第181話 利己と利他
レプタの遺跡群を抜け、復活した恐竜たちの咆哮が遠ざかる中、沼王ナーガの死とルーン石を奪還された痛手を抱え、コドラはスガイズを従え必死に逃走していた。
「くそ……このままじゃ終われんぞ!」
コドラが地面を蹴り、瓦礫を飛び越えながら叫ぶ。
「はい……まずはレプタから脱出しましょう」
スガイズは冷静に従いながらも、目には焦りが宿る。
レプタを抜けすぐ近くの森で
コドラの目に同じくレプタから脱出しようとするベルとオロチの姿が映った。
二人を囮にすれば、恐竜たちの足止めにもなると瞬時に判断する。
「奴らだ……利用できる。あいつらを囮にして、この混乱から抜け出すんだ」
コドラが低く唸る。
「面白いですね、そうしましょう。」
スガイズは冷たく笑った。
その背後には忠誠と企みが混じる視線。
一方、オロチはベルの隣を歩きながら、南東湖への希望に胸を躍らせていた。
「もう少しで……」
オロチが小さくつぶやく。
だが、その瞬間、背後から二つの影が迫った。
コドラとスガイズだ。
「なんでこんな事するんだコドラ…!離せ……!」
オロチはコドラに捕まり必死に抵抗するが、体格差と冷徹な動きの前に捕まってしまう。
「オロチ!」
ベルが大鎌を握りしめ、立ちはだかる。
「その手を放せコドラ!」
ベルの叫びに合わせ、オロチも足掻くが、コドラの腕がオロチを押さえつける。
森の中から背にヒレを持った
肉食恐竜が顔を覗かせていた。
「スピノサウルス…!スガイズ!!今すぐオロチを囮にして逃げるぞ!」
ベルは覚悟を決め、オロチを守るため大鎌を振るう。
コドラの攻撃が直撃するが、ベルは最後の力でオロチを引き離しコドラを押さえつける。
「オロチ、逃げろ……!」
ベルの声は震え、致命傷を負いながらも暴れるコドラを必死に押さえつける。
そして、そのまま恐竜にベルとコドラは食べられてしまった。
「コドラ様…!!」
スガイズが唖然とし
「ベル……!」
オロチは涙を浮かべ、悔しさと悲しみで身体が震える。
一瞬動きを止めていたが
オロチの隙を見たスガイズは、オロチを始末しようと動く。
「このまま始末すれば、誰にも気付かれない……」
スガイズの目が冷たく光る。
しかしオロチは恐怖と悲しみを力に変え、振り切って
足元に落ちていたベルの大鎌を握りしめ、形見の武器として戦う。
「ベル……教えは俺が守るよ!」
オロチは涙ながらの声に決意が宿る。
スガイズと対峙し、必死の攻防が繰り広げられる。
瓦礫を蹴散らし、恐竜の咆哮が響く中、オロチは大鎌を巧みに操り、ついにスガイズを倒すことに成功する。
息を切らし、涙を拭いながらオロチは立ち上がる。
荒れ狂う恐竜たちと混乱の中、オロチは南東湖への道を見据える。
「……ベル……ありがとう。必ず、次は取り戻す……」
胸に刻みながら、オロチは必死に走った。
遺跡群では、暴れ狂う恐竜たちが蠢き、崩れ落ちる石柱と瓦礫の間で、世界は依然として混乱の渦にあった。
オロチの小さな背中は、それでも希望と決意を背負い、南東湖へと向かっていた。




