑んだ。


「世界そのものに……怒りを……?」

チャピが震える声で呟く。


ライガは立ち上がり、王冠の影を落とした。

「ならば、我らがその罪を見つめねばならぬ。力の均衡が崩れ、太古が牙を剥いた。もはや誰も、他人事ではない。」


「統一政府で食い止めるぞ。」

チャピの声が強く響いた。

「各族王に通達を。全兵を結集し、ナナシの世界を守る準備を始める!」


「了解いたしました!」

と、従者たちが一斉に動き出す。


ノラは拳を握りしめ、決意の目を向けた。

「もう、誰も犠牲にしたくない。恐竜だろうと……この世界は、俺たちが守る。」


ライガは静かに頷き、チャピと視線を交わす。

「始まるな……新たな戦いが。」


議事堂の窓から見える空は、再び赤く燃えていた。

まるで古代の怒りが、再び世界を呑み込もうとしているかのように。

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